CERNは、現地時間30日、プレスリリース「LHC research programme gets underway」を発し、LHCにおいて陽子同士を衝突させたことで、7TeV(テヴ。テラ電子ボルト)に達したと発表した。このエネルギー領域に到達することで、いよいよ素粒子物理学における標準模型に欠かすことのできないHiggsボソン(ヒッグス粒子)の探索に現実感が出てきたことになる。
私は学生時代、いわゆる高エネルギー物理学を専攻し、Z0(ゼットゼロ)粒子の発見を頂点とする輝かしい時代で学習することができたが、その後の20年はハイパーストリングス等、思索の時代に突入したようで、正直専門家の門下生だった私ですら面白い時代でなくなったと思っていた(理論物理学よりも実験や装置を作る方に興味があったからだが)。
だが、私が学生時代から既にLHC計画の話はあり、それがついに現実のものとなって稼働し、その成果の一つが今回の未知のエネルギー領域への到達である。しかも陽子・反陽子の対消滅反応でなく、陽子同士の衝突という、多数の素粒子がばらまかれる反応という点も大変興味深い。コンピュータの演算性能の向上が、これら膨大なデータの解析に大いに役立つだろう。しかし、その計算能力も、人の知恵によって使わなければ意味がない。まさに研究者冥利に尽きる至福の時間が待っているに違いない。
年度末であるが、久々に面白いニュースによって気合いが入ってきた。まだまだこれから結果が出るまでに時間がかかることだろう、が、かつての門下生としてはその結果に大いに期待している。聞くところによれば、私の後輩も加わっているようなので頑張ってほしい、とエールを送っておく。
思わず昔を思い出してしまいました(笑)。懐かしいですね。大学の卒論で、当時設立準備中の高エネルギー研(KEK の前身の前身?) で使用する空洞共振器の作成に参加しました。参加したと云っても、西も東も解らない学生ですからまかされたのは、ビームを加速する空洞共振器の表面を超伝導体にする為に鉛メッキする実験でした。メッキしては共振器を回路に組み込んで、液体窒素で冷却して Q 値を計測する、... の繰り返しでしたが、なかなか必要な Q 値が実現出来ず、これはこれで結構大変でした。結局、この分野と付き合ったのはこの時だけでしたが、懐かしく思い出しました。
投稿情報: Josef | 2010/03/31 16:23
Josef様、コメントありがとうございます。
私は残念ながら高エネ研にかかわることはできませんでしたが(学閥がらみ…だろう、たぶん)、幸い日本以外の場で留学(遊学)もどき体験できたことはおおいに意義がありました。私も先輩、同僚、後輩の多くが研究者の道に突入する中、スピンアウトしてコンピュータビジネスの世界に飛び込んだ(もとよりそちらに興味があったわけですが)ので、それっきりです。
とはいえ、まったく興味を失ったわけではなく、常に動向は気にしているのですが(笑)。
投稿情報: XWIN II | 2010/04/01 07:10