またしても、かつての部下から高額合算制度(医療保険と介護保険で使用した一部自己負担額を一年間足し上げ、一定の限度額を超えた場合、給付金が支給される制度)の質問を受けた(苦笑)。いい加減独り立ちしろよと思いつつ、話を聞いてみると「確かにこれはどうするんだ?」と思うような内容で、仕様や運用の問題ではなさそうな印象を持った。とりあえず、かつての部下にはアドヴァイスとコメントメモを手渡したが、実際これがどのように運用されるのか興味津々である。
では、その問題とは何か。説明する上で、高額合算制度の計算例を以下に示そう。
一人世帯(低所得者Ⅰとする)
医療保険の自己負担額…2万円
介護保険の自己負担額…18万円
自己負担額合計額………20万円
高額合算合計支給額=20万円ー19万円(低所得者Ⅰ区分の限度額)=1万円
医療保険からの支給額=(2万円÷20万円)×1万円=1,000円
介護保険からの支給額=(18万円÷20万円)×1万円=9,000円
以上のように各々の自己負担額を合計し、限度額を引いた残りが支給合計額となるが、これを自己負担額の割合に応じて医療と介護で按分し、それぞれ別個に医療保険と介護保険から支給されるという流れとなっている。
これだけ見れば、それほど難しいようには見えないが、実際には二人世帯以上であるとか、医療保険が複数にまたがるとか(例えば75歳に到達すれば有無を言わさず、後期高齢者医療制度に移行する)、市区町村間を異動するとか、世帯内異動があったりとか、様々な事象があり、これらを按分計算した後、それぞれの保険者から支給するというのはなかなか困難なものである。しかし、問題はここからである。
ご存じの方はご存じのように、医療保険や介護保険の報酬請求は過誤や追給が珍しくない。つまり、自己負担額は一定の金額で固定化されたものではなく、毎月異動すると言っても過言ではない。そして制度上、自己負担額が異動すれば高額合算支給額を再計算せよ、という形になっているが、これが厄介なのである。
例えば、上に示した一人世帯の例に対して、過誤や追給によって医療保険の自己負担額が2万円から4万円に増え、一方で介護保険の自己負担額が18万円から16万円に減ったとしよう。すると、これを元に再計算すると、
一人世帯(低所得者Ⅰとする)
医療保険の自己負担額…4万円
介護保険の自己負担額…16万円
自己負担額合計額………20万円
高額合算合計支給額=20万円ー19万円(低所得者Ⅰ区分の限度額)=1万円
医療保険からの支給額=(4万円÷20万円)×1万円=2,000円
介護保険からの支給額=(16万円÷20万円)×1万円=8,000円
このように支給合計額は変わらないが、医療保険と介護保険との按分率が変わるので、それぞれの支給額が変わることになる。こうした場合、医療保険の増額分1,000円はどういう扱いとなり、介護保険の減額分1,000円はどういう扱いとなるのだろうか。
これは、支給合計額が変わらなかった場合だが、支給合計額が増額あるいは減額になった場合、両方が増額、減額となる場合もあるが、内訳のどちらか一方が増額、もう一方が減額となる場合もある。こうした場合、どちらかが支給額を増額して申請者に支給し、もう一方が減額として回収するようなことをするのだろうか。あるいは放置するのだろうか。
考えれば考えるほど、何も考えていないような制度である。要は、出しっぱなしにしておこうという安易な解決策しか見えてこないが、こんな苦労をシステム開発者が持たねばならないとは呆れてしまう。私はその立場にないが、関係する人がこの問題を糺してほしいと願わずにはいられない。
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