XWIN II Web Page時代には、PC特にマイクロプロセッサ関連の記事を多く書いたものだが、最近はすっかりご無沙汰となっている。最新プロセッサであるCore i7に関しても、当Blogでは、
の3本くらいしかない。そんな状況下、久しぶりに書こうと思ったのは、先週発表されたCore i7最上位モデルの製造中止という発表があったからである。もっとも、桐ヶ谷駅の歴史を書き終えるまでにこれに手を付けると、きっと桐ヶ谷駅の歴史は放置されるという危惧があったことから、これを終えて、書こうという勢いのあるうちに本稿を書いてみようという流れである。では、能書きはこの辺にして早速キーボードを叩いていこう。
あくまで名前だけは維持したいとして、中身は変わってもNehalemというコードネームを形を変えて継承していたCore i7。昨年来のAtomブームとネットブックPC及びネットトップPCの躍進によって、ハイエンドへの必要性が薄まりつつあった中、昨秋のリーマンショック以降の世界同時不況の蔓延。アメリカンな資源大量消費でもわずかなスピードアップ(=最速)を、と盲信するNetBurstの亡霊についにとどめを刺してくれそうな感じである。
ソフトウェア、特にOSにおいても64-bit化などどこ吹く風。Microsoft社が急ぐWindows 7は、ハイエンド指向から一転、ネットトップPCでの動作までも保証しようという、ロゥエンドまでとは言わないが、広く普及しているPCをも包括しようという流れである。Core i7はもとより、Core 2どころかAtomでもそれなりに動作するというのなら、誰がCore i7プロセッサ搭載PCを採用しようと思うだろうか(ハイエンドにはハイエンドの需要があって、ここはそうそう動くものではないが普及の途につくとは言い難い)。
Core 2の成功は、NetBurstへの不満が弾けたものであり、その大波はAMDプロセッサをも呑み込んでいったが、Core i7が登場して以降、Core i7に流れていったかといえばそうなってはいない。言うまでもなく、Intel社の戦略(ロードマップ)では、Core i7は2009年前半までハイエンド、エクストリーム系でしか提供されないとされており、その点から見れば現状に大きな不満はないようにも思う。が、しかし、先週発表されたCore i7 Extreme及びCore i7の最上位モデルの製造中止というProduct Change Notificationによる発表は、そう単純な話ではないようにも伺える。
「市場の需要が他のプロセッサに移行したため」(Market demand for the Intel Core i7-xxx has shifted to other Intel processors)というのが、Product Change Notificationに記載された理由(Core i7-xxxとあるxxx部分は、実際には965 Extreme Editionあるいは940が入る)だが、まさにその通りなのだろう。ただ、ハイエンド、エクストリーム系の需要がないのか、Core i7の上位モデルに需要がないのかは明瞭ではない。私はその両方だと見ているが、Intel社にとって重要なことは需要云々というレベルではなく、Core i7というブランド名が立ち上げに失敗して傷がついたことと考える。
今年後半には、いよいよMobile向けプロセッサにもNehalem系が登場するとロードマップには示されており、デスクトップPCにおいてもNehalem系をメインストリームにまで普及させるようになっている。その際、いつまでもCore i7というブランド名のプロセッサに居座られていては「普及させたくても印象が悪すぎる」となり、さっさとハイエンドブランドとしてのCore i7に見切りを付け、新たなブランドネームを冠するのではないかと予想するのである。
一方で上位モデルのみが製造中止になったということは、Core 2 Quadとの関係はどうなるのだろうかという疑念もある。Core 2 Quadは、最高パフォーマンス(特にベンチマークテスト)はCore i7 920に及ばないものの、今年に入ってTDP 65W版が登場したことで、性能/電力バランスがさらに優れたものとなった。Mobile版に至ってはTDPが45Wまで落とされている。これに対抗できるだけのものが、Nehalem系で用意できるのか。可能性があるとするなら、プロセスルールの縮小とさらなるリーク電流を軽減した製造プロセスの採用となり、それは早くても今年末から来年となる。少なくとも、今年後半の段階では余程のことがない限り(例えば、Pentium 4の時にもあったが、TDPの算出方法を変えるとか)、Core 2 Quadを乗り越えるのは困難だろう。
とはいえ、来年になれば新プロセス採用とGPUを統合したDualコア版が出てくるので、ここまで来ればNehalem系のプロセッサも「いい感じ」にはなってくる。しかし、Core i7のコア数を半減することで、Core 2との優位性をどの程度演出するのだろうか。当然、ベンチマークテストではグラフィックスパフォーマンスも加え、比較対象は自社の冴えないGMCHとするだろうから、表現としては「爆速」と演出するに違いない(苦笑)。
色々なことが考えられるが、ハイエンド系のプロセッサがリリース間もなく製造中止となるのは、3年程前のPentium D 920のことを思い起こさずにはいられない。Core 2登場前にリリースされたが、わずか2か月ほどで製造中止と発表され、NetBurstの断末魔と象徴付けられるような出来事だった。今回のCore i7は状況が大きく異なるとはいえ、「市場の需要が他のプロセッサに移行したため」とするのは常套句でもある。実のところ、Core i7がどうなるかなどほとんど興味はないのだが、Mobile Pentium 4-MのようなMobileプロセッサを出してくれるな、という牽制球を投げるようなつもりで本稿を書いてみた。以上。
(追記)
コメントをいただいたので追記しておくと、これは私の希望的観測です(苦笑)。
965Extremeと940が製造中止されるのは、C0からD0ステッピングに変更されて975Extremeと950に変更されるからですよ。
920はすでにD0にステッピング変更が行われているので、据え置きのままのようですが。
920のように据え置きではなく、モデルナンバーを変えるのはAMDに対する牽制のような気がしますが、、、
あと、i7ブランドに見切りをつけるというのもないと思われます。
Core2 Duoの後継がCore i5とi3といわれてる位ですし。
ノート用もNehalemになることも確実でしょうけど、さすがにP4Mのようなことにはならないでしょう(笑)
Intel自身も懲りてるでしょうしね。
投稿情報: ふにに | 2009/05/11 23:26
ふにに 様、コメントありがとうございます。
巷間言われているとおりだとは思うのですが、どうにもNehalemの素性が…。ステッピングが上がっても…。
もとより、NetBurstにはいい夢も悪い夢も体験させてもらっているので、この虎馬がどうしてもああ書かせてしまうのですよ(苦笑)。ま、希望的観測とでも思ってくださいませ。
投稿情報: XWIN II | 2009/05/12 06:46