年金は詐欺だ詐欺だとよく言われるし、社会保険庁のやり方(それ以前にヤヴァくなってきたからといって母屋=厚生省(現 厚生労働省)から切り離したのも同罪以上)もだめだめだが、基本的なことを多くの国民諸君はわかっていないようだ。
年金と略称されるが、これは「年金保険」だということを忘れている。保険とはリスクを分散させる手段であり、「多くの人が少しばかりの損」をすることで、「一部の人の多くの損」を助けるものである。つまり、損をすることが当たり前なのだ。
これは投資でも預貯金でもない。元本保証などされるものでもない。20歳からいくら積み立てたとしても、独身であった場合、年金受給年齢に達する前に死亡あるいは受給権を喪失すれば、30年以上延滞もなく積み立てても1円も戻ってこないのである。一定の所得未満の配偶者等があれば遺族年金というささやかな形で残りはするが、これとて一般的には満額ではない。こんなことは、年間支払う年金保険料額と年間受け取る年金受給額を比べても明らかだ。年金資金をうまく運用できれば、運用益で高配当も可能となるが、逆のケースも大いにあり得る。要は、保険の本質を考えれば、年金が詐欺だとは言えないのである。多くの人にとって、損することが「年金保険」なのだ。
では、国民健康保険(及び後期高齢者医療保険)という高齢者の多くが加入する医療「保険」はどうなんだ?と思うかもしれない。確かに、高齢者の多くの医療保険料はきわめて安価であり、それ以上に医療費を保険から支出しているように見える。実際、医療保険特別会計を見ればそのようになっており、財政の半分が公費(国、地方自治体)負担であるほか、そのほかに赤字会計となれば、その赤字は保険者(運営母体のほとんどは地方自治体)が補填している。つまり、保険とは名ばかりで、ほとんどが多額の公費負担があって成立しているものとなっている。年金などよりも一足早く高齢化が進行した医療保険制度は、介護保険制度や後期高齢者医療制度も含め抜本的な制度改正が必要なのだが、高齢化民主主義によって弱者(=生産労働年齢層)からの搾取が直接(保険料/税)・間接(税)を含めて急速に比率が高められているのは周知の事実だ。
年金問題も医療保険のように、急速な公費投入が進められるのは明らかだろう。だが、肝心の政策は、目先の選挙のことばかり考えている与党の造反組諸君、同じくまったく未来設計が見えない野党の政策担当者諸君、もちろん与党についてはこの現状を招いた元凶なので言を待たないが、どうにも2025年という高齢化のピーク(近年の出生率低下で2025年より以降にもピークは拡大し延長されそうな感じだが)に耐えられるようなものを提示できていないように思える。間違いなく言えることは、多数を占める人たちが最も多くの負担をする必要がある、ということである。高福祉の北欧型に転換するにしても、高齢者・低所得者が多くの負担をしているという事実は見えているのだろうか。何も負担せずにもらえるものがあるなどと言う世迷い言は、多くの詐欺事件に結果が示すとおりである。
年金「保険」という自覚を持ちつつ、多くを占める高齢者が大した負担もなし、というのは高齢化社会においては成立しない。しかし、高齢化民主主義においては、まともな選挙すら実現困難であることは、某党による高齢者懐柔を見れば明らかだ(例えば、特別養護老人ホーム入所者はどのようにして投票行動をしているか等)。今は一部でしかないが、この比率が増していけば、高齢者モンスターならぬ高齢者調教者がご都合主義で政策決定を行うこととなるだろう。
生産労働人口よりも、非生産労働人口が多くなればどうなるか。しっかりこのあたりから議論していただきたいものである。
コメント