多くのPC関連ニュースサイトで、公式にArrandale(Core iシリーズ)の情報が解禁された。まだ、Intel社のWebサイトにはプレスリリースがあがっていない(日本時間5日午前7時現在)ので公式発表ではないのかもしれないが、デスクトップPC向けのClarkdaleではベンチマークテストの内容まで公開されているので、事実上の公式発表なのだろう。
Intel社のx86プロセッサとしては、Atomが昨年末に真のグラフィックス統合プロセッサをリリースしているが、PC向けの、と断ればこれが最初のグラフィックス統合プロセッサとなる。いわゆるダイを各々載せただけの「なんちゃって」系ではあるが、メモリサブシステムをプロセッサに統合すれば、当然続く流れはグラフィックスサブシステムの統合となるので、これはこれで悪いことではない。
Nehalemアーキテクチャを採用したプロセッサは、これまでほとんど採用されてこなかった理由(一部いわゆる自作PCは別)は何と言ってもハイエンド向けと位置付けられていたからであるが、ClarkdaleはCPUコアを2つに減らしたこと、グラフィックス統合プロセッサであることから、価格付け次第では一気にCore2系を置き換えるだろう。PCを構成するチップセットが3つ(CPU、グラフィックス、I/O)から2つ(CPU+グラフィックス、I/O)に減るだけでも意義は大きい。加えて、コア数は減じているが、Core2系と比べれば事実上同等であるので、2.80~3.46GHzとコアクロック数も引き上げられているほか、メモリサブシステムも強化されていることを考慮に入れれば、間違いなくデスクトップPC向けではClarkdaleを採用しない理由はないと考える。
しかし、だ。Mobile PC向けのArrandaleは、Clarkdaleのような明るい見通しに見えない。なぜなら、「TDPの枠内でクロックアップが可能」ということが強調されているように、CPUもグラフィックスもクロックアップすることを許容しないとCore2系よりも劣ることが確実だからである。昨年発表されたMobile Core i7シリーズは4コアであり、製造プロセスも45nmだったことからTDP枠内の制約に苦しみ、定格では1.60~2.00GHzにとどめられた。クロックアップ機構(TurboBoost)によって、2.80~3.20GHzまで引き上げられることになっているが、マルチプロセスマルチスレッドをサポートしたOS支配下においては、一部のCPUコアがまったく何もしないということは考えられず、思った以上に(Intel社のプレゼンテーションが示す以上に)コアクロックが引き上げられない現実がある。
Arrandaleでは2コアに減じただけでなく、製造プロセスも最新の32nmを採用し、L3キャッシュもコア数に合わせてダイ上は半減させた。これによりTDP 35W枠内で、定格2.13~2.66GHzまで引き上げることに成功した。TurboBoostによって最大3.33GHzまで引き上げ可能なんていうあてにならないもの(そもそも2コアなので遊ぶコアは1つしかない)を期待するよりも、定格でどこまでコアクロックが稼げるかが重要だが、ようやくCore2系と同じレベルに落とすことで実現できたとなるだろう。
とはいえ、定格最大2.66GHzでしかないわけで、これはCore 2 Duoの3.06GHzと比べればまだまだとなる。もちろん、ArrandaleはCore2系と比べてメモリサブシステムやグラフィックスを統合しているし、機能的になったHyper-Threadingテクノロジを採用した強みはあるので、一概にコアクロックだけで決めつけられないが、デスクトップPC向けに設計されたNehalemアーキテクチャの負の遺産をそのまま引きずっている懸念は否めない。そこが、Arrandaleの不安なところである。
まぁ、実際にMobile PCにArrandaleがどう実装されてくるのか、が次の興味である。4コアNehalemアーキテクチャ採用プロセッサがクールなMobile PCにまったく採用されなかったことから、今度こそ、という気持ちもある。一方で、来年に登場するSandyBridgeまで待った方がいいのでは、という気持ちもある。こうして新製品を待つ楽しみを昨年は味わうことができなかったので、あまり素性のよろしくないNehalemアーキテクチャ採用のArrandaleといいつつも、それなりの期待を持って迎えるとしよう。
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