経済のグローバル化をはじめ、インターネットで世界的につながりを広げた今日、グローバルヒストリーに関しては様々な知見が現れているところだが、絶対に外すことができないのは、ウォーラーステイン先生の「近代世界システム(THE MODERN WORLD-SYSTEM)」であろう。既に3巻までは邦訳版が出て久しいが、今般、全4巻が版を揃えて発売されたので、すべて購入した。
「近代世界システム」(原題:THE MODERN WORLD-SYSTEM。著者:Immanuel Wallerstein。訳者:川北稔。発行所:名古屋大学出版会。全4巻)は、全4巻の構想で進められていたが、4巻目で著者が明らかにしたように結局4巻での完結とはならず、著者の年齢(1930年生まれ)を考えると果たして完結可能なのだろうかと心配してしまうが、それはともかく本書には長い時間がかけられている。
I巻は1974年に登場。実に約40年前である。そして、最初の邦訳は1981年に岩波書店から、岩波現代選書シリーズ(2分冊)として刊行された。私が最初に本書にふれたのも、このシリーズであった。II巻は、6年おいて1980年に登場し、邦訳は1993年に同じ訳者であったが、出版社が岩波書店から名古屋大学出版会に変わってリリース。III巻は、II巻から8年をおいて1988年に登場し、邦訳は1997年。そして、ここからが長くかかることになる。IV巻は、何とIII巻から13年を隔てた2011年に登場。しかも、全4巻の予定がままならなかったこともIV巻中に告白されているのだ(苦笑)。今回、4巻までをIV巻に合わせて、I~III巻も同じ装丁に変更したものが本書全4巻というわけである。よって、IV巻の邦訳は今回(2013年)が初めてとなる。
では、やや長くなるが、本書全4巻の目次と小見出しを以下に掲げて概要を示そう。なお、小見出しは訳者の川北稔先生の付したものである。
近代世界システムⅠ 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立
THE MODERN WORLD-SYSTEM I
Capitalist Agriculture and the Origins of the European World-Economy in the Sixteenth Century
二〇一一年版への序
序章 社会変動の研究のために
- 構造とは何か
- アフリカ研究から世界システム論へ
- 発展段階論からの脱却
- 分析の手法
- 世界システム論的分析の意義
第1章 近代への序曲
- 「世界経済」と「世界帝国」
- 封建制とは何だったのか
- 封建制下のヨーロッパの危機
- 農民反乱と人口減少
- 国家権力の強化
- 国家とは何か —— 国境線が国民意識を生む
- 自然現象で説明できるか
- 社会構造の転換
- 資本主義的「世界経済」の誕生 —— 地理的拡大
- 進出の動機 —— なぜ貴金属なのか
- 食糧と燃料 —— 基礎商品を求めて
- 貨幣素材としての地金の必要性
- 職業としての探検・航海・植民
- なぜポルトガルが先陣を切ったのか
- 強力だったポルトガルの国家機構
- 引きこもる中国と進出するヨーロッパ
- 相違していた内的動機
- ウェーバーの説明 —— アジアの「秩禄」制
- ヨーロッパ「世界経済」と中華帝国
- 帝国構造が負担になった中国
第2章 新たなヨーロッパ分業体制の確立 —— 一四五〇年頃から一六四〇年頃まで
- 近代世界システムの成立時期とその位置
- 物価変動についてのハミルトン学説
- ハミルトン批判
- 資本主義的「世界経済」にとっての地金
- 賃金と物価の格差
- 実質賃金低下の要因
- 実質賃金の低下と「世界経済」の地域構造
- 対外進出の重要性
- 「中核」「半周辺」「周辺」と労働管理の形態
- 近代奴隷制
- 換金作物栽培のための強制労働
- 再版農奴制もエンコミエンダも資本主義である
