Intel社は現地時間(7日)、「Intel Unveils All New 2010 Intel® Core™ Processor Family. Industry's Smartest, Most Advanced Technology Available in Variety of Price Points」とプレスリリースを発し、新Coreシリーズプロセッサを発表した。当Blogでもかねてよりふれているが、デスクトップ向けのClarkdaleは現行Core2シリーズと比べ大きくその性能を伸ばしているので、いよいよNehalemアーキテクチャ普及の途に入ることとなるだろう。しかし、Mobile版はそうはいかないのではないかと指摘してきた。どうやら、それは現実のものと言えそうな様子である。次のIntel社作成資料をご覧いただこう。
「The New Core i5: It's Smarter. It's Faster.」と冠し、Core Duo T2250とCore i5-430の性能比較を行い、PCMark Vantage Overallスコアで2.22倍の性能差をアピールしている。これだけ見れば、従来のMobileプロセッサよりも大きな性能向上を期待することだろう(コアクロックの差が2.26GHz対1.73GHz、他にもキャッシュメモリの差やチップセットとの接続方法の違い、グラフィックス性能差があるにしても)。実際、PC向けマスメディアの一つ、インプレスさんの「PC Watch」内の記事中には写真の絵解きで「Core 2 DuoとCore i5の性能比較」と書いているほどである。
だが、資料をよく見てほしい。
どこにもCore 2 Duoなどとは書いていない。書いてあるのはCore Duoで2が抜けている。無論、Intel社資料側の誤植などではなく(PC Watch記事の誤植)、Intel最初の真のDualコアMobileプロセッサとなるCore Duo、コードネームYonahのことである。そう、およそ4年前にデビューしたCore 2ではないCore Duoプロセッサなのである。
驚くべきことにIntel社(の営業)は、何と4年も前のプロセッサ(既に製造中止)と、グラフィックス及びメモリコントローラを内蔵した最新プロセッサを比較しているのだ。これはいったいどういうことだろうか? 考えるまでもなく、Core 2 Duoとの比較が憚られることだとなるだろう。なぜ憚られるのか、それは性能面でアピールできなくなるからにほかならない。
以上、Intel社発表の資料から、新Mobile Core iシリーズ(Arrandale)プロセッサへの危惧について語ってみた。おそらくは、Core 2系よりも性能は向上しているのだろうが、それが大きくアピールできるほどではなかったという結論にいたり、それでやむなく約4年も前のMobileプロセッサに登場願ったのが、この資料だと考える。このことで思い起こすのは、やはりMobile Pentium 4-Mのこと。Pentium IIIよりもコアクロックを大きく向上させ、消費電力の足かせを外したようなプロセッサとして登場したPentium 4は、デスクトップPC向けプロセッサとしての性能を大きく向上させることに成功したが、一方で消費電力を引き下げることができず(コア電圧を下げるのも限界がある)、コアクロックを引き下げる方法を選択せざるを得なかった。結果、Mobile Pentium III系列との性能差を出すのに苦労し、それがBanias(Pentium M)の登場に直結した。
おそらく、歴史は繰り返すことだろう。それも限りなく近い未来に。
>... 何と4年も前のプロセッサ(既に製造中止)と、... 最新プロセッサを比較し ...
別の記事では、32 nm プロセスが如何に素晴らしいかの説明の比較対象に 4004 を持って来ています(笑い)。5000 倍速く、100000倍安いと云われても、相手が 4004 では ... 、入社して最初の輪講のテーマですから(年がばれていますね)。
今年も楽しく読ませて頂きます。
投稿情報: Josef | 2010/01/10 01:15
Josef様、コメントありがとうございます。
i4004との比較というのはねぇ(笑)。
確か45nmプロセスの時には、リーク電流の低減、high-kの採用など、65nmプロセスよりも進んでいることをアピールしていたような…。そして、Core2デビューの時も、CoreやNetBurstが引き合いに出されていたはず。
なので、32nmプロセスやArrandale(Mobile Core i5ほか)は、大したことはないことをIntel社自身が暗にわかってほしいという表れなのかもしれません(笑々)。
投稿情報: XWIN II | 2010/01/10 17:12
グラフの作り方も卑怯ですね。
さすがにグラフの横軸を一部削って差を大きく見せる最低な行為は
していませんが、グラフ上の0.2から0.8あたりを薄い網掛けにして
そこに文字を入れて、ものすごくのびているような印象を与えるようと
する意図が感じられます。
この手の(はったりの)プレゼンをする社風かともおもい、C2Dデビューの
プレゼンをさがしたらComputex Taipei2006では普通のプレゼンしていました。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0606/comp02.htm
今回の資料を作った人の苦労と狡猾さしのばれます。
投稿情報: たかし | 2010/01/12 00:20
たかし様、コメントありがとうございます。
仰せの通り、Intel社は「自信のある」ものに対しては、そのままストレートに表現します。A社のようなプレゼンはせんよ!といわんばかりの勢いで。
しかし、「自信のない」ものに対しては今回のArrandaleしかり、以前のPentium 4-Mしかり、です。あるいはもう少しさかのぼればPentium ProとPentium IIの比較においても見ることができました。
なので、Intel社はある意味大変わかりやすいプレゼンを行う会社だと言えます(笑)。
投稿情報: XWIN II | 2010/01/12 07:30