今から2か月半ほど前に「WILLCOM D4には行かないだろうなぁ」というタイトルで、Advanced W-ZERO3[es]を使用する私が、乗り換えたくても乗り換えられない気持ちを吐露してみた(苦笑)。その後、Advanced W-ZERO3[es]の後継となるWILLCOM 03も発表、そして発売されたが、何か求めるものと違う感が強く、やっぱりWILLCOM D4だろうか…と考えていた。しかし、やっぱりいかないだろうという結論に落ち着きそうである。
なぜ、Advanced W-ZERO3[es]がダメなのかといえば、Windows MobileをOSとしているからである。初期のWindows CEマシンからの使用歴をそれなりに持つ私だが、帯に短し襷に長しであり、Windowsと同じように見えていながら(UIを似せているので当然だが)、Windowsと同じことができないというのはストレス以外の何ものでもない。所詮は別OSなのだから、とはわかってはいても、伊達に似ているがためにあらぬ期待を持ってしまうわけだ(苦笑)。
(余談だが、Windows Mobile、というかWindows CE、いや正式にはWindows Embedded CE 6.0というべきか。いわゆるCE 6.0からOSアーキテクチャが変わり、よりWindowsに近くなった=メモリ上の制限が少なくなったが、それでもWindowsとは別物である。)
そして、携帯電話と比べて圧倒的なレスポンスの低さ。CE 6.0が提供するユーザインタフェースを利用せず、独自のインタフェースを駆使して少しでもパフォーマンスの改善努力の跡が見られはするが、いくら割り込みを行ったところでベースがCE 6.0である以上、焼け石に水としかなっていない。
ここで思い起こすのは、Palm(というPDA)が流行っていた頃のPalm OSとWindows CEの比較である。PDAとして使い勝手のよかったのは、シングルタスクOSであるPalm OSを搭載するPalmだった。機能的にはWindows CEを搭載するJordanaやiPAQ等といったPDAの方が圧倒的に優れていたが、使い勝手としてはPalmに軍配が上がった。なぜなら、すぐに使えてすぐにしまうことができる、動作がきびきびしている等々、PDAとして求められる行動規範というべきものが備わっていたからである。
一方のWindows CEを搭載するPDAは、本当に必要かどうか微妙なマルチタスク環境をはじめとする「重い」機能が足かせとなり、Palmと同等のパフォーマンスを達成するには強力なハードウェアリソースを必要とした。結果、重量が重くなったり、あるいはバッテリ持続時間が短くなったり、あるいはハングアップする可能性が高まってしまう(一見、無関係に思うかもしれないが、強力なハードウェアリソースを使うものはそれを維持するだけの機構も必要となり、複雑化する)。つまり、使い勝手が悪くなるということである。
昔話ついでに、同様な例としては、Windows NT 3.1とWindows 3.1(あるいはWindows 95)との関係や、OS/2とDOSとの関係、そしてLisaとMacintoshとの関係もあげることができるだろう。要は、その時代のハードウェアに合ったソフトウェアで「正しく素直に」実現されているかが重要なのである。
と、このあたりで本論に戻るが、Advanced W-ZERO3[es]がダメなのは、スマートフォンというカテゴリに固執し、何もかも…というと言い過ぎなので、多くのものが中途半端な形で実現されていることに尽きる。携帯電話(PHSだが、ここでは形状のことをいう)としての機能は今一つ。メーラは、スマートフォン搭載のアプリケーションソフトウェアと呼ぶにはあまりに陳腐なできであり、レスポンスは激悪。肝心の通信機能、特にPHSの回線接続及び遮断は時間がかかりすぎる。回線速度も通話やメール送受信ならともかく、スマートフォンとしてのフルブラウザ的な利用においては、コンテンツ環境の変化で遅すぎる(重すぎる)。さらに、ExcelやWordもMobileと付くサブセットであり、かつWindows Mobile自体が大容量メモリを扱うのを得意としていないので、Windowsと同じように利用ができない(メモ程度ならいいが、ちょっと凝ったことをするとすぐに制限にぶつかる)。
以上のことは、スマートフォンとして必要だとされる機能を載せてはみたけれど、詰め込むことまでが精一杯で、それらの使い勝手、機能間の連携など、利用を想定するシーンでの作り込みが、まるでなされていないからではないかと思える。機能羅列型、スペック勝負というのがファーストインプレッション(はったり)で重要なのはよくわかるが、並べ立てられているものが使えない(使いにくい)では本末転倒であり、これに懲りたユーザは二度と戻ってきてはくれないだろう。わかっているユーザはそうではないが(苦笑)。
さて、私がAdvanced W-ZERO3[es]に見切りをつけて、WILLCOM D4に行こうと考えたのは、「スマートフォンは歴史はそれなりにあるがまだまだ未成熟であり、何もかもが中途半端なところに嫌気がさした。どうせなら成熟したPCにPHSが載るという方がましなのでは?」という理由からである。
だが、WILLCOM D4の特徴を眺めていくと、気に入った点は強いのだが、気に入らない(だろうと思われる)点もそれ以上にあった。気に入った点は二つと数は少ないが、これだけの理由でも手に入れたくなるものである。
- Intel Centrino Atom(Atom Z520)を搭載
- わずか460g(0.46kg)のWindows搭載フルスペックPC
気に入らない点は以下のとおり。
- バッテリ持続時間がJEITA 1.0計測でわずか1.5時間程度(よって、PC的な使い方であれば1時間もつか微妙)
- Internet接続には無線LANが欠かせない(内蔵PHSが遅すぎて用をなさない)
- 通話機能はなくてもいいのでは?と思うほどに蛇足レベル
- Windows Vista SP1を搭載
- 物理メモリが1GB固定(Windows XP SP2ならば気に入らない点から消える)
以前使っていたPDA、Jordana 720とほぼ同じくらいの大きさで、フルスペックのWindows PCが手に入るというだけで、大変に魅力的なのだが、バッテリ持続時間があまりにお粗末。大容量バッテリがなければ小型軽量化した意味がない、という逆説的なというか本末転倒的な問題はお粗末だ。そして、PHSの通信速度の遅さはフルスペックPCであればこそ、余計に目立つ問題である。次世代PHSの通信速度が実行どの程度なのかは知らないが、最低でも10Mbpsはほしい(無線LANがPHS並にたいていの場所で使えればいいのだが)。通話機能はいらないので(今のままでよい)、Mobile PCとしてしっかり使えるレベルにしてほしい。せめてバッテリ持続時間は、VAIO C1程度は最低でも必要だろう。
単なる小型PCとして買ってもいいかな?と当初は思ったが、結局、大容量バッテリがあっても3時間ほどしか使えないのであれば、小型化した意味は失われたと思う。やはり、有機ELパネルを用いたディスプレイとし、HDDを廃さないと厳しいか。ということで、WILLCOM D4には行かないだろうと今のところ、結論づけられた。
(でも数日後は不明。)
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