前回の続きです。
Service Pack。Microsoft社が提供するOSのアップデート、バグフィクスの集合体だが、時代と共に意味合い、位置づけは変わっている。Windows NT 4.0時代は、Service Packは従前になかったまったく新しい機能追加が行われていた。従って、同じバージョンナンバーでありながら、Service Packを当てたか当ててないかで動作が異なるという問題が生じていた。これは企業ユーザーからの不興を買い、今ではService Packにはまったく新しい機能追加は行わないとなっている。
だが、Windows XPはService Pack 2で完全に別物となった。我が国でのリリースでは「Windows XP Service Pack 2 セキュリティ強化機能搭載」と仰々しい名前となったが、名は体を表すように完全なる機能追加であった。そう、ここからセキュリティアップデートが頻繁に行われるようになり、Windows Updateはなくてはならないものとなったのである。
Windows XP Service Pack 2(以下、単にSP2という)は、これまでのService Packと違って、Microsoft社の姿勢は大きく異なっていた。何が何でもSP2に移行してほしい、という強い姿勢である。Windows Updateやダウンロードセンターという通常の提供方法に加えて、驚くべきことに全国約25,000か所の郵便局窓口でも配布するという方法も採られた。私も興味本位で、どんなものをどのように配布するのだろうと郵便局まで行ったことを思い出す。それだけ、強い危機感があったという証左だろう。
このSP2で最も注目する機能追加は、ハードウェア(CPU)によるデータ実行防止機能(DEP)だろう。通常は、CPUでの実装が先行してOSがそれをサポートするという流れだが、これはMicrosoft社の要請にCPUメーカーが応える形で実装されたものである。
このSP2は、2004年9月2日にリリースされ、以後、Windows XPはセキュリティアップデートを行いつつ、安定の道に入った。この頃にはWindows XPがOSの主流に躍り出ていて、Windows 9x系はMillennium Editionという露払い(笑)もあったとはいえ、ほぼ終息した。
そして、2007年1月30日。Windows XPの後継OSとなるWindows Vistaがリリースされる(企業ユーザー向けは2006年11月に先行リリース)。Windows Vistaの開発は紆余曲折を経て、何度も何度もソースコードが捨てられるようなことが繰り返されたが、最終的にはWindows Server 2003(内部バージョン5.2)をベースに改良することとなり、かなりタイトなスケジュールで開発が進められた。結果として、2006年までにリリースという約束を反故にしないため、ボリュームライセンスを11月に前倒しして何とか格好を保ち、一般ユーザー向けには2007年以降としたのだった。このような無理は、Windows Vistaが荒削りな作りであり、様々なユーザーに使われていく過程で悪評を振り撒き続けることになる。
「Vistaはダメ」というワンフレーズ評価は、Windows XPからの移行ユーザーを足止めした。Windows 2000からWindows XPへの移行も遅れはしたが、この時はWindows 9x系からの移行もあったので、遅れはある程度止むを得なかったとなるが、セキュリティを完備したと自負するWindows Vistaへの移行は、もっと早く進んでしかるべきものだった。これが身から出た錆であることから、異例にもService Pack 1のリリースを7か月後には明言しなければならなかったのである。無論、今のようなラピッドリリースの時代ではない。だが、Service Pack 1は年を越した2008年3月19日、ようやくリリースされたのである。
本来ならば、旧OSであるWindows XP SP2であったが、なかなか既存ユーザーはWindows Vistaへ移行しない。そこで、2008年5月6日、Windows XP Service Pack 3がリリースされることになる。以前も、旧OSのアップデートがなかったわけではなかったが、Service Pack 3の登場はWindows XPの延命策であると同時に、企業ユーザーからの強い声であったことは確かである。多くの企業ユーザーが満足してくれたのは、Windows Vistaを改良(ブラッシュアップ)したWindows 7の登場(2009年10月22日、一般ユーザー向けにリリース)によってであり、ようやくMicrosoft社もWindows XPの終息について歩を進めることができるようになった。
そして、Windows 7から8、そして8.1と進み、Windows XPの延長サポートもついに今日で終了する。最後のWindows Updateが終われば、もうそこから先は個別サポートのみ(英国政府など)となる。登場してから12年半ほど。これだけ長い間、一つのバージョン(=Windows NT 5.1)が生きながらえるというのは、メインフレームの世界ではあってもPCの世界ではそうあるものではない(Linuxは? 等という話は別腹)。
何にしても、PC自体が過渡期にあり、PCでしかできないことは今や少なくなっている。スマートフォンやタブレットでいくらでも代わりになる、という時代において、Windows XPはPC全盛期のOSであったと記憶されることだろう。
さらば、Windows XP。PC時代の申し子よ。
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