さぁ、前回からの続きです。もうその10となってしまった(苦笑)。
と、ここでWindows NT対OS/2の話を続けると、さすがに収拾不可能となるので、この話はここまでとし、このような形でWindows NTはデビューを果たした。簡単にいえば、Windows NTとはユーザインタフェース(GUI)をWindows 3.1を模しただけの中身はまったく別物のマイクロカーネル採用32-bit OS、つまり、従来のWindowsや32-bit対応を実現したWindows 95とも内部的にまったく異なるOSである。しかし、まったく異なるものではあるが、実装されているWin16及びWin32が仔細は異なる部分があるものの、おおよそ同等のソフトウェア実行環境が搭載されており、その流儀に従うものであれば、Windows 95でもWindows NTでも動作することが可能であった。その手本がWindows 95と同時発売されたOffice 95であり、他社が32-bit対応に苦しんでいる中、一気にシェアを伸ばし、デファクトスタンダードとなった(過激な敵対的廉価販売があったことも忘れてはならない)。
話の流れで一気にOffice 95まで話を進めたが、Windows NT系とWindows 95との互換性問題は、そんなに単純なものではなかった。本当の内部事情は定かでないが、私が思うにOffice 95の開発を進める過程で、Windows NTとWindows 95のWin32仕様のすり合わせが行われたのではないかと考えている(反トラスト法訴訟では、WindowsとOfficeの開発はまったく別に行われていたという話だが)。
真の32-bit OSとしてのWindows NT、16-bit Windowsとの互換性を最大限に確保した16-bit/32-bitハイブリッドOSとしてのWindows 95。これらのWindowsアプリケーション実行環境となるWin32も、そもそもはWindows 95のWin32環境をWin32c(cはCommonの頭文字)と別の呼び方があったように、Windows NTの実装とWindows 95の実装とでは細かい差異というレベルでなく、根本的な違いがあった(先にふれた座標系の問題以外にもセキュリティAPIの有無など多数に上る)。しかし、マーケティングの都合でWin32は一つというスローガンが打ち出され、Win32cはただのWin32と名称が変わり、同じ名称なのに実装は違うというわかりにくいものとなったのである。
そして、Win32のベースであるWindows NTも次々とバージョンを更新していった。1993年7月27日にリリースされたWindows NT 3.1は、そのわずか一年後の1994年9月21日、Windows NT 3.5となり、さらに9か月後の1995年5月30日、Windows NT 3.51となった。3.1から3.5へのバージョンアップは、主にブラッシュアップ(使用リソースの縮減及びパフォーマンス向上等)とされていたが、その年に登場するコードネームChicago(Windows 94になるといわれていた)とのWin32(及びGUI)の仕様のすり合わせも行われていた。
結果的に、Chicagoのリリースは一年遅れてWindows 95となり、わずかに0.01だけバージョンの上がったWindows NT 3.51は、Office 95を動作させるために必要な仕様のすり合わせが行われた(無論、それが前面に出てはいなかった)。そういう流れを経て、Windows 95とOffice 95は同時リリースされ、一つのWin32(32-bit Windowsアプリケーション環境)が整ったのである。
このような内部の仕様変化は、ソフトウェア競合他社からは見えるはずがなく、いくらOSのベータ版を提供していたとしても、それより以前に深く関わっていなければ同時リリースなど不可能である。また、OfficeからWindowsへのフィードバックもあり(3Dに見えるツールバーボタン等は、Windowsよりも先にOfficeに実装されていた。CTL32.DLLを覚えていますか?)、ソフトウェア開発を生業としていた者ならば、そのことは火を見るよりも明らかだった。
また横道に逸れつつあるな~。とにかく、まったく異なるOSであるが、その中のWin32環境ではどちらでも動作するOffice 95の存在は、大きかったということで、次回からはWindows NTの話から、再びWindows 95に話を戻し、インターネット接続及びウェブブラウザへの適用についてふれていくことにしよう。次回に続く。
最近のコメント