毎度のことながら、多くの消費者は馬鹿じゃなかろうかと思うこと。その一つがいわゆる「消費税増税前セール」に、いとも簡単に引っかかるというものである。駆込み需要とか、マスコミなどが煽っているのもあるが、そもそも消費者自身が冷静に対処すればいいだけのこと。消費者は人のせいにしたがるものだが、これは「お上」が消費者(広い意味で国民、市民)自身の学習を怠るよう奨励していた江戸期以来の歴史があるので、「お上」信奉となってしまうのは仕方が無いという側面もある。が、しかし、義務教育レベルの学習(知見)だけでも引っかかるはずがない消費増税前セールに、いとも簡単に引っかかるのはお馬鹿さん以外の何物でもない。
まず、今年の4月から消費税が5パーセントから8パーセントになると、購入価格が3パーセント上がるというのが間違いだ。既に5パーセント課せられている状態から8パーセントになるのだから、課税前100円の購入価格の場合だと次のようになる。
- 消費税5パーセント時の購入価格 → 100円×1.05=105円
- 消費税8パーセント時の購入価格 → 100円×1.08=108円
ここまでは自明だろう。続いて、それぞれの価格の増加率を計算すると、
5パーセントから8パーセントへの購入価格増加率 → 108円÷105円=1.02857(小数点以下5位まで表記)
となるので、購入価格は2.857パーセント上がることとなり、3パーセントではないことがわかる。とはいえ、その差は0.143パーセントでしかなく、負担感覚としては大きく変わるものではない。なので、「屁理屈」の類いと片付けられても止むを得ないが、こういうところをしっかり確認できることが「いとも簡単に引っかからない」ようになる大前提であることも、同時におさえておくべきだろう。
これを踏まえて、今の消費税増税前セールは、対象製品が固定(公定または再販維持等)価格でないものが多い。固定価格のものであれば、2.857パーセント負担が増えるのだから、増税前に購入する意味はある。
しかし、固定価格でないものはどうだろうか。生鮮食料品は買い置きできないので置いておくが、それ以外の食料品を考えてみよう。スーパーマーケット等で買い物をしていればわかるように、商品毎の価格変動は大きなものがある。目玉商品(単体で赤字になる価格設定)を別にしても、結構当たり前のように5~10パーセント程度の価格変動がある。普段、95円で販売されているものが90円になったりすることも珍しくない。この場合、価格の値下率は5パーセント以上であり、例えば消費税5パーセントで95円税別のものと消費税8パーセントで90円税別のものと比べれば、97円と99円を比較するわけだから、増税後の方が購入価格が安くなる。
つまり、固定価格でないものは、一概に消費税増税前セールだからといって、税別価格の比較をしなければ「お得」だとはならないわけだ。なので、実際に税別価格がどうなのかを考慮に入れて、初めてセールとなるのだが、単に消費税だけの増減で「お得」と判断するのはお馬鹿さんだとなるのである。
価格変動の要因は、輸入品に見られるように為替レートの変動が大きなものである。その増減幅は、数パーセントなどかわいいもので、軽く二桁の異動が生ずることも珍しくない。2.857パーセント程度の異動など、日常茶飯事と言えるだろう。
必要なものは買わざるを得ないし、固定価格のものであれば上がるのは確実だ。しかし、白物家電や食料品等といった消費税増税前セールを見ると、消費税の多寡だけで高い安いを論じているものが多く、本当に安いのかと思うものも多い。消費は心理に左右されるというが、馬鹿が多ければ多いほどそういうもの。そんなことを3連休中に思いつつ、今回はここまで。
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