■ VAIO Zシリーズと比較して プロローグ
さて、このシリーズも数えるところ11回目。私の狙いとしては、VAIO Duo 13 | red editionだけに13回くらいを目標に始めてみたが、どうやら狙いどおりに行きそうな感じである。というわけで、今回はSONYのVAIO開発部隊がいう「VAIO Zの後継」に本機が相応しいのか、あるいはそれは言い過ぎなのかを歴代VAIO Z(及びtype Z)を使ってきた一人として語っていきたいと思う。
SONYが、VAIO Duo 13をVAIO Zの事実上の後継に位置づけているという話は、SONYのWebサイトを見渡してみてもそれらしいことは書いていない。それはインプレスさんのPC Watch記事「第4章へと進化したソニー「VAIO」の狙い ~VAIO|red editionと新型番に込めた想いとは? 」という2013年6月26日付けの記事に見ることができる。この記事では、SONY業務執行役員SVP VAIO&Mobile事業本部長という肩書きを持つ赤羽良介氏へのインタビュー記事だが、この記事後半に次のような記述がある。
赤羽事業本部長は次のようにも語る。「Zシリーズの後継機を、あえてあげるとすれば、それはVAIO Duo 13になる」。VAIO Duo 13には数々の最新機能が搭載されている。赤羽事業部長は、手にVAIO Duo 13を持ちながら、「タブレットモードとして利用した場合と、キーボードモードで利用した場合には、CPUのスペックが変わる仕組みとしている。キーボードモードでは高いパフォーマンスが発揮でき、一方で、タブレットモードでは長時間利用を想定した仕様にしている。バッテリ駆動時間は18時間を実現し、スリープからの復帰も0.3秒とスマートフォン並の環境を実現しているのは、Haswell搭載機ではVAIO Duo 13だけ。形状は異なるが、Zシリーズが維持してきたフラッグシップの立場は、VAIO Duo 13が受け継いでいくことになる」と語る。
そう、赤羽VAIO&Mobile事業本部長は、VAIOのフラッグシップであるZシリーズをVAIO Duo 13が受け継いでいるというのである。そしてもう一つ。2013年7月13日付けのASCII.jpの記事「「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い」の2ページ目後半に
このサイズの中で最高のパフォーマンスを準備することも必要と考えました。もちろん、手書きではそこまでのパフォーマンスは不要です。しかし、CADなどの用途を考えると、やはりパワーは必要です。CADの世界では、ペンを使ったオペレーションが注目されています。それだけでなく、写真加工や動画編集なども重要です。ですからこのサイズに「Z」相当のパフォーマンスを搭載しようと考えました。VAIO Duo 13は、Zを引き継ぎ、クリエイティビティ向けも含めた、VAIOのフラッグシップです。
という発言があり、これはVAIO&Mobile事業本部PC事業部商品1部商品1課統括課長の笠井貴光氏が述べているものだ。つまり、VAIO&Mobile事業本部においては、VAIO Duo 13は「Zシリーズが維持してきたフラッグシップの立場」を継承し、それは「Zを引き継ぎ、クリエイティビティ向けも含めた、VAIOのフラッグシップ」としてのものなのである。
このように開発部隊がいう以上、本機はVAIO Zの後継に位置づけられるのは間違いない。ただ、それはユーザにとってそうであるかは何とも言えない。おそらく、それは求めるものによって異なり、よって人それぞれであるだろう。しかし、私にとってはVAIO Z21の後継機として本機をセレクトした時点で、既にZの後継機という位置づけであったのだ。VAIO Pro 13に行くのではなく、VAIO Duo 13に行ったという時点で──。
VAIO Zシリーズと比較して モノローグ
スペックなどは時代の進歩と共に変わっているので、今更VAIO type Zなどとスペック比較などを行っても仕方が無い。端的に言えば、自分が使用してみてどうか、ということである。私がZシリーズに求めたものは何かと言えば、デスクトップPCに比肩するだけのMobile PCの性能を求めていた。無論、グラフィックスパフォーマンスにおいては超発熱モンスターGPUを搭載するものとは勝負にならないので、あくまでそれなりに、ではあるが。とはいえ、まったくスペック無関係というわけでもなく、今では当たり前のものもあるが、最低限次のようなものは求めていた。
- フルHD(1920x1080)のディスプレイ
- DualコアあるいはQuadコアのマイクロプロセッサ
- 外付けGPU搭載
- 2kgを下回る重量
- デザインがいい
これらを満たすものがZシリーズであったのは言うまでもない。だが、刻と共にそれは一般化し、加えてCPU及びGPUメーカの思惑などもあって、VAIOである必要性、いやZである必要性が失われていく。特に迷走を感じたのはVAIO Z21で、外付けGPUをまさにその名のごとく本体から外してPMDに移したことがMobileどころか、ノートPC(古くはラップトップPC)のメリットすら喪失してしまった。パフォーマンス云々以上に使い勝手が悪くなったのである。PMDなしにすればそのようなことはなくなるが、Sandy BridgeないしはIvy Bridge内蔵GPUの一択となって、グラフィックパフォーマンスは目を覆うものとなった。これでは他社製のものどころか、VAIOシリーズの他機種でもZよりましなものが見当たるようになり、ますますZシリーズの立位置がぐらついているようにしか見えなくなったのだ。
そもそもMobileにおいては、限られた資源を有効に使っていくのはもちろん、その中で可能な限り使い勝手を上げていくことが求められる。かつてのアメ車のような、マイクロプロセッサの世界でいえばNetBurstマイクロアーキテクチャを実装したPentium 4シリーズのようなものは、Mobileの世界にはまったく合わず、だからこそBanias(Pentium M)が登場したのである(間接的にはTransmeta社のCrusoeのおかげであるが)。VAIO Zシリーズにしても、デスクトップ並みのパフォーマンスを目指したところで、それはMobileの世界の中で、のことである。そこに近づけるためにどれだけコストをかけることができるか、と言い換えてもいいだろう。こう考えれば、どっちつかずのVAIO Z21は使い勝手を犠牲にしてしまったことが失敗だったと思うわけだ。
本機は、古の言い方ではULV(Ultra Low Voltage)プロセッサを搭載し、それをcTDP機能を使ってLV(Low Voltage)プロセッサに擬すことによってパフォーマンスを引き上げているが、Mobileプロセッサの標準電圧(TDP 35W以上)のものと比べればまだ足りない。つまり、Mobile PCと比べてもパフォーマンスは劣っている。だが、Mobile PCの競争相手は既にデスクトップPCなどではなく、スマートフォンやタブレットであり、これらとの競争はパフォーマンスではなくレスポンスが勝負の決め手となる。起動時間、スタンバイからの復帰、アプリの起動までのシーケンス、などなど以前とはルールが変わったのだ。
そのように考えると、確かに本機はVAIOシリーズの中ではフラッグシップであるのはもちろん、他社製Mobile PCとは単純な比較の対象にすらならないこともわかる。だが、しかし。優れたハードウェアだけでは勝負にならないことはPCの時代から変わることはない。PCを規定してきたWindowsがどう変わることができるのか。本機の使い勝手は、まさにここに委ねられているのである。
といったところで、今回はここまで。次回はこちら。
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