昨日(14日)に行われた理化学研究所によるSTAP細胞疑惑にかかわる記者会見。約4時間におよんだというが(しかも理研側から終了時刻の要請を受けたことによる)、理化学研究所側の困惑が露わになったように感ずる。よもや「そんなことをしているはずがない!」という、いちいち確認するまでもない前提が崩壊し続け、庇いきれなくなった結果が「論文取下(撤回)」というハラキリで、何とか収めてもらえないかというのが見え見えだ。しかし、共著者の一人で和の心(苦笑)を持たない米大学教授は、ハラキリ文化など知らぬとばかり撤回を拒否。ハラキリすらできない状況に陥っている。
それにしても出るわ出るわの「そんなことをしているはずがない!」のオンパレード。証拠画像の意図的な改ざん(わかりやすくするという意図をいとも簡単に超越)、他論文からの引用レベルをこれも超越したコピペ(コピペという言葉が一般化したことに感激を覚える)、自分の顔を化粧するが如くのプレゼンの虚飾、その場しのぎとしか思えない幼稚な言い訳(俺がプレゼントしたリングは? あ、あれね、え、えっときれいに磨くために宝飾屋さんに預けてあるの! みたいな)、などなど。さすがに理研の理事クラスも呆れてものが言えない(記者の質問に同レベルで同意するシーンが多く見られた)のは、よくわかる。30年ほど前なら、これが新人類だと言われたであろうが、今も昔も変わらないのは、新人類なんだで済む話ではないと言うことだ。
しかも、過去の自論文との類似性、コピペぶりを突かれると、THE WALL STREET JOURNALの記事「「下書きで使った物が残っている」―小保方氏、博士論文巡る疑惑で」によれば、
小保方氏は電子メールで「現在、マスコミに流れている博士論文は審査に合格したものではなく下書き段階の物が製本され残ってしまっている」と説明。さらに、下書き段階で参考のために転載した文章や図表が引用も訂正もなく、そのまま残っていると述べた。大学側には、小保方氏が下書きだとしているこの論文の撤回を要請したという。
何なんだ、この言い訳は? この調子でいけば、ネイチャーに投稿した論文も「下書き段階」のものが誤っていってしまったものだと言い出しかねない。この一文で判断するのは早計だとわかっているが、こう判断されても仕方があるまい。
周りを振り回すだけの単なる我の強いお嬢さんなんだね(哀)
とね。
まあ、このWSJの記事がなくても昨日の理研の記者会見の一片から、ド素人の虚言を虚飾で誤魔化し続けていただけだとしかならず、振り返ればiPS細胞の権威である山中教授が、STAP細胞などと一緒にしてほしくないということを当初から仰っていたのも頷けよう。
iPS芸人と同レベル?なのかとしつつ、今回はここまで。
2014年3月17日追記
理化学研究所 トピックス「研究論文(STAP細胞)の疑義に関する調査中間報告について」
2014年3月20日追記
Nature News「Stem-cell method faces fresh questions」
小保方氏のみならず早稲田大学もだめだめっぽい。博論審査も捏造かな。
博士論文に関して言えば、これを通してしまった、主査・副査の先生方および早稲田大学のプロセスの”ザル”度合いに閉口です(涙)。学士論文は許すとして(?)、修士論文、学術誌への投稿、口頭試問などを通じて、個人も成果も質が高まっていくはずなのですが、まさに”パススルー”状態。あ~情けない。
投稿情報: はひ | 2014/03/16 09:25
コメントありがとうございます。
早稲田大学も辛いところですね(哀笑)。仰せの通り、こんな人を増長させてしまったのは、そもそも学士論文以降のチェックの杜撰さがすべてかと思いますね。
おそらく、小保方晴子さん本人に「やってはいけないこと」という自覚が「本当に」(保身のためと言うよりは幼い言い訳っぽいんだけど)なかったのであれば、そうやってこれまでやってきただけのこと(他成果の剽窃や誤魔化しなど)。早いうちに指摘してあげれば(そして本当にダメなんだと痛い目に遭わせておけば)、こんな大一番で醜態をさらすことにはならなかったのに、と。
何となくですが、日米の大学のおいしいところだけをつまみ食いしただけで、肝心なところを学んでこなかったような印象です。
投稿情報: XWIN II | 2014/03/16 19:37
博士号を取るプロセスだでけで言うと、アメリカ的なもの(上手く表現できませんが、Drではなくて、Ph.D.。つまり、博士号は、大きな研究成果の一区切りではなくて、若手研究者としての第一歩、スタートラインに立った位のものであるという捉え方)を真似たはずですが、”プロセス作って魂入れず”の状態になっていると思います。おそらく、理研トップの方がコメントされていた、”時代のなせる業”という認識差異がここにあるようにも思います。
投稿情報: はひ | 2014/03/17 08:58
”プロセス作って魂入れず”
耳が痛いですよ、我が社も(苦笑)。
さて、それはともかく理研が小保方さん隠し(24時間監視?)をしているのは、結局のところ組織防衛のため、という疑いが拭えませんね。これ以上、ヘンなことを言われては困ってしまうというのが見え見えで、理事クラスを並べた記者会見からも「あれは理研ちゃいまっせ。ヘンな研究者がヤッてしまったことなんですわ」って感がありあり。
何にしても、理研の仕業であることは動かしがたいわけですが。
投稿情報: XWIN II | 2014/03/17 19:39
新しい医学分野では、パスツール博士のように、認可前に狂犬病の血清の注射を決断して少年の命を救ったリスクをおかす選択を迫られることもありますが、満面に笑みを浮かべて淀み無く説明するリヶ女の姿が放映されたことを思うと、失礼ながら、理解不能なほら吹き男爵症候群のような印象すら受けます。理研といえば戦前派の小生にとっては神様のような存在でしたので残念です。余談ですが、パスツール博士に命を救われた少年はその後パスツール研究所に勤務して。データを守ろうとパリを占領したドイツ軍の銃弾に倒れたという後日談があります。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2014/03/26 08:33
過日、同窓会があったのだが、企業に勤めた高校の同級生ども(理工系)の動向をみると、意外にIndustrial Management系の連中に、いいところの常務クラスまで出世?しているのがいる。学生時代の感覚だと、必ずしも、数学、物理、化学、建築、機械といった理工学分野とはニュアンスの違う領域で、我々理工系学部進学者からすると、多少違和感のあったところだった。
先日、あるところで、医薬品分野の先輩と話しをしていて、彼が、痛烈に指摘していたのは、米国にあって日本の医学会に決定的に欠けているのがMedical Management分野であるということ。
昨日の会見をみていて、思い当たるのは理研に大きく欠けている(おそらくほかの大学、病院、研究機関でも同様であろう)もののひとつが、Research Managementだということ。領域の専門家ばかりが幅をきかしやすい、理工、医療、保健関係にも、Management意識は必要なのだ。
投稿情報: 桜上水confidential | 2014/04/02 04:50
コメントありがとうございます。
さて、Management意識。私自身、広範囲の管理職として出身領域(いわゆる理系+プログラマ)以外のものまで担当していますが、企業と違って公的機関は「文官」にはまともな方がいても「技官」には少ない。様々な付き合いからそう感じているところです。
もっとも日米の差は組織偏重に表れていて、職能団体が護送船団方式で組織防衛を徹頭徹尾行っているところ。集団意識、とでもいうモンスターが誰もコントロールできないため、暴走したり機能不全に陥る。マネジメント以前かな、と。
投稿情報: XWIN II | 2014/04/02 07:48