あるッ!
で、終わらせてしまうのはアレなので、一応私なりの理屈を書いていこう。
まず、このような話──「Mobile向け単体GPUに存在価値はあるか?」が出てくるのももっともな理由がある。それは、もちろんIntel社のSandy Bridge(コードネーム)が登場することにある。Sandy Bridgeは、プロセッサダイにGPU機能を統合しており、省スペース・省電力が求められるMobile PCにおいては、外付け単体GPUを搭載するよりも優れている、とされているからである。
しかし、Intel社の歴史を10年ほど振り返ってみれば、いわゆるGPU(グラフィックス)機能を「統合」し始めたのは今に始まったことではなく、ここ数年のスケールでもない、10年以上も前から始まっていることを理解する必要がある。無論、始めはマイクロプロセッサへの統合ではなく、チップセットのうちNorth Bridge(メモリコントローラ。GMCH)に統合されたものが最初である。それは、i810チップセット。1998年4月26日に発表され、実際の製品の出荷(搭載)は同年中旬以降となったが、Intel社にとってグラフィックスの「統合」の歴史は、既に今年で干支の一回りを経験しているほど古い(そもそもIntel社のグラフィックス機能の歴史は、Chips and Technologies社を買収したことから始まる)。
Mobile向けとしてみても、i810から派生したIntelチップセットの救世主と言えるi815のMobile版としてi815EMが最初であり、ここから数えても10年近い歴史を有する。ただ、Mobile向けとして忘れてならないのは、Timna(コードネーム)の存在だろう。Timnaは、グラフィックスやメモリコントローラを同一ダイに統合したIntel社初のx86 CPUとなるはずだったが、Direct Rambus DRAM普及失敗の煽りを受け、製品単体では大きな問題は解消されていたものの、結局はリリースされなかった(その経験はBanias開発や、長い目で見れば今回のSandy Bridgeに活かされているだろう)。
また、グラフィックス統合CPUとしては、今は亡きCyrix社が1997年にリリースしたMediaGXが真の元祖であるのだが(最近、Intel社もAMD社もこの存在を忘れたかのようなプレスリリースが目立つ)、パフォーマンスという点からリリースされた時点ですら、Windows 95を動作させるだけで厳しいものだったことを思い起こせば、これをメインストリームとして採り上げることには私的には賛同しかねる(DOSマシンとしては速かったが)。
以上、簡単にグラフィックス統合CPUの歴史を簡単に睥睨していけば、Sandy BridgeやAMD社のFusion APUは真新しいものでも何でもない、以前からあったものが何度目かの挑戦を始めたと解することができるわけである。
とはいえ、グラフィックス機能についてはその「必要性」、ローエンドへの搭載という観点からチップセットないしマイクロプロセッサへの統合というものは欠かせないものとなっている。かつてのDOSマシンの時代にはグラフィックス機能など、本質的に必要となるシーンは限定的かつ非常に限られていたが、GUIの時代(WindowsやMac OS)に入ってからはグラフィックス機能が「必須」となり、それまでのPCに対して、グラフィックス専用チップの搭載がなければお話しにならない状況となっていった。PCは常にコスト競争に晒されており、こうした専用チップの追加というのは競争力低下以外の何物でもないため、追加部品(チップ等)の実装を必要としないグラフィックス機能の追加が求められたのである。その結果がグラフィックス機能の「統合」なのであった。
──と、ここでいったん続きます(後編はこちら)。
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