これも東日本大震災騒ぎですっかり忘れ去っていたものの一つ、「参謀本部陸軍部測量局 五千分の一東京図測量原図」をようやく入手した。
過去にも「参謀本部陸軍部測量局 五千分の一東京図測量原図」の複製は日本地図センターから発行されているが、昭和時代と平成時代とでは印刷技術は桁違いに上がっているので、極端な言い方をすればまったくの別物である。特に感銘を受けたのは「紙質」で、近年これだけ高いレベルの書籍は見た(さわった)ことがないと断言できる。私的には、美術書としても十分に耐えうるものだと感じた。
さて、肝心の内容だが、このように薄い紙で現在の状況と重ね合わせることが可能であり、昨今の流行を取り入れている。あって困るものではないが、正直私には不用であった。また、上写真から気づくように、本書は紙の片面のみに印刷がされており、先にふれたとおり高いレベルの「紙質」を堪能できるように配慮されている。
オーバーレイの薄紙をめくれば、こんな感じで原図を見る。で、これも言うまでもないことだが、もともと一枚物の地図を分割する場合、どうしても境目(切れ目)があって見通しがきかないことが多いが、本書は大きなゆとりを持って重なり合う部分が設けられており、さすがよくわかっているな(いい意味でのお役所仕事)と感心する。
おまけとして「東京実測全図」(内務省地理局)が掲載されているが、これだけで36葉あり、重ね合わせ部分もさらに大きなゆとりを持たせてある(理由は地図に重なるように番号が振られているため)のはもちろん、原図と比較できるように「掲載範囲」も原図と一致させる工夫が施されている。こちらも同じ「紙質」のものを使用しているので、モノクロではあるが大変美しい。
解題には切り貼り補正があるが、これだけの内容で2万円を切る価格はありがたい。それなりの部数を期待しての金額ではあるだろうが、今後ともこういう企画をどんどんやっていただきたい。そう願いつつ、今回はここまで。
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