我が国でAmazonがKindleをスタート(サーヴィス イン)させて半年ほどが経過した。私は主に、Kindle Paperwhite並びにiPadのKindleアプリの二つで利用しているが、期待以上の部分とそうでない部分のいずれもがある。物事すべてそうなのだが、諸手を挙げて受け容れるものなどない(もし、あるとすればそれは冷静な判断ができてない証左)。というわけで、今回は現時点で私の思う良かった点とそうでない点について、あれこれ語っていくことにしよう。
まず、良くない、というか期待していたよりも今一つだった点から列挙しよう。
- 固定レイアウト版において全文検索ができない。
- リフロー版でもiPad(のKindleアプリ)において全文検索ができないものがある。
- Kindle本が増えてくると管理に支障を来す。
- 購入したKindle本を端末上から削除できない場合がある(iPadのKindleアプリに顕著)。
一番の不満は、せっかくの電子書籍なのに検索に弱いことに尽きる。中でも固定レイアウト版は、できの悪いピンボケイメージ(いわゆる解像度の低いマンガ形式)で作成されており、裏にテキストデータが隠されてもいないため、単なる画面イメージ、紙をスキャナで取り込んだだけのPDFデータそのものといえる。最近のドキュメントスキャナが当たり前のように対応している、文字情報埋め込みと同等レベルのものすら提供されていないのだ。これは、Kindle側の問題というよりも電子書籍データの作り方によるのかもしれないが、固定レイアウト版では明らかにPDF(イメージデータではなくPostScriptデータで作成)の方がいい。当たり前だが、制限されているものを除けば全文検索はできるし、拡大表示したところで解像度の低い挿絵(図)でない限りはまったく問題ないからだ。書籍と同じレイアウトで見ることができるのが強みの固定レイアウト版だが、PDFより劣るという点のみでダメだし、そもそも電子書籍で全文検索できないのは大ダメだとなるだろう。
では、リフロー版では問題がないかといえば、残念ながらそうではない。というのは、同じ電子書籍(リフロー版)でありながら、Kindle Paperwhiteで全文検索ができるのに、iPad(のKindleアプリ)では全文検索ができないものがあるからである。全部を調べることはもちろんできないのだが、私の持つ和文書籍(縦書き対応のみかも)では検索アイコン(ルーペマーク)自体が無効になる(いわゆるグレーアウト)。では、まったく検索できないのかといえばそんなことはなく、英文書籍では検索アイコンが有効であり全文検索がまったく問題なくできる。むしろ、できて当たり前だという所作にしか見えないのだ。
このような差は、Kindle Paperwhiteでは見られない。リフロー版であれば、和文書籍(縦書きも含む)であろうが英文書籍であろうが、まったく問題なく検索アイコンが有効となり、全文検索が可能となる。こういった当たり前の動作が、一方ではできて一方ではできないというのは、単なる差別化なのか。普段使いしていないAndriod向けKindleアプリを試したところ、こちらもKindle Paperwhiteと同じく全文検索はできた。単に、iOS版Kindleアプリだけの問題なのである。
全文検索の問題が私の中で大きな不満なのだが、このほかにはKindleだけとは限らない定番の問題として、データが増えてきた時の管理方法についてである。伝統的に、階層対応したフォルダ(ディレクトリ)がサポートされるのがベターだが、現時点で厄介なのが、用のなくなった(あるいはしばらく必要のない)電子書籍を端末から消すことができないことである。Kindle Paperwhiteでは一時的に消すことができるが「同期」することで結局復活する(ダウンロードを促すアイコンが表示)し、iOS版Kindleアプリではクラウド上から消すことすらできない。もちろん、本当に消えてしまうと困るので、これは仕方のない仕様といえなくもないが、電子書籍が増えてくるとかなり面倒なことになる。まぁ、このあたりは追々、解決されていくことだろうし、全文検索ができない問題に比べれば大したことはない。
続いて、期待以上によかった点を列挙しよう。
- Kindle Paperwhiteの日光下での見やすさ。
- 全文検索ができる。
やっぱり最初に挙げるのは、Kindle Paperwhiteの見やすさだ。バックライトを点灯した状態での利用は、今一つであるものの、直射日光下や明るいところ(バックライト不要なところ)では大変見やすい。紙と比べてどうか、と問われれば微妙であるが、いわゆるPC等を含む電子書籍端末との比較では圧倒的だとなる。確かにカラー対応していないのは弱点の一つではあるが、そもそも5~7インチクラスの画面でA4クラスの固定レイアウト版(PDF等も含む)レベルでなければカラーの必要性は乏しいので、実際に利用する際には大きな問題とはならない。挿絵のある書籍(雑誌)が電子化されたものだと、カラー写真の見た目は雲泥の差があるが、文章中心の書籍であれば致命傷とはならないだろう。
そして、やはり拘るのは全文検索。紙の書籍ではこのような芸当はできないので、目次や索引がしっかりしている書籍であっても、そこには引っかからないものを引っかけたい場合(しおりだけではきついし)、全文検索ほど有効なものはない。同じ書籍を紙の本と電子書籍で読むにしても、全文検索で新たな発見が多数あり、これなくして電子書籍を名乗るなと強く思う。
以上、半年ほどAmazon Kindleを利用して思うことを熟々述べてみた。品揃えもまだまだ(岩波書店等がKindle対応していないのが残念)だし、ゴミが多数漂流しているのも厳しい(金額が高い順とかにすればゴミがなくなってきれいになるが…)など、多くの問題はあるが、それ以上に電子書籍ならでは、というものも強く感ずるところがあり、これからも利用していくのは間違いない。心配なのは、突然サーヴィスを停止しますとなってまったく読めなくなってしまうということだが、さて。
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