システムの概要を示してくれる有力なツールの一つ、SiSoftwareのSandraだが、この手のツールが出力する情報を鵜呑みするのは禁物である。言うまでもなく、アナライザ的機能は、適切な内部情報へのアクセスを認めているハードウェアであれば、それに従えば情報を取得できるが、そうでないものに対しては経験則的なもので当たりを付けるしかない。その結果、どちらの取得方法によっても問題が発生する可能性が指摘できる。
適切な内部情報へのアクセスを認めているものの場合は、ハードウェアベンダがそこに正しい値を埋め込んでいるかどうかに依存しているため、これが誤っている場合、あるいは意図的に改変されている場合は、信用できなくなる。この手のものは意外に詐称されているものもそれなりにあり、例えばベンチマークテストで優秀な成績をおさめたいとして、デバイスドライバに特定のベンチマークテストで高いスコアが出るように「細工」が施されていたりする例も過去を含め、現在も…。また、経験則的なものについていえば、それが新版によって取得する方法が異なるよう改変されれば、それで終わりである。こういうことを踏まえて、アナライザツールやベンチマークテストプログラムの出力結果を評価すべきで、ただ結果を鵜呑みして盲進(盲信、妄信)しないようにすることが重要である。
以上を踏まえ、今回はSandra Lite (x86) 2010.1.16.26での出力結果のうち、CPUの概要について見ていこう(なお、いくつかは省略等している)。
プロセッサ
開発元 : Intel
モデル : Intel(R) Core(TM) i7 CPU M 620 @ 2.67GHz
スピード : 2.8GHz
ピーク処理性能(PPP) : 22.34GFLOPS
ピークパフォーマンス調整 (APP) : 6.7WG
1プロセッサー当たりのコア : 2 ユニット
1コア当たりのスレッド : 2 ユニット
タイプ : デュアルコア
バス : Intel CSI (Quick Path)
パッケージ : FC PGA988
最高速度 : 2.8GHz / 1x 133MHz (133MHz)
動作倍率 : 21x
最小/最大/Turbo 倍率 : 12x - 21x - 25x
形式 : G8
名称 : WSM-C (Clarkdale) Core i3/i5 DC 32nm 2.66-3GHz+
改訂/ステッピング : 0 / 25 / 2
マイクロコード : MU06250209
最小/最大 コア倍率 : 0.000A - 50.000A
最大消費電力 : 25.00W
最大 物理 / 仮想 アドレッシング : 36-ビット / 48-ビット
本来のページサイズ : 4kB
大きいページサイズ : 2MB
本機のマイクロプロセッサはIntel Core i7-620M(コードネームArrandale)であるが、これを前提にSandra Liteの出力を見ると、これは?思うところがある。以下に疑問点を列挙すると、
- パッケージが「FC PGA988」とあるのはClarkdaleあたり?と勘違いしている?
- 名称が「WSM-C (Clarkdale) Core i3/i5 DC 32nm 2.66-3GHz+」というのもデスクトップ向けプロセッサと混同している?
といったあたりが主だったところ。他の部分は概ね問題はなく、Mobile向けプロセッサであるという認識(Clarkdale→Arrandale)となれば、このあたりの不具合も正されることだろう。
コプロセッサ (FPU)
スピード : 2.8GHz
タイプ : 内蔵
改訂/ステッピング : 0 / 25 / 2
その昔(80486あたりまで)は、浮動小数点演算コプロセッサはCPUに内蔵されておらず、別チップで提供されることがあったが、もうそういう時代ではない。なので、このように別記すること自体が必要ない気もするが、これはこれでいいだろう。
メモリーコントローラ
プロセッサーに統合 : 有効 (利用可能)
スピード : 2.13GHz
動作倍率 : 16x
スピード2.13GHz。いやはや凄い時代になったものだ。x86/x64プロセッサで見れば先にAMD社のプロセッサがメモリコントローラを内蔵しているので、それほどと思わない方もあるだろうが、私にとっては初体験(会社で利用するものは除く)。もちろん、Mobile PCにおいても初体験であるので、ここまで速いとDRAMの方が追随できなくなるのでは、と思ってしまう。
キャッシュの情報
内部データのキャッシュ : 32kB, 同期, ライト・スルー, 8-way set, 64 byte line size, 2 threads sharing
内部命令のキャッシュ : 32kB, 同期, ライト・バック, 4-way set, 64 byte line size, 2 threads sharing
二次キャッシュ : 256kB, ECC, 同期, ATC, 8-way set, 64 byte line size, 2 threads sharing
L2キャッシュ の動作倍率 : 1x
L3 オンボードキャッシュ : 4MB, ECC, 同期, ATC, 16-way set, Exclusive, 64 byte line size, 4 threads sharing
L3キャッシュ の動作倍率 : 1/16x
プロセッサのCacheメモリについて。Nehalemアーキテクチャはすべてのコア(ダイ)で3次キャッシュまで持つが、いずれもプロセッサのコアクロックと同期している(L1~L3のタイミングは異なる)…はずなのだが、L3 Cacheの動作倍率が16分の1倍と報告されている。どこをどうするとこの倍率が出てくるのかはわからないが、メモリコントローラの動作倍率とこれを乗ずると1倍になるので、まぁそういうことだろうか?
