正式発表はもう少し後のようだが、秋葉原においてはIntel 第4世代Coreプロセッサ、コードネームHaswellが発売開始された。無論、対応チップセットを搭載したマザーボード(メインボード)も同時に発売され、ピンポイント的に深夜販売が行われたようだ。いつも感ずることとして、PCはもちろん、いわゆるPC自作市場も縮小が続き、PCショップの撤退も継続している中、よく頑張っているなと感心する(いい意味で)。1990年代には積極果敢に参戦(ピークは誰が何と言おうとWindows 95日本語版発売日)していたが、2000年代前半にはXeon(Prestonia)で自作は打ち止めとなり、専らMobile PCに勤しんできた(特にBanias登場とNetBurstマイクロアーキテクチャの今一つなところが大きい)。なので、かれこれ10年程、この手のイヴェントにはご無沙汰である(Windows 7の深夜販売参戦が例外と言えば例外か)。
思えば、BaniasはIntel社自身も転換点だった。Baniasから派生したYonah(初のCoreブランドを持つ真のDualコアプロセッサ)をデスクトップ向けマイクロプロセッサに切り替えることとし、コードネームMeromとして開発、Core 2としてリリースする。結果としてP6マイクロアーキテクチャから派生したBanias、これをDualコア対応したYonah、低消費電力指向を通常電力まで拡大することでパフォーマンスアップを図ったMeromに「Coreマイクロアーキテクチャ」と命名し、事実上、NetBurstマイクロアーキテクチャを駆逐した。今振り返ってというのはもちろん、当時ですら厚顔無恥的なネーミングにしか見えなかったNetBurstマイクロアーキテクチャの末路は哀れだった。最後のIA-32(x86)として、CPUIDを0xFh(十進数で15。16進数では1桁としては最後の数)と刻み、IA-64(x64ではなくItaniumブランドの方)への移行を当然としていたが、IA-64はニッチ中のニッチで辛うじて生き残っているに過ぎず、Pentium Pro(P6マイクロアーキテクチャ)以来のCPUIDである0x6h(十進数でも16進数でも6)が今回のHaswellでも引き継がれている。Pentium Proの発表が1994年(出荷は翌年)なのでもうすぐ20年にならんとし、様々な改良が加えられ、初期P6とは大きく様変わりしたものの、CPUIDの最初のナンバーが「6」のままなのは、変化の激しいこの世界において希有なものの一つであるだろう。
さてHaswellだが、多くのPC系ニュースサイトで解説されているようにIntel社が推進するUlrtabookへの最適化が最大の目標であって、待機消費電力の減少と、統合GPUの性能向上の二つがポイントとしてあげられよう。この二つは、対ARM(視点を変えれば対Apple)、対AMDという明確なライバルが存在しているのでわかりやすい強化点と言える。もっともUlrtabookそのものが魅力的になるかどうかは、また別問題であるのだが…。
私としては、Haswellの注目点はやはりマイクロアーキテクチャの強化だ。プロセス微細化によって、演算リソースに余裕が生まれていることから、演算ユニット数増加、アウトオブオーダバッファの強化、キャッシュメモリとの帯域幅拡大、物理(実質)レジスタ数の拡大などが着実に行われている。「最適化」を名目に、必要以上に演算リソースを増やしたところで性能に直結しないという意見もあるが、Mobileにおいてはたとえわずかでもプロセッサ内部で片が付くのであれば省電力性能にも直結することから、このような地道な演算性能の強化は歓迎する。AMDのような逃げを打ってほしくないし、私が思うIntel社への揺るぎない信頼の源泉は、こういう地道なマイクロアーキテクチャの強化にあるのだ。
昨年はVAIOノートに興味深いものが出なかったこと(無論、他社のものも含めて)、Windows 8が今一つであったこと、IvyBridgeも悪くはないがと躊躇しているうちに、まったくPCに手を出さないまま終わってしまった。今年もここまで5か月が経過し、どうかな…と思うものばかりで結局、一昨年のままの状態が続いている。一般的な感覚ではそんなものだろうとなるだろうが、毎年のようにPCを購入・更新していた者としてはやはり物足りないのも事実である(iPadとかは買ったけど)。HaswellとWindows 8.1が出る2013年に、これらが魅力的に映らなかったとしたら、おそらくむこう数年間のPCはこのままのような気がする。そして、最も可能性が高いのは「壊れた時の買い換え」だろうと思う。そんなことをHaswellが出た時期に考えつつ、今回はここまで。
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