前回の続きです。
羽田空港沖合展開事業が完成し、羽田空港は大きく東寄りに移転し、騒音の元凶である滑走路も離れたことで、羽田地域住民の騒音被害はほぼなくなった。そして、今回は京浜急行電鉄も羽田空港乗り入れに積極的に応じ、路線延長した上、ターミナルビル地下に駅を設けた。京急空港線の駅も一部を除き刷新され、面目躍如たるものがある。懸念の連続立体交叉事業も並行して進み、品川方面と横浜方面からの羽田空港直結も完成。ライバルであるJR成田エクスプレスと比べても、東京南部においては大きく優位に立ったと言えるだろう(そもそも成田エクスプレスという名の如く、本来は成田空港へのものなので羽田空港へはついででしかないが)。
ここに来て、ついに2016(平成28)年4月20日、国土交通省諮問第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申に、新空港線の新設(矢口渡〜蒲田〜京急蒲田〜大鳥居)、矢口渡駅において東急多摩川線と相互直通運転を行う、大鳥居駅において京急空港線と相互直通運転を行う、と記載されたのだ。蒲田と京急蒲田を接続する新たな価値が、東京城西北部と羽田空港の接続として、東京メトロ副都心線〜東急東横線〜東急多摩川線〜京急空港線というラインを整備する大義名分で生まれたのである。
この答申により、地元大田区は大喜び。区役所庁舎の地下に地下鉄路線を通すための空洞をあえてつくった経緯から、この下を通すことは譲れないと、東急電鉄と組んで、東急蒲田駅の地下化を目論み、JR線の地下を通って京急蒲田駅の南側から環八通り地下に入って、京急空港線大鳥居駅付近で京急空港線と合流する案を出してきた甲斐があったといえよう。
だが、京浜急行電鉄は、矢口渡駅から環八通り地下を通って大鳥居駅付近で合流する案をどう見ているのだろうか。京浜急行電鉄としては品川駅と横浜駅から自社線を利用して羽田空港まで利用してほしいはずなので、蒲田駅を通るにしても、京急空港線に直結しないのであれば、横浜駅からの利用客が東横線経由東急多摩川線で京急空港線を利用するなら、素直に横浜駅から京急線を使った方が早いので競争力から問題はない。品川駅側から見れば、副都心線はJR山手線の池袋駅、新宿駅、渋谷駅とほぼ並行するので、東横線で大回りするくらいなら品川駅まで行って京急線を利用する方が早い。どちらも京浜急行電鉄の競争力が勝るので恐れるまでもない。
だが、京急空港線と相直運転ではそうではなくなる。JR線の利用で蒲田駅まで利用し、そこから京急空港線を利用するという選択肢が生まれてしまう。これこそが、京浜急行電鉄が頑なに京急蒲田駅と蒲田駅とを接続させなかった理由である。お役所、中でも地方自治体は民間企業が競争に晒されているという感覚が疎いため、なぜそこまで拒むのかという理由が本当に分からない。それこそが地元大田区と京浜急行電鉄が真に結びつくことがない最たる理由である。
では逆に見て、京浜急行電鉄が喜ぶような蒲蒲線(新空港線)は実現できるのだろうか。これまでも、たかが1kmにも満たない距離を接続するだけでできなかったものが、その上で鉄道事業者が厳しいというものは計画すら進まない。では、羽田空港へのアクセスを担う京浜急行電鉄が有利になるようになれば、実現できるのだろうか。それができるくらいならとうの昔に実現できているはずで、京浜急行電鉄からのアプローチでは不可能である。私が思うところ、京浜急行電鉄の考え方が変わるとすれば、同じく羽田空港へのアクセス線として積極整備促進とされた、JR貨物線利用のJR線羽田空港乗り入れである。
といったところで、今回はここまで。次回に続きます。
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