- 東欧と西欧の差異の起源
- 2つの「周辺」の出現
- 半周辺の経済活動
- 分益小作制
- 中核となった西欧、周辺となった東欧
- イギリスとフランスの差異
- 都市と都市貧民
- 商人の位置づけ
- 「国際債務奴隷制」
- 商人も地主も —— 近代世界システムの資本家たち
- 従属派対封建派
- 一六世紀とは何だったのか
第3章 絶対王政と国家機構の強化
- 国家の役割
- 国家機構はいかにして強化されたか
- 国家財政の強化
- 傭兵隊の整備
- 匪賊の横行
- 政府の合法性
- 絶対王政とナショナリズム
- 商業におけるナショナリズム
- 宗教と経済
- ポーランドはなぜカトリック化したのか
- 国家と資本家の関係
- 地主・貴族・ブルジョワジーは区別できない
- 近代世界システムの経済と政治
第4章 セビーリャからアムステルダムへ —— 帝国の挫折
- 一五世紀危機から立ち上がるスペイン
- スペイン帝国の形成と破綻
- 世界帝国をめざすフランスとスペイン —— フッガー家のゆくえ
- アントウェルペンの台頭
- 高価につきすぎた「帝国」—— スペインの場合
- フランス帝国の挫折
- 世界システムの転換点
- スペインの没落
- スペイン衰退の要因
- 新しいシステムの誕生
- セビーリャからアムステルダムへ
- ネーデルランド革命
- 革命の進行と宗教
- ネーデルランド革命の本質
- オランダの台頭
- ヴェネツィアの衰退
第5章 強力な中核諸国家 —— 階級形成と国際商業
- ヨーロッパにおける工業の集中
- 毛織物輸出国となったイギリス
- イギリス国家の強化
- ジェントリ論争
- 貴族は衰退したのか
- ジェントリは勃興したのか
- ジェントリの歴史的役割
- 新たな階級カテゴリの成立 ——「ジェントリ」
- ヨーマン
- 農民層の分解
- 階級形成の問題
- 「ピューリタン革命」とは何だったのか
- 「17世紀危機」へのイギリスの対応
- フランスの場合
- 陸上輸送から海上交易へ
- フランスにおける中央対地方
- 「長期の一六世紀」の終焉 —— 全般的危機
- 比較的よかった北西ヨーロッパ
- テューダー朝の政策
- 危機に立つイギリス
- イギリスの対応 —— 対外進出
- イギリス革命へ
- 妥協しなかったフランス貴族
- ブルジョワ化しにくかったフランス貴族
- ゴールドマン対ムーニエ
- フランスにおける一七世紀危機
- フランスの民衆反乱
- 宗教対立と地域対立
- 英・仏の共通性
第6章 「ヨーロッパ世界経済」 —— その周辺と外部世界
- 「ヨーロッパ世界経済」= 近代世界システムの範囲
- ロシアは外部、ポーランドは内部
- ハンガリー、ボヘミア、デンマークなどの位置
- 国家の役割 —— 周辺の場合
- プロイセンとスウェーデン
- 自らの「世界経済」形成をめざしたロシア
- ロシアの対外進出
- ロシアにおける商人と都市
- オスマン帝国も自立した世界
- ポルトガルのアジア進出
- アジアはヨーロッパ「世界経済」の外部
- アジア経済を変えられなかったポルトガル
- 胡椒貿易の意味
- 内なる南北アメリカと外なるアジア
- 世界システムの構造転換
第7章 理論的総括
- リアルなシステムとしての「世界システム」
- 近代世界システムは資本主義の「世界経済」
- 格差を拡大する「世界経済」
- 雑多な出自をもつブルジョワジーの形成
- 宗教改革と反宗教改革の時代
- 中核における国家機構の強化
- 近代世界システムの生誕
訳者あとがき
近代世界システムⅡ 重商主義と 「ヨーロッパ世界経済」 の凝集 1600-1750
THE MODERN WORLD-SYSTEM II
Mercantilism and the Consolidation of the European World-Economy, 1600-1750
二〇一一年版への序
序章 「一七世紀の危機」は実在したか?
