1か月以上にわたって、ほぼ VAIO Duo 13 | red edition の記事ばかりおおくりしてきたが(ずっとPC関係の話題だけでいいという声も届いてはいますが…)、まったく話題は変わって今回はタイトルのとおり、第95回全国高校野球選手権記念大会(いわゆる夏の高校野球大会)に関するものである。
第1回大会が全参加校数73校からスタートしたのが、1915年(大正4年)と実に再来年には100周年を迎える伝統ある大会であるが、現在の都道府県から最低1校は必ず出場する方式が採られたのは第40回記念大会(1958年=昭和33年)で、まだ本土復帰がなっていなかった沖縄県代表を含めてのものだった。ちなみに北海道が南北に分かれたのが第40回記念大会の翌41回からで、東京が東西に分かれたのはそれより下った第56回大会からである。しかし、全都道府県からの代表が揃うのは記念大会(40, 45, 50, 55, 60回)のみで、通常の大会では第61回大会(1979年=昭和54年)からとなっている。なので、数え方からすれば第60回からずっと続いているとも言える。
だが、その時からずっと言われ続けていることがある。それがいわゆる「1校の格差」であって、各都道府県の参加校数により、出場しやすいところとそうでないところがあり、甲子園に出たいが為に地元を離れてはるか遠くの出場校数の少ないところの高校に行くという現象を生んでいる。
では、今大会における事実を以下に示そう。全49地区(北海道と東京は2つあるので47+2=49)の参加校数、優勝までの試合数、そして他県出身者数(ベンチ入り18人中)を参加校数順に並べたものである。
まず、表の注意点として★が付いているのは、80回、90回と10回毎の記念大会時のみ地域が2分割される地域を示し、☆が付いているのは再試合が1含まれていることを示している。また、大分の参加校数は66とあるのは誤りで47が正しい。
さて、上は神奈川県で190校。かつては200校を超える参加校数を数えたが、今大会は190校とやや減少傾向にある。全国での参加校数も、2002年(平成16年)及び2003年(平成15年)の4,163校をピークに、やや減少傾向にあって今大会は3,957校である。全国平均では81校(3,957÷49≒80.76)、中間値では66校(49代表中25番目の出場校数)となっているので、これらを考慮に入れながらポイントとなるところを以下に見ていこう。
まずは上位10地域を見てみよう。
- 神奈川 190校
- 愛知 189校
- 大阪 179校
- 千葉 171校
- 兵庫 162校
- 埼玉 156校
- 東東京 139校
- 福岡 135校
- 西東京 131校
- 南北海道 125校
大都市圏に属するところが多いのは自明とはいえ、いわゆる3大都市圏に8地区が集中し、そのうちの5地区が首都圏となっている。ただ、ベスト10といっても1位と10位の差は75校もあるので、その偏りは大きなものだと言って過言ではないだろう。
続いて、少ない順に並べ替えた上位(下位)10地域を見てみよう。
- 鳥取 25校
- 福井 30校
- 徳島 31校
- 高知 32校
- 山梨 38校
- 和歌山 39校
- 島根 39校
- 香川 40校
- 佐賀 41校
- 奈良 42校
やはり、山陰と四国、大都市圏に隣接するが山間にあるところは少ない傾向にあることがわかる。中でも四国地方の3地域は目立つところで、実際これに愛媛県(59校)を加えても162校にしかならず、これは兵庫県とまったく同じ数となっている。兵庫県は全国で5位なので、四国と同じだけの代表校を出していいのであれば、神奈川、愛知、大阪、千葉、兵庫、そしてそれよりわずか6校少ないだけの埼玉あたりは4校出してもいいくらいである。ちなみにこれら地域の今大会のベスト4は、
- 神奈川 = 横浜、平塚学園、東海大相模、桐蔭学園
- 愛知 = 愛工大名電、愛知黎明、中部大第一、愛産大三河
- 大阪 = 大阪桐蔭、履正社、関西創価、東大阪大柏原
- 千葉 = 木更津総合、習志野、専大松戸、東海大望洋
- 兵庫 = 西脇工、東洋大姫路、報徳学園、育英
- 埼玉 = 浦和学院、川越東、聖望学園、市立川口
といった面々で、いずれも全国大会に歩を進めてもおかしくないところばかりである(全国49代表を眺めてみれば)。そして、四国の各地域よりも少ないのが鳥取と福井で、これはもう何をか言わんやであろう。何せ、地方大会の一つの目標とされるベスト16に入るために必要なことは、シード権をとるか抽選で2回戦からとするだけで決まってしまうからだ。実際、徳島代表の鳴門は4試合戦っただけで代表になっており、4試合ということは最初からベスト16からスタートしたことがわかる。一方、最も試合数の多かった東東京代表の修徳は、ベスト16にたどり着くまで4試合を勝たねばならなかった。つまり、方や4試合で代表となり、此方4試合でベスト16入りなのである。この格差は誰がどう見たって、異常な状態と言わねばならないだろう。