アップグレードの可能性
ソケット/スロット : N/A
サポートされたスピード : 2.8GHz
環境モニタ 1
モデル : Intel Core CPU [P0, C2, T105]
バージョン : 37.02
マザーボードの特定のサポート : 無効 (利用不可)
環境モニタ 2
モデル : Intel ICH55 HwMon
マザーボードの特定のサポート : 無効 (利用不可)
以上の3項目は、特にコメントなし。
電源の割り当て
CPU コアの消費電力 : 25.00W
25W。おそらく定格TDPあたりを報告していると思われる。Arrandaleの通常電圧版のTDPは35Wであり、これが25Wとあるということは、残りの10Wはプロセッサに載っているもう一つのダイであるグラフィックスコアのTDPを10Wと見ているのだろう。45nmプロセスのPenryn(Core 2 Duo)が25Wが中心だったことを思えば、32nmで25Wというのはやはり高い。32nmプロセスのWestmareをArrandaleで採用したのも消費電力面と競争(コアクロックの高さ)という点から、当然の選択といえるだろう。
センサー
CPU 1 温度 : 51.00°C td
摂氏51度。Sandra Liteを動作させる前に、それなりに使っていた割にはよく冷やされていると言うべきか。
機能
FPU - コ プロセッサーの内臓 : 有効 (利用可能)
VME - 仮想モードの拡張 : 有効 (利用可能)
DE - Debugging Extension : 有効 (利用可能)
PSE - ページサイズの拡張 : 有効 (利用可能)
TSC - Time Stamp Counter : 有効 (利用可能)
MSR - Model Specific Registers : 有効 (利用可能)
PAE - 物理アドレス拡張 : 有効 (利用可能)
MCE - Machine Check Exception : 有効 (利用可能)
CX8 - Compare & Exchange Instruction : 有効 (利用可能)
APIC - Local APIC Built-in : 有効 (利用可能)
SEP - Fast System Call : 有効 (利用可能)
MTRR - メモリー タイプ レンジ レジスタ : 有効 (利用可能)
PGE - ページ グローバル イネーブル : 有効 (利用可能)
MCA - Machine Check Architecture : 有効 (利用可能)
PAT - Page Attribute Table : 有効 (利用可能)
PSE36 - 36-ビット 拡張ページサイズのサポート : 有効 (利用可能)
PSN - 個別のシリアル・ナンバー : 無効 (利用不可)
CLF - Cache Line Flush のサポート : 有効 (利用可能)
DS - Debug Trace & EMON Store : 有効 (利用可能)
ACPI - ソフトウェアによる動作クロックの制御 : 有効 (利用可能)
(W)MMX 技術 : 有効 (利用可能)
FXSR - Fast Float Save & Restore : 有効 (利用可能)
SSE Technology : 有効 (利用可能)
SSE2 Technology : 有効 (利用可能)
SS - Self Snoop : 有効 (利用可能)
HTT - ハイパースレッディング・テクノロジー : 有効 (利用可能)
TM - サーマル・モニター : 有効 (利用可能)
PBE - Pending Break Enable : 有効 (利用可能)
IA64 Technology : 無効 (利用不可)
SSE3 Technology : 有効 (利用可能)
PCLMULQDQ - Carryless Multiplication : 有効 (利用可能)
MON - Monitor/MWait : 有効 (利用可能)
DSCPL - CPL qualified Debug Store : 有効 (利用可能)
VMX - Virtual Machine eXtensions : 有効 (利用可能)
TXT - Trust Execution Technology : 有効 (利用可能)
EST - 拡張 SpeedStep テクノロジー : 有効 (利用可能)
TM2 - Thermal Monitor 2 : 有効 (利用可能)
SSSE3 Technology : 有効 (利用可能)
CID - コンテキスト ID : 無効 (利用不可)
FMA - Fused Multiply Add eXtensions : 無効 (利用不可)
CX16 - Compare & Exchange 16-bytes Instruction : 有効 (利用可能)
xTPR - Send Task Priority Messages : 有効 (利用可能)
PDCM - PerfMon and Debug : 有効 (利用可能)
DCA - ダイレクト キャッシュ・アクセス : 無効 (利用不可)
SSE4.1 Technology : 有効 (利用可能)
SSE4.2 Technology : 有効 (利用可能)
x2APIC - v2 APIC Mode : 無効 (利用不可)
