何やら今年はNHK大河ドラマ「龍馬伝」が流行っているようで、縁も何もなさそうなものですら「龍馬」に関したものが増えており、三菱創業者の岩崎弥太郎関係の本も数多く出版されるたびに、こんなにこの人を研究していた人がいたのかと驚くほどである。だが、私は「りょうま」といえば「龍馬」でなく「竜馬」(常用漢字の関係で坂本竜馬と書く例もあるが)、「流 竜馬」(声は神谷明)である。そう、ゲッターロボの正当な主人公、ゲッター1及びゲッタードラゴンのパイロットだ。
という流れで、今回はゲッターロボの話題、ネタは最終回に滅ぶ悪の組織(ここでは百鬼帝国)の最後の3分間(番組内時間)を振り返ってみよう、という内容である。まずは、ゲッターロボ(それに続くゲッターロボG)について、簡単なあらすじを示そう。
かつて地球を支配していた恐竜は、ゲッター線の影響によって地球の奥深くに隠れ住むようになり、いつしか地上は人が支配するようになっていた。それをよしとしない恐竜の末裔で構成される恐竜帝国は、地上を取り戻すために人類に対して戦いを始めた。一方、ゲッター線研究の早乙女研究所では宇宙開発のためのロボットを作っており、まさにテスト中に恐竜帝国におそわれ、テストパイロットである早乙女博士の長男は死亡してしまう。しかし、宇宙開発用のロボット、ゲッターロボは新たな三人のパイロットを獲得し、恐竜帝国との長き戦いが始まった。
そして恐竜帝国は、ゲッター3のパイロット巴 武蔵の壮絶な特攻(結果的にで本人は特攻するつもりでなかった)をキッカケに一気に滅亡(何とぉ~~! by 大魔神ユラー)。恐竜帝国との戦いが終わったと思ったのも束の間、新たに百鬼帝国が出現し、地球征服に乗り出してきた。恐竜帝国との戦いの中、ゲッターロボに合体・変形するゲットマシンはすべて破壊され、地球に危機が迫ったところで、どっこい早乙女博士は新たなゲッターロボを生み出していたのだ。戦死した武蔵に代わり、新たな仲間、弁慶を得たゲッターチームは新ゲッターロボ(番組名はゲッターロボGだが、番組内でそういう呼称はほとんどされない)と共に百鬼帝国と戦うのだった。
百鬼帝国は度重なる敗戦でじり貧になり、最終決戦を挑んできた。この攻勢に東京は百鬼帝国に占領され、無条件降伏を求めてきたが、政府は徹底抗戦を主張し、早乙女研究所(新早乙女研究所)のゲッターロボに対しても民間機関からの協力として参戦を求めた。これを受け、国防軍(自衛隊ではない)とゲッターロボとの反撃によって、最強と目された合体ロボットは合体を解いた結果、個々に打ち破られ、百鬼帝国は追い詰められる。
そこで、グラー博士の遺産ともいうべき重力制御装置を使って要塞島ごと空を飛ぶという離れ業を演じ、野球場の10倍以上はある要塞島が東京に迫る。国防軍は歯が立たず、百鬼帝国の勝利が近づいていた。国防軍のあまりの歯ごたえのなさに百鬼帝国首魁ブライ大帝は、ゲッターロボが隠れているであろう浅間山の麓にある早乙女研究所に向かう。ゲッターチーム(なお、この時点ではゲッターチームの一人隼人は、ヒドラー元帥との戦いで死亡扱いされており、隼人の代わりにミチルが入っている)は、要塞島の進撃に対し、敢然と迎え撃つ準備を整えていた。
最終回までの大筋(ゲッターロボからの全90話を端折りすぎてはいるが)はこんなところだろう。要塞島の接近と迎え撃つゲッターチーム。いよいよ最終決戦がはじまろうとしていたところから始まるのである。ここからの約3分間はゲッターロボの主題歌と共に「熱く」展開していくのだ。
博士「ゲットマシン発進」
竜馬「ドラゴン、発進」
ミチル「ライガー、発進」
弁慶「ポセイドン、発進」
「テーマソングスタート」。正確には「ドラゴン、発進」と言い終わった辺りから始まる。そして2号機となるライガー号は、先にもふれたように隼人でなく、早乙女ミチル。隼人はヒドラー元帥との戦いで、要塞島内に捕虜とされていたのであったが、仲間からは死んだものと思われていた(実際、最終回前の描写ではそうなっているように見える)。ところがどっこい、ヒドラー元帥の悪運の強さと共に生き残っていた(というかヒドラーに助け出されていた)。これが大きな伏線となっているのである。
そして3台のゲットマシンが満身創痍の早乙女研究所から飛び立つすぐ後に、要塞島の体当たりで早乙女研究所は破壊されてしまう。破壊されたことで、通常の通信装置も破壊されて使用不能となるが、これも伏線の一つ。ゲットマシンは定番というべき、ゲッタードラゴンにチェンジする。
竜馬「チェンジ ドラゴン スイッチ オン」
ゲッタードラゴンとなって巨大な要塞島に向かい
竜馬「ゲッタービーム」
