さて、前回の続きです。とりあえず、この問題は今回で完結する方向で進めていくつもりである。
一般的に、会社勤めをし、いわゆる健康保険証を手にすれば、あわせて厚生年金にも加入しているという意識があるだろう。その認識は正しいのだが、すべてが単純にそうだとは限らない。それは会社による厚生年金未払いという問題が横たわっているからである。
良心的な…といっていいかどうかは何とも言えないが、会社によっては「うちは厚生年金に入ってないから、国民健康保険と国民年金は自分で手続きしてね」みたいなところがある。これは会社勤めだからといって、厚生年金等に加入していないとサラリーマン自身に自覚があるので問題は少ない(別の問題は大ありだが)。ところが、悪質なところは給与明細にきちんと厚生年金保険料等が控除されているように記載がありながら、実際には社会保険事務所に年金保険料等を納めていないところもある。健康保険証の交付は、保険料等が未納であっても最初に渡されるものなので、サラリーマンから見ればそのような事態が起こっているとはまったくわかりようがない。だが、社会保険事務所(社会保険庁)から言わせれば、立派な未納者なのである。
この問題の性質の悪いところは、被保険者本人は会社勤めで健康保険証も手にしていたのだから、当然、厚生年金も支払っているという認識があるにもかかわらず、実際には未納者となっている点である。このことは、年金手帳でも確認する術がないのがほとんどで、悪質な会社はたいていの場合、既に法人組織を解散してしまっているため、証明のしようがないのだ。本人の記憶が頼りとしつつ、運悪く悪質な会社と係わってしまったなら、これは社会保険庁にすがってもどうにもならない。詐欺に遭ったようなもの、いや詐欺そのものに遭ってしまったのだから。
年金問題は、単純な問題ではない。年金資格の管理、年金納付状況の管理、そして年金給付状況の管理のほか、基本的な住民異動情報も押さえておかなくてはならない(本人死亡による妻への遺族年金切り替え等も含めて)。地方自治体が、あまりに杜撰な年金情報管理等に嫌気がさし、抜本的な対策を国(社会保険庁)が取らなかったため、国に年金事務を返上(放棄)してから数年。いよいよ、待ったなしのところまで追い詰められ、悲惨な状況を呈している。介護保険システム開発、というほとんど年金問題とはかかわらないところで、システム設計・開発に従事していた私でさえ、1999年当時において、年金資格情報の危うさは実感していた。当事者であれば、何をかいわんやであろう。
この問題の本質は、「先送り体質」と「縦割組織」にある。介護保険制度における年金からの介護保険料特別徴収というものがなかったなら、おそらく社会保険庁の持つすべての年金資格情報と地方自治体の持つ住民基本情報とのマッチングも行うことができず、年金資格適正化すらやりようがなかったに違いない。何が必要で、何を行わなければならないのか、わかっていてもやりようがないというのは、お役所の中だけの問題ではない。「先送り体質」と「縦割組織」がはびこるところに存在する。自戒の念をこめて、年金問題のこれからを見据えていこうではないか。
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