- 一七世紀の意味
- 歴史の断絶点は一六世紀か産業革命か
- 世界システム論のパースペクティヴ
第1章 収縮(B)局面
- 「収縮」の時代
- 通貨量・貿易・人口
- 「封建制の危機」と一七世紀の違い —— システムの強化
- 空間的な格差の確定
- 時期区分の問題
- 三十年戦争は衰退の原因か
- 一四世紀と一七世紀の対比
- システムの凝集
- 「封建制の危機」の意味
- 「危機」からの脱出 —— 資本主義的世界システムの生成
- 伝統的支配層の配置転換としての絶対王政
第2章 「世界経済」におけるオランダのヘゲモニー
- 重商主義
- 「ヘゲモニー国家」の定義
- オランダのヘゲモニー
- 工業国としてのオランダ
- 海運業におけるオランダの優位
- 東方貿易
- 大西洋貿易
- 河川航行
- コミッション制度の成立
- 金融上の優越 —— アムステルダム金融市場
- 「強力な」オランダ国家
- ヘゲモニー国家の文化状況
- アルミニウス派論争
- ヘゲモニーの衰退へ
第3章 中核における抗争 —— 第一の局面 1651年から1689年まで
- イギリスの挑戦
- 英・仏抗争へ
- 農業生産の対比
- 土地所有の構成
- 二つの農業経営者階層
- 工業の保護と競争
- コルベール主義の意味
- イギリスの海運・商業構造
- 輸入構造
- イギリスの生命線 —— 造船資財と鉄
- 英・仏の大西洋貿易の違い
- フランスの国内市場とイギリスの北米市場
- 為替決済をめぐる論争
- 地金の輸出先 —— システムの内と外
- 商品としての地金
- フランスの銀貨とイギリスの金貨
- 「強い」国家とは何か
- 軍事力の問題
- コルベール主義の位置
- 重なりあう貴族とブルジョワ —— 「ブルジョワ革命」 とは
- イギリス革命の歴史的意味
- フランスの状況
- 支配層内部の妥協と民衆の抑圧
第4章 低成長期における周辺諸地域
- 「世界経済」の下降局面
- 周辺の対応策二つ
- 東欧からの輸出の減少
- 「再版農奴制」の成長
- 賦役強化の背景
- 「ジェントリの共和国」の希求 —— 東欧の貴族と資本家
- 南ヨーロッパの場合
- アシエンダの成長 —— スペイン領アメリカ
- 銀輸出の減少
- クリオーリョの困窮
- 強制労働から債務労働へ
- アシエンダの歴史的意味
- 中核諸国のカリブ海への進出
- バッカニアの盛衰
- 密貿易から砂糖へ
- チェサピークの煙草とブラジルの金
- アメリカにおける階級形成 —— 商人とプランター
- 委託代理商制度
- 年季契約奉公人から黒人奴隷へ
第5章 岐路に立つ半周辺
- 半周辺とは
- スペインの 「没落」
- ポルトガルの併合と再独立
- エリセイラ改革の崩壊 —— 重商主義の失敗
- スペインの中央集権化の試み
- メスエン条約のもたらしたもの=半周辺化
- 前貸問屋制すなわち「プロト工業」の展開
- 衰退か現状維持か —— 「ヨーロッパの屋台骨」
- 資本の域外逃避と土地への転向
- 上昇した国、スウェーデン
- 銅生産を基礎とするスウェーデンの勃興
- 軍制改革
- 鉄工業とその国際連鎖
- 経済帝国主義
- 国家機構の強化 —— 「譲渡」政策から「大削減」へ
- 半周辺への上昇
- 周辺にとどまったデンマークの絶対王政
- 対スウェーデン戦争と列強の介入
- プロイセンの半周辺への上昇
- 「大譲歩」= 軍事力の創出
- 官僚制と国家機構の強化
- 半周辺国家オーストリアの重商主義
- オーストリアとプロイセンの岐路
- 半周辺としての英領北アメリカ北・中部植民地
- 造船資材供給地か造船業の展開か
第6章 中核地域における抗争 —— 第二の局面 一六八九年から一七六三年まで
- 英仏抗争期 —— 一六八九~一七六三年
- イギリスにおける海軍派と陸軍派
- 三国対立から二国対立へ
- イギリス・スコットランド合同の意味
- パリ条約に至る英仏抗争
- 輸出奨励金によるイギリス農業の繁栄
- フランスとの対比 —— 農業と農業以外の部門
- 農業のイギリス・工業のフランス
- 砂糖と奴隷
- 東方貿易 —— 「世界経済」の外縁部
- 金融面での英仏競争 —— フランスの徴税請負制度
- イギリスの財政革命
- ジョン・ロー体制と南海泡沫事件
- 地主の時代 —— オランダ資金によるイギリスの優位