とゲッタービームを放つが、ゲッターロボGとなって最初の百鬼ロボットとの戦い(最終話の38話前)で既に効かなかったように、ゲッタービームは無用の長物状態。竜馬の叫び、
竜馬「だめだ まるで歯が立たん。シャインスパークだけが頼みの綱だ」
と、途中から新必殺技として登場したシャインスパーク(参考記事「ゲッターロボGにおけるシャインスパークの斬新さ」)に賭けようとするが、すかさずミチルが
ミチル「リョウ君、待って。ここじゃまずいわ。海上へおびき出すのよ」
と冷静な判断。どっちがリーダーかわからないが、正論と悟った竜馬は
竜馬「よし、わかった」
と素直に返事。要塞島から踵を返して、太平洋上に向かっていった。
一方、要塞島の中では、
ブライ「へへへ、やっと出てきたと思ったら今度は逃げ出したぞ。体当たりしてやっつけてしまえ。げはははは」
と脳天気におびき出されるとも知らず、ゲッタードラゴンを追いかけろと指示するブライ大帝。初期の頃は威厳に満ちていたような気がするが、最後の方になってタイムボカンシリーズのグロッキー(ボヤッキーほか)のようなノリを示すのであった(声優同じ。ついでにベンケイも同じ)。と、ここで主題歌の歌詞一番が終わり、間奏へ。場面は変わって早乙女研究所地下の所長室とおぼしき所で早乙女博士が叫ぶ。
博士「リョウ君、聞こえるかリョウ君。聞こえたら応答するんだ。」
ゲッタービームが効かず、シャインスパークしかないであろうと察した早乙女博士。しかし、そのままでは強固な要塞島を打ち破るのは危険、一発しかないシャインスパーク(エネルギーを膨大に使うので一戦闘一回なのだ)がだめならそこで終わりだと言うことからリョウに連絡を取ろうとするが…。早乙女研究所は要塞島の体当たりで破壊され、通信設備もろとも藻屑となっていた。
博士「だめだ、通じないか…。」
落胆する早乙女博士。しかし、自分の左腕にある非常用の時計型通信機の存在に気付く。
博士「そうだ、リョウ君聞こえるか!」
非常用通信機は、かなりけたたましい音がする。この非常用通信機はゲッターチーム全員が持たされていたのがポイントで、リョウだけに通信するはずが、要塞島内に捕らわれていたハヤトの通信機にも入電した。ハヤトは捕らえられ拘束された状態でいたが、けたたましい通信音に驚くハヤト。
隼人「通信だ!」
そして拘束された状態にもかかわらず、火事場のバカ力で腕の拘束を引きちぎり(このときの無理がたたったのか、戦い終了後左腕を吊す描写が出てくる)、通信機のスイッチをONにした。聞こえてくる早乙女博士とリョウの通信。
博士「今のままではシャインスパークは効かないかもしれん。要塞島の一部を破壊して、そこへシャインスパークをたたき込むんだ」
竜馬「わかりました、何とかやってみせます。」
博士「頼んだぞ、リョウ君」
通信内容は聞こえているが、なぜか通信に割り込まないハヤト。割り込めない仕様なのか、意図的にそうしなかったのか。いずれにしてもこの通信内容
で、ハヤトは状況を悟り、要塞島内部からの破壊を試みようと決断する。
隼人「博士! リョウ! こうしちゃおれん」
珍しく興奮するハヤト。こうしちゃおれんと再び火事場のバカ力によって拘束具をすべて引きちぎり、意図的に大きな音を立てて外の見張りに気付かせよ
うとする。なお、けたたましい通信音で普通は気付きそうなものだが、たいていの場合、牢番というのは暇をもてあましているので、よほどのことがないと気付
かないのは洋の東西を問わないばかりか、アニメのような物語や現実をも問わないようである。
百鬼兵見張り「どうした? あっ!」
ようやく気付く見張り。しかしこれも定番だが、中にいたはずの人がいないと、つい鍵を開けて中を確認したくなるのもパターンである。パターン通り一人で鍵を開けて部屋の中を確認しようとする百鬼兵見張り。だが、隠れていたハヤトにあっさりやられてしまう。
百鬼兵見張り「うっ」
牢を出たハヤトは、要塞島の一部を破壊できるであろう場所を探して走り出すのだった。一方、リョウは早乙女博士の指示通り、要塞島の一部を破壊するという絶望の戦いを強いられていた。
竜馬「ダブルトマホーク ブーメラン」
ゲッタービームが効かないものがダブルトマホークブーメランで効くはずもないが、そこは神谷明の叫びでできそうな気がしてしまうのが面白い。「ダブルトマホゥク(ここで一呼吸おいて)ブウゥメランッ!!!(ラとンにアクセント)」。しかし、
竜馬「くそぅいくらやっても、かすり傷一つつかねぇや。うわぁっ」
このようにかすり傷一つ付けることもかなわず、逆に要塞島の体当たりを食らい、危機に陥るゲッタードラゴン。ここで主題歌の歌詞2番が終了し、だんだんと盛り上がってくる。