では、続いて格差がどの程度の開きがあるかを見てみよう。以下に示すのは、「鳥取の25校を最小単位とした場合、何校出場可能かを示した最大格差」、「全国3,957校を49地域で割った全国平均81を基準とした場合、何校出場可能かを示した平均格差」、「全国49地域のうち真ん中の25番目の地域にあたる66校を基準とした場合、何校出場可能かを示した中間値格差」を並べて記載したものである。
- 神奈川 7.60 2.35 2.88
- 愛知 7.56 2.33 2.86
- 大阪 7.16 2.21 2.71
- 千葉 6.84 2.11 2.59
- 兵庫 6.48 2.00 2.45
- 埼玉 6.24 1.93 2.36
- 東東京 5.56 1.72 2.11
- 福岡 5.40 1.67 2.05
- 西東京 5.24 1.62 1.98
- 南北海道 5.00 1.54 1.89
鳥取県を基準にすると、実に1校の格差は神奈川で7.60という驚異的な数に達する。地方大会の価値で言えば、鳥取の代表校と神奈川や愛知のベスト8はほぼ同等だと言うことである。ただ、これを基準にしてしまうと代表校が158校ととんでもない数になってしまうので、あくまで最大と最小の格差という意味でしかない。現実的には、平均値か中間値との比較という線になる。
3つのうち、最も差が少なくなるのは平均値を基準にしたものとなるが、それでも神奈川は2.35と2倍以上の差となっている。ただ、上位6地域は10回毎の記念大会では地域が2分割されるので、格差は2倍未満にすべて収まる。一方、中間値を基準にしたものはもう少し数字が大きくなるが、平均値を超えるのがたったの17地域しかないことを考慮に入れれば、こちらの線もあり得るものだとなるだろう。どちらにしても参加校の多い地域にとって、「1校の格差」は無視できない問題だということが数字の上からもよくわかる。
今度は逆に参加校が少ない順から見てみよう。
- 鳥取 1.00 0.31 0.38
- 福井 1.20 0.37 0.45
- 徳島 1.24 0.38 0.47
- 高知 1.28 0.40 0.47
- 山梨 1.52 0.47 0.58
- 島根 1.56 0.48 0.59
- 和歌山 1.56 0.48 0.59
- 香川 1.60 0.49 0.61
- 佐賀 1.64 0.51 0.62
- 奈良 1.68 0.52 0.64
鳥取が基準のものは鳥取が1.00は当然として、既に少ない側から見てもかなりの開きだと言える。少ない順で5番目に位置する山梨ですら、その格差は1.52と5割以上の差となっている。
また、平均格差や中間値格差を見ると、参加校の多い地域とはまた別の問題があることが浮かび上がる。平均格差を基準とすると、0.50未満となっている地域は逆に2倍以上の格差がある地域といえ、鳥取から香川までの8地区は平均から2倍以上少ないとなる。つまり、これら地域の代表はより少ない数から選出されるわけで、逆数で2倍以上の開きがあるのはさすがにいかがなものかとなる。これを平均でなく中間値としても、鳥取から高知の4地域は0.5を下回っているので、この地域から1代表を出すというのはあまりに不公平だと言われても仕方がないところだ。
とはいえ、参加校数だけでモノを語るわけにもいくまい。地域にはそれぞれシード権をはじめとして様々な有力校軽減策が採られており、裏を返せば有力校でなければ参加校数以上の辛さが底流に流れている。次に、代表となるまでの試合数順に並べたものを示そう。
- 東東京 8試合(139校)
- 神奈川 7試合(190校)
- 大阪 7試合(179校)
- 千葉 7試合(171校)
- 兵庫 7試合(162校)
- 埼玉 7試合(156校)
- 福岡 7試合(135校)
- 京都 7試合(78校)
- 広島 7試合(93校)<ただし、再試合を除けば6試合>
最も多くの試合数を経てきたのは、先に示したように東東京代表の修徳で、実に8試合に勝利して捥ぎ取ったものである。参加校139校と参加校数順位としては7位に位置し、神奈川よりも51校少ないが、修徳はノーシードで且つ組み合わせの結果で1回戦から登場したためである。東東京大会で1回戦を戦ったのは36校しかないので、くじ運が悪い中、よく代表権を勝ち取ったと賞賛に値する。
