ようやく、「Windows Vista Resource Kit」の邦訳版となる「Microsoft Windows Vista リソースキット 導入・展開ガイド」が10月6日に日経BPよりリリースされるということだが、やる気がほとんど感じられないものである。まず、原著初版がリリースされたのが、昨年の4月4日(当Blogでも「ようやく出た、Windows Vista Resource Kit」なんて記事を載せたりもした)だが、昨年中はまったく邦訳版が出る雰囲気ではなかった。そして、今年に入ってWindows Vista Service Pack1が登場し、これに合わせる形で7月16日に「Windows Vista Resource Kit SECOND EDITION」が新たにリリースされた。結果的にここまで待ってよかったとなるわけだが、なんとこの邦訳版、たったの480ページほどしかないとのことである。
前版とも言うべき、Windows XP Resource Kitの邦訳版は上下2分冊で1,000ページを超える分量を誇り、無論、原著も5cm以上の厚さを持つ大著だったが、Windows Vista Resource Kitはさらに厚くなり、初版が7cm、1,568ページであり、2nd Editionは紙が薄くなったため6.6cmとちょっぴり薄くなったものの、ページ数は1,712ページ(目次含む。公式には1,696ページ)にも達するものとなった。これがどこをどうすると、480ページ程度に収まってしまうのかと言えば、無論、省略したからに他ならない。だからこそ、書名に「導入・展開ガイド」等という余計な文言がくっついているのである。日経BP自らが「本書は『Windows Vista Resource Kit』から、Windows Vistaの展開に必要な章を選び出して翻訳したものです」としていることからも自明である。
これまでの原著と邦訳版を比べてみると、だいたいページ数は似たり寄ったりなので、1,700ページが500ページ弱に凝縮される(裏から見れば1,200ページ以上削減される)のは明らかである。原著の構成を抜き出すと、だいたい次のようなページ数となっている。
- Overview(約80ページ)
- Deployment(約320ページ)
- Desktop Management(約390ページ)
- Desktop Maintenance(約230ページ)
- Networking(約200ページ)
- Troubleshooting(約120ページ)
主立ったコンテンツを抜き出してみると、以上のような感じであり、原著と邦訳版のページがまったく一致するわけではないので、この中から450ページほどが邦訳版として用意されると推察される(目次及び索引を除く)。考えると、さすがにOverviewとTroubleshootingを外すことは考えられないので、ここで200ページ分を引くと残りは150ページとなり…って、これじゃまともなものはできないな(苦々笑)。ということで、最初に述べたように「いかにやる気がないか感じられるものである」としたわけである。
それにしても、こんな抜粋に過ぎないものが、5,670円(税込)もするというのだから驚きだ。原著の価格は69.99ドル。定価販売でも7,000円台であり、北米地域では割引は当たり前なので、50ドルを切る価格で販売されているのが一般的である。つまり、原著のわずか30パーセントにも満たない内容で価格は同じというわけである。
10年ほど前、Microsoft Pressの書籍がASCIIの手を離れて日経BPに移ったとき、私は儲け主義に走る日経BPでは日本の技術者には悲劇にしかならないだろうと思っていた(けっしてMicrosoft社だけが、というつもりは毛頭ないが、最も普及しているものを学習するのは誤りでないだろう)。Microsoft社(Microsoft Press)が自社のプロダクツの解説書等を販売するのは、その書籍販売からだけで営利を伴うようにとは考えていない。たとえて言えば、ゲームとゲーム攻略本、ゲームファン向けの本を同じ会社が販売するようなもので、すべてが一体となって計算されている。しかし、マイクロソフト日本法人の援助があるとはいえ、日経BPにそこまで望むのは酷というものであるし、また技術書出版社という立場から見ても、どうも同業他社に比べ、知的貢献度が低い傾向にあるように見える(売れない本は出さないとまでは言い過ぎだが)。
と、いつものように横道にそれかかっているので戻すが(苦笑)、そんなわけでエッセンスとも言い難い「Windows Vista Resource Kit」の邦訳版「Microsoft Windows Vista リソースキット 導入・展開ガイド」が出るということだが、どこか別の出版社が完全版を出していただけませんかねぇ(無理か)。
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