MOVBE - バイト-スワップ ロード/ストア : 無効 (利用不可)
POPCNT - ポップ カウント : 有効 (利用可能)
AES - 暗号処理 のサポート : 有効 (利用可能)
XSAVE - eXtended State Management : 無効 (利用不可)
OSXSAVE - OS 有効 eXtended States : 無効 (利用不可)
AVX - アドバンスト ベクター エクステンション : 無効 (利用不可)
GIH - ゲスト in ハイパーバイザー : 無効 (利用不可)
DAZ - Denormals Are Zero : 有効 (利用可能)
拡張した特長
EMMX - Extended MMX Technology : 無効 (利用不可)
3DNow! Technology : 無効 (利用不可)
Extended 3DNow! Technology : 無効 (利用不可)
XD/NX - No-execute Page Protection : 有効 (利用可能)
AMD64/EM64T Technology : 有効 (利用可能)
RDTSCP - Serialised TSC : 有効 (利用可能)
P1GB - 1GB ラージ ページのサポート : 無効 (利用不可)
SVM - Secure Virtual Machine : 無効 (利用不可)
AltMovCr8 - Lock Move CRn : 無効 (利用不可)
ABM - Advanced Bit Manipulation : 無効 (利用不可)
SSE4A Technology : 無効 (利用不可)
MASSE - Misaligned SSE Mode : 無効 (利用不可)
3D Now! プリフェッチ Technology : 無効 (利用不可)
XOP - eXtended OPerations : 無効 (利用不可)
FMA4 - 4 Operands Fused Multiply/Add eXtensions : 無効 (利用不可)
CVT16 - Half Precision Float Conversion : 無効 (利用不可)
電源マネージメントの機能
DTSC - デジタル温度センサー : 有効 (利用可能)
IDA - Dynamic Acceleration Technology : 有効 (利用可能)
HCFC - Hardware Coordination Feedback Capability : 有効 (利用可能)
電源マネージメントの機能
STC - ソフトウェア温度コントロール : 無効 (利用不可)
TM - サーマル・モニター : 無効 (利用不可)
TTP - Thermal Trip : 無効 (利用不可)
VID - 電圧の制御 : 無効 (利用不可)
FID - クロックの制御 : 無効 (利用不可)
TS - 温度センサー内臓 : 無効 (利用不可)
以上4項目は、基本的にフラグ(CPUID等)を見て結果報告しているだけであり、特にコメントはなし。
仮想計算機の機能
バージョン : 0.15
アドレス幅の制限 32-bit : 無効 (利用不可)
デュアルモニターの割り込みがあります/システムマネージメントモード : 有効 (利用可能)
VMExitの報告情報 : 有効 (利用可能)
Ex Capability MSR のサポート : 有効 (利用可能)
特にコメントはなし。
拡張設定
Fast Strings : 有効 (利用可能)
PM - パフォーマンスの監視のサポート : 有効 (利用可能)
PEBS - Precise Event Based Sampling のサポート : 有効 (利用可能)
IDA - Dynamic Acceleration Technology : 有効 (利用可能)
Turbo 倍率 (1C-2C-3C-4C) : 25x / 23x / 0x / 0x
TM2 - Thermal Monitor 2 : 有効 (利用可能)
EST - 拡張 SpeedStep テクノロジー : 有効 (利用可能)
平均クロックスピード : 45.00%
Package C3 Residency : 6.09%
Package C6 Residency : 16.35%
Package C7 Residency : 0.00%
Core C3 Residency : 10.97%
Core C6 Residency : 30.33%
この項目には、興味深いデータが報告されている。Turbo 倍率とあるのはTurbo Boostの倍率設定かと思われるが、これだけ見ると4段階はありそうだが、0以外の倍率が指定されているのは2つだけ。しかし、Sandra Liteの報告でコアクロックが2.80GHz(21倍)と報告されていることからわかるように、定格の20倍(2.66GHz)を上回る23倍と25倍以外にも、動作コアクロックを設定できることが確認できている。また、平均クロックスピードとそれ以下に続く5項目も、なかなかに興味深い。
と、時間がなくなったので、後刻、再編集・追加等を行う予定…として今朝終えていたものに、コメントを追加できたので、今回はここまで。
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