再び、いや何度か目の微積分学習

私は理科系学部を卒業したが、学生時代に今と同じような学習態度が取れていれば、どんなに良かったかと振り返るのは後の祭。とはいえ、悔いを残さないというのは、所詮現在置かれている状況や考え方に大きく左右されるものなので、その当時ベストを尽くしていたとしても、必ずしも悔いを残さずできたと言い切れないのが難しいところ。また、時間と共に基本的なことは覚えていても、細かいところまでは覚えていないことはよくあること。関係ないが、昔はウルトラ怪獣や仮面ライダーの怪人、マジンガーZの機械獣などすべて覚えていたが、さすがに今は全部そらで言うことは不可能である。まぁ、姿形を見ればほとんどすべてを言えるので、どれだけ熱心にそして若いときに覚え込ませていたかがすべてではあるだろう。

というわけで、再び業務上、微積分の知識を呼び覚ます必要に迫られたこともあって、先月から関係する本を読みつつ、問題を解いている。言うまでもないが、数学は本を読むだけでは何の役にも立たない（むしろマイナスにしかならない）ので、問題が充実しているものが望ましいが、加えて限られた時間を有効に使うことも当たり前だが求められる。よって、良問が多く載っていることも重要になってくる。

単に基本的（高校の数Ⅲレベル）な微積分の確認なら「大学への数学」の別冊シリーズで必要十分だが、微分幾何学系に関して言えばどうしても不十分。そうなると大学レベルのものが求められるが、これまた教科書は玉石混淆で、名著である高木先生の「解析概論」が定番とはいえ、どうせやるなら最近出版されたものがいいだろうと書店で探した結果、次の2冊を先月購入して学習しているところだ。

1冊目は、斎藤毅先生の「微積分」（東京大学出版会）で数学出版事情に詳しいわけでないが、書店で見た限り、これが今年出版された中で最良の教科書だと見た。何がいいか。まぁそもそも今年（2013年）出版された中で、という条件が厳しいとも言えるのだが（苦笑）、私的には「大変コンパクトにまとめられている」ことと「現代的視点を重視した構成である」ことの2点から選択した。これも言うまでもないが、社会人で学習時間が限られていることに加え、自身が学習した時から変わった点（異なった視点）を欲したからに他ならない。社会人経験が豊富であればあるほど、純粋学問からの乖離具合はよく見えるわけで、その純粋学問の世界が今どうなっているかを知ることができれば、自ずと現在における乖離を知ることができるからだ。

2冊目は、現実に即してより必要なものという視点が強く働いた結果、今野宏先生の「微分幾何学　大学数学の世界①」（東京大学出版会）を選択した。どちらも東京大学出版会で、かつ編集担当が丹内利香氏というところが「狙って」いるように見えるかもしれないが、実際そういう要素がまったくなかったとは言い切れない。それはともかく、そもそもは微分幾何学について再学習するというのが本旨なので、名著というべき小林昭七先生の「曲線と曲面の微分幾何」（裳華房）や野水 克己先生の「現代微分幾何入門　基礎数学選書25」（裳華房）が外せないが、どちらも20～30年ほど前の著作であり、どうせなら最近のものということでどちらも外した次第。本書は、著者が述べるように「微分幾何学の基礎を体系的に解説すること、さまざまな周辺分野との関連を紹介することを目的」としており、問題形式で理論を学ぶと言うよりは、定理と証明（そして命題と定義）を中心に大枠をつかむという構成になっている。よって、問題形式はないに等しいが、証明についてはしっかりと導出されていることから、自らが証明を導き出せるよう訓練すれば大変有意義なものとなるだろう。

というわけで、微積分の再学習中であるが、案外基礎的部分はしっかりと覚えており、計算については感覚さえ取り戻せば何とかなるというところまで追いついてきた。もっと学生時代やっておけば良かったという悔いはもちろんあるが、しっかりやっておいてよかったという思いの方が強い。結局は今年の流行語にもなった「今でしょ」というように、やるべきときにやることをやっておけと実感しつつ、今回はここまで。

Comments

[投稿情報: nao]

初めまして。
微積分でしたら、京都大学学術出版会から出版されてる「微積分学講義 上」「微積分学講義 中」が良かったです。
上が微分、下が積分です。時間が無い中での復習には向いてないかもしれませんが、わかりやすい説明と、実例と結びつけた例が良かったです。お時間があれば書店でちら見してみてください。

[投稿情報: XWIN II]

貴重な情報に感謝申し上げます。
さて、京都大学学術出版会といえば、東洋史関係の書籍でお世話になっていますが、いかんせん東京地方では真に大手の書店にしか置かれていないのが難点です。東京地方ではやはり東京大学のパワーが圧倒的で、チェーン店レベルの書店でも見つけることができるのです。
週末には、神田方面への出張がひかえているので、そのついでにでも確認したいと思います。
どうもありがとうございました。