続くのは7試合で、これは参加校が上位に位置する地域が並んでいる。このうち、京都が78校でありながら7試合と多いのは、代表の福知山成美がこれも修徳同様にノーシードかつ1回戦から戦ったからである。つまり、単純に参加校数の多寡で決まるというよりは、強豪校である(=シード権を得る)こととくじ運によって左右されるものだとなるわけである。こう考えると、「最低線で26(2の6乗)+1=65」の参加校があれば、意図的にトーナメント表を作らない限りは最高7試合を戦わなければ代表になれないので、中間値の66校というのは現実的な基準と言えるわけである。
では、次に試合数の少ない順で並べたものを見てみよう。
- 徳島 4試合(31校)
- 鳥取 5試合(25校)
- 福井 5試合(30校)
- 高知 5試合(32校)
- 山梨 5試合(38校)
- 和歌山 5試合(39校)
- 香川 5試合(40校)
- 佐賀 5試合(41校)
- 奈良 5試合(42校)
- 大分 5試合(47校)
- 富山 5試合(48校)
- 宮崎 5試合(49校)
- 石川 5試合(50校)
- 山形 5試合(52校)
- 滋賀 5試合(53校)
- 長崎 5試合(58校)
- 岡山 5試合(59校)
- 山口 5試合(59校)
- 愛媛 5試合(59校)
最も少ないのは、これも先に示したように徳島代表の鳴門で4試合。シード権があって2回戦から登場した時点で、既にベスト16入りという笑ってしまう展開。他はすべて5試合となっているが、この地域の地方大会では徳島代表と同様に、4試合勝てば代表となる地域も存在する。また、5試合の地域の中にも、ノーシード且つ1回戦から戦った場合は6試合必要とするところも当然ある(少ない方から数えて6番目の島根代表の石見智翠館は6試合を勝ち抜いた)。
試合数が多い・少ないという視点では、参加校数の差ほどは差が表れないが、それでも明確に差が認められるのは明らかである。そして、その差を埋める指標としては「中間値」を基準とした「中間値格差」とし、上の2.00前後のところでは地域を2分割して行う。実際、これは既に10回毎の記念大会で採用されているので、このこと自体はおそらく異論もなく決められるだろう。
だが、問題は下の0.50前後のところで、鳥取(0.31)から奈良(0.52)あたりまでは地域1代表を見直すことが求められる。これらが単純に隣り合っているのであれば、統合ということで格差解消となる。
- 徳島(31校)+ 高知(32校)= 63校
- 鳥取(25校)+ 島根(39校)= 64校
- 奈良(42校)+ 和歌山(39校)= 71校
- 福井(30校)+ 富山(48校)= 78校
このあたりは隣接しているからまだしも、山梨(38校)、香川(40校)、佐賀(41校)あたりが相手先が見当たらず、福井の相方に富山を入れた関係で、これより少ない大分(47校)の処遇も扱いが難しい。多い方は増やせばいいが、少ない方は単純に統合とはいかない。まさに、選挙区の区割りと同じ問題だとなるわけである(苦笑)。ちなみに東京都は、今大会から東西の格差を解消するため、中野区と世田谷区を東西入れ替えた(中野区が西から東へ、世田谷区が東から西へ)。こうした格差を解消する努力は地方大会では行われているが全国レベルで相変わらずなのも、政治と似たようなものだとなるだろう。
とはいえ、66校を最小単位とすれば、栃木(64校)や三重(64校)まで統合対象が広がるので、もう少し何とかなるかもしれないが、今度は統合を免れた少ない地域が目の敵になるわけで、都道府県の境界線を基準とする限り道険し、というところが現実となるのだろう。そもそもが、中核市クラスの人口しかない県が存在することの方が問題であるのだが(呆笑)。
最後に、今大会代表の都道府県外選手(18人枠中)の多い順に並べたものを以下に示そう。
- 岐阜 16人(67校)
- 京都 14人(78校)
- 高知 13人(32校)
- 鳥取 11人(25校)
- 島根 11人(39校)
- 福島 11人(83校)
- 静岡 11人(117校)
- 西東京 11人(131校)
- 愛媛 9人(59校)
- 埼玉 9人(156校)
- 大阪 9人(179校)
例えば、前回大会では準優勝した青森代表の光星学院(現 八戸学院光星)がほとんど大阪出身者で占められていたが、今回の青森代表は全員が青森県出身であるので、必ずしも上位にあるから、あるいはここに出ていないからといって都道府県の多寡を云々できるものではない。また、大都市圏かつ都府県境にある私立学校では、一般的な自宅通学でありながら県外出身者となる場合もあって、これも一概にいわゆる野球留学とは言えないものも少なからずある。あくまで参考値でしかないが、鳥取や高知、島根等といった参加校数の少ないところにおいては、この意味するところは明らかだろう。
といったところで、今回はここまで。
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