- 強いイギリス国家と弱いフランス国家
訳者あとがき
近代世界システムⅢ 「資本主義的世界経済」 の再拡大 1730s-1840s
THE MODERN WORLD-SYSTEM III
The Second Era of Great Expansion of the Capitalist World Economy, 1730s-1840s
二〇一一年版への序
第1章 工業とブルジョワ
- 産業革命とは何か
- 産業革命の前提 —— 需要
- 産業革命の前提としての人口革命
- 人口はなぜ増加したか
- 農業の発達
- 農業発展の原因
- 囲い込みの意味
- 農業革命は産業革命の前提か
- 産業革命の前提としての国家の役割
- 「重税国家」イギリス
- 技術革新
- なぜ毛織物工業でなかったのか
- 鉄工業の展開
- 産業革命はイギリスに固有か
- 連続説
- 産業革命とフランス革命
- フランス革命の社会史的解釈
- フランス革命はブルジョワ革命か
- 大西洋革命論
- ブルジョワとしての「領主」
- 貴族反動とは何か
- 革命は必然だったのか
- ブルジョワ革命論と自由主義革命論
- 農民の役割
- 政治的幻想としての革命
- なぜ反封建制の言語を用いたか
- イデオロギー革命
- 反システム革命としてのフランス革命
第2章 中核部における抗争の第三局面 —— 一七六三年から一八一五年まで
- アンシャン・レジームの危機
- 危機の原因
- 人口と穀物価格の変動
- 「領主反動」と「囲い込み」の共通性
- 領主反動
- 囲い込み
- 貿易の拡大
- 国内市場の展開
- 市場としての 「世界経済」
- 英仏格差の起源
- ランド・クリアランス
- 穀物取引の自由化
- 重農主義はなぜ成功しなかったのか
- フランスの工業は遅れていたか
- 市場条件の違い
- 国家機構による市場の拡大
- 国民的災厄としてのフランス革命
- フランスの国家財政とアメリカの独立
- イギリスの国家財政
- イーデン条約へ
- 「通商条約の嵐」とその意義
- ヘゲモニー争いの敗北がもたらしたフランス革命
- フランス革命の帰結
- みせかけの農業改革
- 工業促進者としての国家
- 階級概念は有効か
- 階級史観の落し穴
- 農民革命か
- ヴァンデの乱とシュワンリの乱
- サン・キュロットの立場
- ジャコバン派とは何か
- トックヴィルの理解
- フランス革命とは何であったのか
- 英仏のヘゲモニー争い
- 工業におけるイギリスの優位
- ナポレオン戦争と大陸封鎖
- フランス革命の成果
- フランス革命のイギリスへのインパクト
- ヘゲモニー国家イギリスの成立
- イギリスのヘゲモニーと労働者
- 世界システムの再編
第3章 広大な新地域の 「世界経済」 への組み込み —— 一七五〇年から一八五〇年まで
- 四地域の世界システムへの「組み込み」
- 「組み込み」のメカニズム
- 貿易の変質
- ダホメーの実例 —— 国家の強さ
- 国家機構の強弱
- 貿易不均衡の意味
- 「組み込み」のプロセス
- インドの「組み込み」
- オスマン帝国
- ロシア
- 西アフリカ
- ウィリアムズ・テーゼ
- 西アフリカ貿易の三局面
- 工業の衰退 —— インドの場合
- オスマン帝国の工業衰退
- ロシアの工業衰退
- 西アフリカの工業衰退
- プランテーションと大商人 —— 大規模な意志決定体
- オスマン帝国のチフトリキ
- ロシアの場合
- 西アフリカの場合
- 労働の強制 —— ザミンダーリとライオットワーリ
- 強制の手段としての前貸
- ロシアのオブローク
- ロシア鉄工業の展開
- 西アフリカにおける奴隷制
- オスマン帝国の強制労働
- 「組み込み」と外延部
- アジアの「三角貿易」
- サハラ商業の展開
- インターステイト・システムへの「組み込み」
- 「組み込み」と国家機構の強弱
- オスマン帝国の国家機構
- 地方権力の台頭
- カピテュレイションとオスマン外交
- 対英通商協定の意味
- ムガール帝国の分解
- ヨーロッパ諸国の介入
- 私商人の位置
- 領土支配への道
- 直接支配の進行
- ロシアの西洋化
- エカチェリーナ改革
- インターステイト・システムのなかのロシア
- 西アフリカの特異性
- 「組み込み」の時代
第4章 南北アメリカにおける定住植民地の解放 —— 一七六三年から一八三三年まで
