Windows 8、世間的には盛り上がっているのでしょうか。私的には、アップグレード価格が低いこと(1,200円とか約5,000~6,000円とか)やDSP版の制限が緩くなっていることから、Microsoft社は相当な危機感を持っており、裏を返せば盛り上がっていないのではと見ている。実際、社では使っているものの、Vistaから7のような「使い勝手の向上」よりも7から8の「操作性の戸惑い」の方が1か月以上経った今でも感じている。理由は自明で、私が使っているPCはタブレットでもなければタッチパネルを搭載していないからである。
振り返ってみれば、PCのユーザインタフェース、特に入力デバイスはこれまでにもいくつものデバイスを追加してきた。最初はキーボード、そしてマウス。専用デバイスを入れれば、これら以外にもゲームコントローラの類やペン(デジタイズ、タッチ)、スキャナ(バーコードリーダの類も含む)など多くあるが、Windows以前のDOS時代、キャラクタ(文字)中心の時代ではキーボードに勝る汎用デバイスはなかった。もちろん、DOS上で動作するグラフィックスアプリケーションソフトウェアではマウスなどが必須のものもあったのだが、キーボードがなければ話にならなかった。
一方、Xerox社のPARCに出自を持つApple社のLisaとそれに続くMacintoshは、グラフィックスユーザインタフェース(GUI)を纏ったOSでマウスが必須となり、それを模したPCにおけるWindowsも同じようにマウスが必須(標準)となった。しかし、DOSも使うことができた(初期のWindowsはDOSの上に被せられていた)ため、マウスオペレーションオンリーではなく、キーボードも併用して使える道を選択した。その名残は今のWindows 7まで脈々と受け継がれている。とはいえ、GUIをキーボードだけで操作するのは、できないと断言しないものの、マウスを使った方が便利であるのは疑いない。
そこに、今度はタッチオペレーションを採用したWindows 8の登場である。無論、iPadやiPhoneを意識しているのは言うまでもない(Andriodも付け加えておこう)。ユーザインタフェースの選択肢が増えるのは、過去のPCの歴史を見ていけば悪いことではなく、いいこと──いや素晴らしいことだとなる。しかし、iPadやAndriod系まで使っていながら、なぜWindows 8のタッチオペレーションは今一つだと感ずるのだろう。年のせいか…(苦笑)。
ここでもう一つ思うことは、PlayStation Vitaである。PlayStation Vitaもタッチパネルを採用し、ディスプレイ画面だけでなく背面のタッチオペレーションまでサポートしている。だが、ゲームプレイ上必須となるような場合を除き、使いたいとは思わない。それどころか、システムソフトウェアのバージョンアップによって、タッチオペレーションの代わりにコントローラ(スティックやボタン)操作で代用できることが増えるとますますタッチオペレーションを避けるようになってきた。これを単に慣れの問題と片付けていいのだろうか。
ここまで話を進めてきて、ふと想い出したのはそろばんである。かつて珠算塾に強制的に通わされたこともあって、加減乗除くらいは今でもできるが、電卓の代わりとして使おうとは思わない。だが、諸先輩方は電卓よりもはるかに高速に計算し、結果を出すことができた。今ではExcelなど表計算ソフトの登場によって、電卓そのものの価値もビジネスの現場からは疎んじられつつあるが、そろばんを慣れ親しんだ世代の人達は、電卓が普及してもそれを使わず、そろばんを使用していた。8桁や10桁程度しかない電卓に比べれば、そろばんはもっと桁数が多いし、余りの必要となる割り算は普通の電卓では厳しかった(剰余演算の方法がわかっていればどうという問題ではないが)。
そうなのだ。結局のところ、慣れ親しんだものを使い続けるのがユーザインタフェースということで、選択肢が多ければ多いほど、生産性が高く慣れ親しんだものを使い続ける。慣れ親しんだものが選択できない、となれば新たなユーザインタフェースを使うようにするか、そもそもそれを使わなくなる。私にとって、キーボードの生産性が最も高く、ウィンドウオペレーションはマウスの生産性が最も高く、タッチインタフェースは大雑把な選択に向いている。そう、キーボードはピンポイント(1点)、マウスは小領域(マウスのクリック先は1点だが、特定の1点を指定するのではなくその範囲の領域なら指定しやすい)、タッチはマウスよりも大領域を指定しやすいのである(指先でなくペンであればマウスクリック並みの精度は得られる)。
Windows 8から話が思いっきり逸れてしまったが、慣れたユーザインタフェースとオペレーションの種別(違い)によって、生産性や操作性は変わってくる。キーボードの時代からPCを使っていた私は、これまでもそうだったように携帯電話にもキーボードを求め、Palm系やWindows CE系にもそれを求めた。Windows 8は、PCのOSである以上、当然求めるものはこれまでと同じで変わることはない。だからこそ、Windows 8に魅力を感じないということかもしれない。Windows 7の時には、およそ三年前に「Windows 7 深夜販売で元気を貰う」という記事に残してあるが、発売日当日に秋葉原まで出かけたものだった。だが、今回は行くことはないだろうし、Windows 8搭載PCすら物欲がわかない。倦怠期…でもないだろう。
そんなことを思いながら、今回はここまで。
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