今回(以降)は総括編と称して、私がなぜこのモデルを選択したのか等と、実際にVAIO type Zをこれまで使い続けている視点と合わせ、色々書いていくことにする。よって、「VAIO type Z その X」シリーズに書いてきたことと重複する部分もあるが、そのあたりはご容赦いただきたい。
まずは、基本スペック総ざらい、といった感じで始めよう。
プラットホーム……Centrino 2
2008年7月16日、Intel社が正式発表したMobile PC向けプラットホーム。元は第2四半期に発表予定だったが、チップセット内蔵グラフィックスアクセラレータGMA 4500MHDのデバイスドライバの開発の遅れ(建前上は無線LAN絡みとされた)から、第3四半期にずれ込んだ。コードネームは、Montevina。初代Centrino(コードネームCarmel)から数えて5世代目にあたる。第4世代(コードネームSanta Rosa)と違って、大きな変更点(改良点)がないため、マーケティング上の要請からブランド名がCentrino 2となった。Centrino 2を名乗るための条件は、マイクロプロセッサがPenrynコアのCore 2系、チップセットがMobile 4 Expressシリーズ、WiFi Link 5000番台が搭載されていることである。
Centrino 2のブロック図は、上記のとおり。機能的に第4世代Centrinoとの違いは少ないが、ブロック図からは大きな違いを見ることができる。それは、チップセットが変わったことで、Mobile系としては珍しくデスクトップPC系とほぼ同タイミングでチップセットが更新された。この意義は大変に大きなものがあり、Intel社がMobileに力を入れているのが掛け声だけではないことが裏付けられるだろう。なお、このブロック図に書かれているものは、あくまでチップレベルでサポートされているものであり、それがPCとしてそのまますべてがサポートされているわけではない点に注意が必要である。例えば、USBが12本サポートされているとしても、それをすべて利用しているとは限らないし、DisplayPortが3つサポートされているとしても、このVAIO type Zのように1つも利用できないものもある。つまり、ブロック図はあくまで最大レベルでのものとして見る必要がある。
VAIO type Zをデバイスマネージャで確認するとこうなる。無論、これは私がSonyStyleで選択したものなので、機種によってはWebカメラなどが表示されていることだろう。ブロック図とデバイスマネージャの表示を見比べることによって、どこに何が配置され、その結果、 なぜこのパフォーマンスなのかと推測するのも面白いだろう。
マイクロプロセッサ……Intel Core 2 Duo T9600
45nmプロセスで製造されるPenrynコア。Mobile向けでは、現時点で最高速の2.80GHz(Turbo Modeでは2.93GHzか)。これはTDPは35Wであり、通はTDP 25WのP9500(2.53GHz)でいくべきという意見もあるが、そんな言葉には騙されない(苦笑。平均消費電力はPシリーズと比較して最大27パーセント低下という。だが最大=つまりピーク時ってことで、使い方にもよるが、Core 2 Duoはピーク時がほとんどないので、そこまで違わないだろうと思う。10W下がるのと0.27GHz最大クロックが高いのとどっちを取るかという話)。ステッピングはC0で、最新のE0でないことが残念なところ。店頭機種でのみの確認だが、TDP 25WのPシリーズもE0ではなくC0だったので、今後はどうなるかはわからないが、当面は気にならない。先にも書いたようにあくまで現時点で最高性能ということで、これを選択した。この選択こそがtype Zだ!と信ずる(苦笑)。
仕様上は2.80GHzとなっているが、現時点で確認できている動作モードは4つある。2.80GHz(1.263V動作, 10.5倍)、2.20GHz(1.188V動作, 8.0倍)、1.60GHz(1.063V動作, 6.0倍)に加え、Turbo Modeと思われる2.93GHz(1.338V動作, 11.0倍)。なお、データシートには0.80GHzもあるとされるが、VAIO type Zにおいては、電源プランを省電力プランに切り替えるなどしても確認できていない。
Penrynコアは、Pentium M(Banias)以来の系譜(Banias [130nm] → Dothan [90nm] → Yonah [65nm] → Merom [65nm] → Penryn [45nm] )を持つ、現時点では史上最強のMobileプロセッサと言えるだろう(Atomは別カテゴリ)。キャッシュメモリは2つのコアで共有6MB、FSBは1,066MHz(1.06GHz)。次世代Mobileプロセッサは、Nehalemマイクロアーキテクチャを持つものに完全に置き換わり、チップセットも含めた大幅な刷新となる。予定では、2009年第2四半期に登場し、メインストリームへの進出は2010年からとされているので、向こう1年ほどは最強の名をほしいままにできるMobileプロセッサとなるだろう。ただ、VAIO type Zを開発したSONYのチャレンジ魂は、最初のNehalemマイクロアーキテクチャでさえ、type Zの筐体にぶち込んでくることは十分予想できることであるが(苦笑)。
チップセット……Mobile Intel GM45 Express
マイクロプロセッサよりは微細ではないが、65nmプロセスで製造されるGM45。チップセットの発熱も馬鹿にならないので、プロセス微細化はそれだけ意義がある。コアクロックは最大533MHz。また、デスクトップPC向けチップセットよりも遅れてリリースされるMobile PC向けチップセットだが、今回のG45(GM45含む)シリーズはほぼ同じタイミングでリリースされている。なので、なるべく早い時期に試したいというのが人情だろう(G3xシリーズとG4xシリーズとあまり変わらないんじゃない?という意見はわかるが、Mobile PC向けにはG3xシリーズはスキップされているので、ないのと同じ)。
MCH(Memory Controller Hub、いわゆるNorthBridge)については、DDR3メモリの効果がどの程度か、体感できるとも思っていないが、新デバイスのサポートはそれだけでうれしい(動作電圧がDDR2の1.8Vから1.5Vへと0.3V下がっているというのがポイント)。確実にいえることは、Windowsエクスペリエンスインデックスにおいて、メモリ性能が最大値の5.9を示していることから、ベンチマークレベルにおいては効果を発揮しているとなるだろう。全般的にtype Zはレスポンスがよく、引っかかる動作や待たされることが少ない。これは間違いなく、Windows Vista SP1搭載機においては特筆すべきことで、もしかしたら、DDR3採用が効いているのかもしれない(気のせい率 34パーセント)。
ICH(I/O Controller Hub、いわゆるSouthBridge)については、ICH9Mと思われるが、RAID 0を構成できることから、もしかしたらその上位バージョンのICH9M-Rが採用されているかもしれない。こればっかりは中をあけてみるわけにもいかないので確認できないが、その筋のWebサイトに分解記事が出ていると思うので、諸姉諸兄に判断は委ねたいと思う。参考までにCPU-Z 1.46の「Mainboard」情報を掲げておく。
このプラットホームも、マイクロプロセッサの項でふれたようにNehalemマイクロアーキテクチャに変われば、MCH部分がプロセッサ内に取り込まれるので、このようなチップセット構成は最後になる。よって、Nehalem次第によっては意外に寿命の長いプラットホームとなる可能性も高い。
では、今回はここまで。
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