- 出発点としての一七六三年
- ガドループかカナダか
- アメリカ独立革命の長期要因
- 航海法体制の評価
- 一三植民地を取り巻くコンジョンクテュール
- イギリスにとっての一七六三年
- 先住民と白人定住者
- イデオロギーの問題
- ケベック法のもたらしたもの
- 植民地側の対応
- 政治状況の変化と社会各層のスタンス
- ノヴァ・スコシアの帰趨
- カリブ海域の状況
- スペイン人の当惑
- ポルトガルが抱えた問題
- カルロス三世の改革
- ラ・プラタ副王領創設の意味
- アメリカ独立戦争へのフランスとスペインの参戦
- テュパク・アマルの反乱
- 世界システムのなかのテュパク・アマル
- 立ち上がるクリオージョ
- コムネーロスの乱
- クリオージョの独立志向
- クリオージョの人種的立場
- 南北アメリカにおける定住者の独立
- イギリスとアメリカにとっての一七八三年
- 独立の経済的結果
- フロンティアの問題
- 北西部領地条令
- イギリスとスペインの姿勢
- 個人の自由と黒人の立場
- 独立革命の反対派
- 平等主義はなぜ出現しなかったのか
- スペイン領にとっての1783年
- サン・ドマングの混乱
- 黒人革命
- 成功しなかったアイルランド革命
- アメリカの独立・フランス革命とアイルランド
- ナポレオン戦争と合衆国
- ナポレオンの衝撃とクリオージョの独立運動
- 新しい三つの要素
- 独立へ
- ブラジルの独立
- 白人定住者国家の独立と世界システム
訳者あとがき
近代世界システムⅣ 中道自由主義の勝利 1789-1914
THE MODERN WORLD-SYSTEM IV
Centrist Liberalism Triumphant, 1789-1914
序章 『近代世界システム』全巻の構成
- 『近代世界システム』における本巻の位置
- 第Ⅰ巻の構成
- 第Ⅱ巻と「ヘゲモニー国家」の概念
- 第Ⅲ巻 —— イギリスのヘゲモニーへ
- 第Ⅳ巻
第1章 イデオロギーとしての中道自由主義
- フランス革命と保守主義
- 自由主義とは何か
- ギゾーとベンタム
- 社会主義
- 「変化の常態化」への三つの対応
- 歴史の主役は誰か
- 三つのイデオロギーと国家
- 自由主義と社会主義の同盟
- 保守主義の自由主義への接近
- 唯一のイデオロギーとしての自由主義
第2章 自由主義国家の建設 —— 一八一五年から一八三〇年まで
- 英仏抗争の終結 —— 自由主義国家モデルの共有
- 主権在民というスローガン
- 秩序崩壊の危機感を共有した英仏
- 誰が国民なのか —— 労働者の排除
- フランスでも進んだ工業化
- イギリス —— 工業収益率の低下を補う海外投資益
- 大差のなかった英仏の経済実績
- 「ヨーロッパ協調体制」
- イギリスのヘゲモニー確立に必要だったフランスのリハビリ
- 労働運動の抑圧
- フランスにおける自由主義の確立
- ジオカルチャーとしての自由主義
- 海外での社会変革 —— 自由主義者の立場
- ギリシアの独立運動
- ヨーロッパの起源はギリシアかエジプトか
- 自由主義による労働運動の抑圧
- 七月王政 —— 自由主義国家の勝利
- ベルギーのフランスへの併合
- ポーランド反乱の意味
- イギリスにおけるカトリックの解放
- 一八三〇年になぜイギリスに革命がなかったのか
- 英仏などにおける中道自由主義国家の成立
第3章 自由主義国家と階級闘争 —— 一八三〇年から一八七五年まで
- 中道自由主義国家の確立
- 英仏両国の労働運動
- 英仏友好協商体制の成立
- フランス国家の脆弱性
- ボナパルティスム —— フランスとイタリア
- イギリスの対外干渉
- 穀物法の廃止
- レッセ・フェールという神話
- フランスの成熟
- イギリスの銀行論争とフランスの金融事情
- 改革をすすめるイギリス国家
- フランスの場合
- インターステイト・システムの作用
- 自由貿易帝国の形成
- 自由貿易の功罪
- フランスの自由主義と帝国 —— クリミア戦争の意味
- 英仏による世界支配の動揺 —— アメリカとドイツの台頭
- 労働者の市民への組み込み
- 「危険な階級」の台頭
- 自由主義の完成形としての保守主義
第4章 自由主義国家の市民
- フランス革命と市民権の概念
- 包摂と排除 —— 「市民」とは?
