既にEUでは正式発表されていた2011年モデルVAIO Zだが、ようやく本日(5日)、我が国でも正式発表となった(プレスリリース「起動や画像処理の高速化などの高性能と、優れた“モビリティー”性能を両立 モバイルPCの新しい活用スタイルを提案するVAIO「Zシリーズ」発売 ~ グラフィック性能の向上や各種端子の拡張を実現する新提案「Power Media Dock」付属 ~」)。私の第一印象は、「これは飛びつくものではないな… Ivy Bridgeまで待つべきか…」というものだが、いざ正式発表を受けてみれば「う~む、これはこれでありかな」と思うようにはなってきた(苦笑)。というわけで、今回は正式発表された2011年夏モデルのVAIO Z(VPCZ21シリーズ)について、長年VAIO Z(type Z, 旧VAIO Z)を使ってきた者の一人としてあれこれ語っていこう。
まずは、プレスリリースから眺めてみよう。ここに、SONYの言いたいことが集約されているはずだからである。で、最初に標題から。最も前面に出したいものは、
起動や画像処理の高速化などの高性能 + 優れた“モビリティー”性能 = モバイルPCの新しい活用スタイルを提案
だとなるが、「モバイルPCの新しい活用スタイル」が私に合っているのかどうか。これが、私にとっての2011年夏モデルVAIO Zに価値があるかどうかの分水嶺となろう。では、「モバイルPCの新しい活用スタイル」の両翼の一つを構成する「起動や画像処理の高速化などの高性能」について確認しよう。
プレスリリースの主な特長の1番目に「高い基本性能を搭載」とあるが、列挙すると、
- GPU性能が向上した最新CPU「第2世代インテル® Core™ iプロセッサ」搭載
- 第3世代 SSD RAID搭載
- フルHDの液晶ディスプレイ搭載
- 起動時間はVAIO従来比で最速の約13秒を実現
- 内蔵のバッテリーで約9時間の長時間駆動を実現
とあり、私的にポイントが高いと思うのは「起動時間はVAIO従来比で最速の約13秒を実現」だ。RAID搭載でこれができているのであれば正直驚きで、本当にこれが事実であるのなら(疑っているわけではないが、これまでの経験から…)、サスペンドモード(休止状態)は無用の長物となるのではないだろうか、と思う。また、第2世代インテルCore iプロセッサことSandy Bridgeのグラフィックス性能はGeForce GT 330M相当なので、Mobile GPUとしては力不足といいつつも、先代VAIO Zの外付けGPU並に性能が上がったことで、軽量薄型Mobile PCにおいてはプロセッサ内蔵GPUで十分というのもわからないではない。3kgクラスのノートPCと性能を比べてしまうのは厳しいが、1kg前半でのMobile PCとしては「高い基本性能を搭載」と言う言葉にウソはない。ただ、従来のVAIO Zのコンセプトが3kg台のノートPC並のことができたことを思うと、う~んと唸ってしまうのもまた事実だ。
では、もう一つを構成する「優れた“モビリティー”性能」について確認しよう。プレスリリースの主な特長の2番目にある「携帯性を追求した薄型・軽量デザイン」とあるが、列挙すると、
- カバンに入れて持ち運ぶ利便性を追求し、重さ約1.165kgと軽量で、約16.65mmの薄型フルフラットデザインを実現
- 外装にはカーボン素材、パームレスト及びヒンジ部分にはアルミニウム合金を使用し、さらに、本体側面の断面が六角形の構造となる「ヘキサシェル」デザインを採用することで、軽量・高剛性を実現
- ヒンジ部分はヘアライン加工とソニーロゴの刻印を施したアルミニウム一体成型のデザインを採用し、背面から見てもすっきりとした美しい佇まいを実現
とあり、正直私的にポイントが高いと思うものはない。というのも、本モデルにはVAIO ZにVAIO Xをフュージョンしたような「匂い」が沸き立つからで、フルフラット(エルガイムとは関係ない)だと強調されても「ふ~ん、それで」であり、実際のところ先代VAIO Zと比べれば、たかだか200グラムの差すらあるかないか。だったら、先代VAIO Z並の重量にしてもいいから、フルフラットでなくてもいいから、外付けGPUを内蔵してくれ、あるいはQuadコアプロセッサを入れられるようにしてくれ、と言いたい。
で、この両方を足した結果が「モバイルPCの新しい活用スタイル」ということだが、これはプレスリリース前半に見える
「たとえば、自宅やオフィスで使用する場合は、「Power Media Dock」に接続することによって従来の「Zシリーズ」を超えるパフォーマンスと拡張性を、一方、外出時には軽量・薄型・高剛性なフルフラットボディによる優れた携帯性を発揮し、シーンに応じたスタイルを実現」
を指すと思われるが、ここに2011年夏モデルVAIO Zの「弱み」が書かれている。それはずばり、「Power Media Dock」に接続することによって従来の「Zシリーズ」を超えるパフォーマンス」とある点で、外付けのPower Media Dockを取り付けなければ、総合的なパフォーマンスで従来のZシリーズに及ばない、ということを暗に認めている点にある。このPower Media Dockは、プレスリリースの主な特長の3番目「「Power Media Dock」による拡張性」としてふれられている。ポイントは、
- グラフィックアクセラレーター「AMD Radeon™ HD 6650M」を搭載
- スロットインドライブ(光学ドライブ)を搭載
- HDMI出力、VGA出力、LAN端子に加え、USB端子を3つ(3.0を1つ、2.0を2つ)搭載
で、従来VAIO Z本体に搭載されていたものがほとんどで、これを外出ししたことによって軽量・薄型・フルフラット化を実現したとなるのだろう。だが、私的にこれは本末転倒だ。本体に内蔵してこそ、常時持ち運びすることに相応しいマシンであり、バッテリ稼働時に使わないものは置いておこうという発想なら、VAIO Xで行くべきだ。いかにも外付け光学ドライブ然とした形は、本体のみの美しさとは別次元でいかにもダサい。さらに、Power Media Dockは専用AC電源供給が必須で、太っいAC電源とそれなりのVAIO本体との2本の線がぶら下がる(写真ではうまく隠しているが)。オマケと2本の尻尾が付いたVAIO Zは、思いっきりデザインバランスが崩壊している。そうなると、Power Media Dockなしで利活用するとなれば、それはVAIO ZでなくVAIO Xだ。
かつて、VAIO Z(VAIO type Z)はVAIO S(旧)によって吸収・消滅した歴史を持つが、復活したVAIO Zに今度はVAIO Xの影が見え隠れするようになった。ZとXはコンセプトがまったく異なるものであるのだが、こうせざるを得ない社内的(マーケティング的)な理由があるにせよ、これが相容れないものであることは2011年夏モデルのVAIO Zを見ればよくわかる。どうにも、これは手を出しにくいモデルであり、だとすれば次のIvy Bridge搭載モデルまで待った方がいいのか…、それともこのようなXモドキZがしばらく続くのであれば今買い求めてもいいのか…。揺れる天秤だ、こりゃ(笑)。
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