SONYは、本日(6日)ニュースリリース「個人向けVAIOパーソナルコンピューター新製品発売のご案内」を発し、第二世代VAIO type Zを始めとしていくつかの新機種を発表した。注目していたのはもちろん、第二世代VAIO type Z。型番が90から91へと1だけしか増えていないのは、かつてのSZシリーズと同じで第一世代と基本的に変わっていない。よって、何をウリにするかがポイントとなるが、ニュースリリースでは次の三つを強調している。
- Windows Vista 64ビット版に対応
- より充実したカラーとプレミアムデザイン
- VAIOオーナーメード限定「メッセージ刻印サービス」
以上、本質的に何も変わっていないことが確認できる。で、終わってしまうのは何なので、ちょっとだけコメントしてみよう。
Windows Vista 64-bit版についてニュースリリースでは、「従来の32ビット版に比べ、アプリケーションやプログラムの処理により多くのメモリーを利用できるようになるため、64ビット版OSに最適化されたプログラムのパフォーマンスが約10~20%向上します。また、現在繁殖するコンピューターウィルスの多くは32ビットで作られているため、ウィルスの攻撃を防御することができ、セキュリティー面においても強化されます」としている。無論、誇張しすぎることはなく、落ち着いた文言であるが、重要なポイントが抜け落ちている。
16-bitから32-bitへの移行期を経験されている方なら思い出してほしい。なぜ、目の前にある32-bit OSを使わずに16-bit OSを使い続けていたのか。具体的には、Windows 3.xとWindows NT、またはWindows 9xとWindows NTでもいい。使う側もさることながら、作る側のMicrosoft社もWindows XPで32-bit版に統合させるまでの間、Windows 9x系という32-bit/16-bitハイブリッドOSを用意していたのか。最大の理由は「互換性」、次点としては要求ハードウェアリソースの増大に尽きる。PCユーザ、中でもアプリケーションソフトウェアを使用するユーザは保守的で、わずかでも非互換なものがあれば移行しようとしない。それどころか必要性すら感じないのである(XP → Vistaも同様)。Microsoft社は、32-bit OSはWindows XPで終わりにして、次バージョンは64-bit OSに移行するつもりでいたが、Vistaでそれを実現させることができなかったばかりか、さらに次バージョンとなるWindows 7でも32-bit版は残る。いや、残るというよりはまだまだ主力であると言っていいだろう。
また、より多くのメモリを利用できるのは事実だが(より正確に言うならより多くのメモリアドレス)、プログラムサイズ並びにメモリ空間を占有する領域が拡大する事実も忘れてはならない。つまり、64-bitアプリケーションソフトウェアは32-bitアプリケーションソフトウェアよりも、一般的に多くのメモリを使用する。その上、32-bit版Windowsでは2GBのメモリ空間にシステムプログラム(カーネル、ドライバ、サーヴィス等、システムソフトウェア群)に押し込められているが、64-bit版Windowsでは2GBを超えるメモリ空間を利用できるため、システムパフォーマンスが向上はするだろうが、一方では利用される物理メモリ量も増大する(使用できるメモリが多いからこそパフォーマンスが上がるわけだ)。つまり、32-bit版OSよりも利用できるメモリが多い64-bit版OSという言い方は正しいが、より多く使うのが64-bit環境なのである。よって、たかが4GB程度の物理メモリをフルに利用できるとしたところで……、とここまで書いて思い出した。約2年ほど前に当Blogでも、以下のような記事を書いていたのだった。
このような記事を書いてから、状況は多少はよくなってはいる。しかし、64-bit対応のドライバやシステムソフトウェアは充実していると言えるだろうか。いや、充実していないからこそ「現在繁殖するコンピューターウィルスの多くは32ビットで作られているため、ウィルスの攻撃を防御することができ、セキュリティー面においても強化されます」と言っているのだろう。要は、マイナー故、ターゲットとはならないということがウリなのだから。
しかし、SONYが64-bit OSを載せた理由は、そんなことよりも大事なこと、5万円ノートPCとの差別化のためではないかと邪推する。エンドユーザに違いをわかってほしいが、わかって差別化できるのものがほとんどない。そこで、やむを得ず64-bit OS搭載で、32-bitよりも高級な64-bitと言いたいのではないだろうか。なぜなら、続く二番目・三番目のウリについては、カラーと刻印という外回りの見かけだけのもの。そんな中、64-bit OS搭載を前面に出さざるを得なかったのかもしれないが、私はVAIO type Z離れが進んでしまうのでは、と考える。Windows XPからWindows Vistaへの移行なんかよりも、生易しいものではない。もっとも20万円を超えるノートPCを買おうなんていうユーザは、もはや希少価値になるだろうから、それはそれでいいのかもしれない…。
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