- 受動的市民と能動的市民
- 女性の排除
- 黒人(解放奴隷)の排除
- 労働者の排除
- 社会的統合と二項対立概念の存続
- 一八四八年の世界革命
- 排除を切り崩す —— 社会革命とナショナリズム
- 労働・社会運動
- 労働運動の起点
- ブルジョワとプロレタリア
- 職人から労働者へ
- 急進主義(社会主義)の台頭
- イギリスの新組合主義
- 労働運動と社会主義政党
- フランスの場合 —— すべての道は改良主義へ
- 社会主義者の国政関与
- アメリカ —— 民族・国籍による労働者の排除
- 社会主義にとっての植民地問題
- 女性・フェミニスト運動
- プロレタリアの反フェミニズム
- 「ファミリ・ウェイジ」を拒否したフェミニストたち
- 社会主義政党とフェミニストたち —— ドイツとフランスの場合
- イタリアその他の場合
- 反奴隷制運動と女性 —— イギリスの場合
- サン=シモン主義とフーリエ主義
- 一八四八年が生んだ成果
- 公共圏のジェンダー
- 政治的フェミニスト —— 女性参政権運動
- 社会的フェミニストと優生学の対立
- 平和運動と女性
- 民族・人種運動
- 女性の権利と黒人の権利
- 保守化するフェミニズム
- 人種主義の強化
- 有機体としての国民 —— 他者排除の装置
- 排除を正当化する科学
第5章 社会科学としての自由主義
- 激変する世界をどう認識するか —— 社会科学の成立
- 「二つの文化」の発明
- 近代世界システムの成立と知
- 社会科学の誕生
- 社会運動としての社会科学
- 英米における社会科学の運動
- 講壇社会主義 —— ドイツの場合
- 社会科学における専門化と価値中立性
- 「価値からの自由」
- 社会生物学から優生学へ
- 科学的歴史学の創出
- 歴史学の科学化 ——史料批判
- 中道自由主義国家にとっての歴史学の意味
- 法則定立的な学の創出
- 三位一体の社会科学
- 政治経済学から経済学へ
- デュルケームとフランス社会学
- A・スモールとアメリカの社会学
- ブートミとシアンス・ポ
- コロンビア大学政治学部
- ウェブ夫妻とLSE
- 西洋以外の世界
- 「残りの世界」 —— 人類学と東洋学の対象
- 中道自由主義に奉仕する学
- ヨーロッパ文化の起源
- エジプトかギリシアか
- ドイツのインド学・中国学
- 人類複数起源説 —— 人類学と人種差別
第6章 再論
訳者解説
というわけで、完結していないとは言いつつも、本書はそれぞれが独立して話としては完結しており、小見出しを見て興味を持たれた方には、期待を裏切ることはないと思う。といったところで、今回はここまで。
本日安倍総理がボスポラス海峡の海底トンネル開通式に出席のためイスタンブールに向けて出発されたそうですが、ベルリン、ベオグラードとバグダッドを結ぶいわゆる3B鉄道のビスマルクの夢が達成されたことになります。さらにバスラからホルムズ海峡を通ればスエズ運河に次ぐ東西ルートの架け橋と成るでしょう。またシルクロードを経由して北京からマルコポーロ橋の横を渡って巴里東停車場まで一本のレールで繋がったことになります。東西交易がメーンテーマである本書の巻末に加えられるべき出来事ではないかと敢えて投稿した次第です。余談ですが舞姫と別れてベルリンを発った森鴎外もブリンディッシではなくバスラ経由で帰国の途についたかも知れません。全て頭文字がBの駄洒落お許し下さい。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2013/10/28 09:05
ボスポラス海峡海底トンネルの追記
一説によればドイツの人口が半分に成ったと言われる30年戦争という宗教対立も、ウエストファリアの和約で収束しましたが、この東西の架け橋のルートは第一次中東戦争以来65年間、ニューヨークの中心部迄破壊されると言う宗教対立に発展し、かってはバグダッドで発行された旅行者信用状が北欧でも換金出来た程繁栄したイラクとイランと米海軍が睨み合うホルムズ海峡を通過するこのルートに平和が訪れるのはまだ時間が掛かるようで残念です。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2013/10/29 09:57