前編は、慶大グラウンド前駅ができる経緯についてふれ、これが目黒蒲田電鉄における本門寺道駅的な形で実現させたことまでふれた。ここで、位置関係について確認しておこう。かつて、慶應義塾大学新田球場をはじめとする運動場は、現在の東京都大田区千鳥二丁目のうち、12番の西側部分、13~25番、29~32番、35番、37番の北側部分にあたり、今日でも運動場の区画が建物の区画から読み取ることができる。
この場所をゼンリンの電子地図で示すとここになる。そして、この慶應義塾大学運動場に目黒蒲田電鉄と池上電気鉄道の位置関係を表した図も示すと、以下のようになる。
図左上寄りにある赤いTの字形に書いてあるのが、慶應義塾大学運動場。大正15年(1926年)前半の慶大グラウンド前駅が開設される前の状況である。ご覧のように、慶大グラウンド前駅ができる前は、最寄り駅は光明寺駅となり、目黒蒲田電鉄の武蔵新田駅とは勝負にならないことがわかる。そして、慶大グラウンド前駅設置後は以下のようになる。
けっして、武蔵新田駅よりも近くはなかったが、とにもかくにも慶應義塾大学運動場には近くなり、駅名も新田球場前駅などではなく、慶大グラウンド前駅なのだから、当たらずとも遠からず、といった印象と言えようか(上図では、光明寺駅と慶大グラウンド前駅とでは大して運動場までの距離が変わらないように見えるが、実際は光明寺駅から運動場までの道路がなく=耕地整理前のため、慶大グラウンド前駅[初代]がこの場所となったのも道路条件によるからである)。
だが、慶大グラウンド前駅は本門寺道駅と違う問題を抱えていた。それは、駅間距離の問題である。本門寺道駅は蒲田駅~矢口駅(現 矢口渡駅)間に開設されたが、両駅間はかなり離れており線形も曲線を大きく描いていたこともあって、蒲田駅に近いという印象はあったものの、中間駅を設置できないというほどではなかった。一方、慶大グラウンド前駅は、池上駅~光明寺駅間があまり離れておらず、しかも嶺鵜耕地整理組合の耕地整理進捗具合に左右されて、本来最もいい位置に駅を開設できなかった。加えて、都市計画道路に駅の場所が当たってしまい、すぐにでも事業開始されそうな状況であった。いきなり、慶大グラウンド前駅は開設直後、大ピンチを迎えたのである。
次回に続く。
島忠にはちょくちょく買い物に出かけますが、このあたりではないかといつも思っていました。貴重な航空写真有り難う御座います。環八を横断するノのが億劫でバスを利用しています。次回を楽しみにしています。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2010/04/21 10:41
なるほど!
道路が、グラウンドの形になっているってよくわかります。ありがとうございました。
そして、お帰りなさい♪♪
お疲れさまでした。本当に大変でしたね。
そんな中での記事更新、嬉しいです。そしてやっぱりおもしろく、興味は尽きません。
道路の形が残っている……
目黒競馬場のところなんかもそうらしいですね。
たしか「元競馬場前」というような、バス停が残っているんですよね、あそこ。
投稿情報: りっこ | 2010/04/22 14:54
信号機の設置場所の図面に池上から慶大グラウンドまで2マイル21チェーン75で光明寺まで2マイル30チェーン45となっています。約10チェーンということは200メートルしかありませんが当時の電車は15メートルぐらいだったので速度も路面電車並みだったので問題なかったのでしょう。この信号は複線用の双信式ですので複線化された後でしょう。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2010/05/24 20:47
慶大グラウンド駅追加
マイル数は蒲田からの誤りのようです。申し訳ありません。ただ気がついたことは信号機が、蓮沼、池上と慶大グラウンド駅に設けられているのに次は雪谷迄一個の閉塞区間になっています。池上に亘り線が最近迄ありましたが慶大グラウンドにもあってお会式同様に早慶戦にでも備えて折り返し運転でも行っていたのでしょうか?いずれにしても昭和5年の丸子の渡しまでの延長申請に添付されてる地図では耕地整理の形跡が全くありません。田園都市が大震災前から事業を開始しているのと比較してあまりにも慢慢的ですね。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2010/05/25 09:07
初めてコメントさせていただきます。
この度武蔵新田駅の近くにあったらしいという慶大の野球場を探していたら、貴ブログが見つかりました。興味深いお話しが多く、ずっと東急沿線に住んでいることもあり、大変楽しませていただいております。本当にどうもありがとうございます。
その中で勝手に掲載してしまい大変恐縮ではございますが、拙ブログでこちらの記事をご紹介させていただきました。もし差し支えがあるようでしたおっしゃっていただければ、すぐに非公開と致します。申し訳ございません。
では、ご多忙中大変かとは思いますが、今後とも楽しい記事を読ませて下さいませ。この度は誠にどうもありがとうございました。
投稿情報: 独自 | 2011/05/27 13:30
独自 様
わざわざ紹介していただき、どうもありがとうございます。引用、もちろんOKです。
なかなか地域歴史研究記事は「仕込み」に時間がかかるので、書きたい記事は多いのですがいい加減なことを書くわけにもいくまい、ということで亀の歩みくらいのスピードで進行中です。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿情報: XWIN II | 2011/05/27 18:50