ブライ「げはははは、要塞島のすごさがわかったか、それゲッターロボをたたきつぶせぃ」
勝利を確信するブライ大帝。一方、要塞島の中を走り抜けるハヤトは、要塞島の機関部と思しき部屋を発見する。
隼人「ここが動力室らしいな… よしっ」
この台詞の途中で主題歌の歌詞3番がスタート。いよいよ最後の盛り上がりに向けてスパートがかかる。
ハヤトは(なぜか)手に持っていた手榴弾を取り出し、起爆栓を外して動力室内に投げ込んだ。それに気付く百鬼兵。
百鬼兵「んん、あぁ~~? 何だこりゃ?」
何だこりゃ?じゃない(苦笑)。おまえそれは手榴弾だろ、と見ればわかるが、なぜか百鬼兵は手榴弾を拾い、
百鬼兵「 ふぅ~~~っ ふんっ」
とばかりに手榴弾の導火線の火を消した。そして火が消えたことに満足したのか、あろうことか手榴弾をポイ捨てしたのである。爆発する手榴弾。
百鬼兵「うわあぁぁ~っ」
あんた自業自得だよ…というのはともかく、手榴弾の爆発は動力室の各施設に誘爆し、要塞島内部は爆発連鎖を始める。
ブライ「何事だ…」
あなたの管理不行き届きです。とブライ大帝には言いたいが、非常時にそういうことを求めるのも難があろう(笑)。誘爆し続ける要塞島内部は、ついに強固な外壁も耐えきれなくなり、ついに要塞島の外壁の一部が破壊され爆発するのが外部からも見える状態となった。
竜馬「いったいどうしたってんだこりゃ?」
だよね。あれだけ苦戦していた要塞島が、目の前で突如として一部とはいえ爆発するのだから、まさに「いったいどうしたってんだこりゃ?」である。茫然自失に近い状態のリョウにベンケイが叫ぶ。
弁慶「リョウ! チャンスは今だぜ」
竜馬「よおし、いくぞぅ。ゲッターシャイン」
我を取り戻したリョウは、いつものようにシャインスパークの前準備ゲッターシャインを開始。光り輝くゲッタードラゴン。ちょうどBGMは主題歌3番の「あぁ~くぅをほろぉぼせぇ ゲッタァービィーッムゥー」と一番盛り上がる部分。光弾となるゲッタードラゴンは要塞島に向かっていく。
竜馬「シャインスパーク」
神谷明もといリョウの叫びと共に、光弾からゲッタードラゴンは分離し、要塞島の破壊された部分にまさに突入せんとする光弾。
ヒドラー「ぎゃぁ ひゃぁ」
ブライ「うぉぉ」
断末魔をあげる二人。見事、光弾は要塞島の破壊された穴に入り込み、
ブライ「ぐああぁぁぁ」
という叫び声と共に要塞島は爆発。そのまま海上に落ち、百鬼帝国は最後を迎えたのであった。
以上が、ゲッターロボG最終話の百鬼帝国が滅ぶ前の約3分間(番組内時間)である。見てきたように、要塞島との戦いがクライマックスであるが、勝利するための条件として、
- ヒドラー元帥によってハヤトが救出されただけでなく、要塞島内部に入れてしまったこと。
- 早乙女研究所(の通信設備)が破壊されたため緊急用通信機を用い、ハヤトに要塞島攻略のヒントを与えたこと。
- ハヤトの牢からの脱出を許した、ハヤトの投じた手榴弾への適切な対応ができない百鬼兵の教育不足。
という三要素は外せないだろう。真っ当に戦っても勝てない相手との戦いは、このような偶然と呼ぶ必然がなければ不可能なのである。
さて、ざっとゲッターロボG最終話のクライマックスを見てきたが、終わり方は会心の終わり方といっていいだろう。悪は滅び、死んだと思っていたハヤトもなぜか要塞島の爆発から逃れ生きていた。めでたしめでたし、である。しかもシャインスパークを放ったのはリョウではあったが、そのきっかけをはじめとして縦横無尽に活躍したのは間違いなくハヤト、その人であった。しかもヒロイン ミチルとのロマンスもあり、最近のキートン山田氏(当時は山田俊司)しか知らない人は、彼が演じていたとは信じがたいのではないだろうか(スーパーロボット大戦を知っていたとしても)。まぁ誰が主役かなんて、この際どうでもいいのかもしれないが、とにもかくにも大団円で終了する。
このことは、ゲッターロボの事実上の最終話とは大違いで、最初の方でふれたように「ゲッター3のパイロット巴 武蔵の壮絶な特攻(結果的にで本人は特攻するつもりでなかった)」で幕を閉じた。ゲッターロボも無敵戦艦ダイ(テレビマガジンとかではメカザウルスダイと表記されていたような気がするのだが…)との戦いに敗れ、逃げ帰り、ゲットマシンは撃墜・破壊される。なかなかに厳しい描写はマジンガーZの最終話と同じで、グレートマジンガーへの引き継ぎ的な要素をゲッターロボも持ち合わせていたとなるだろうか。
そんなことを振り返りつつ、今回はここまで。いつもの記事よりも、10倍以上の時間をかけておおくりしました。長かった~。
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