消費増税前に買っておこうという本の1冊。
「白川文字学の精華」とあるように、いわゆる白川三部作の一つで、最も厚い(熱い)「字通」の普及版が平凡社創業100周年記念出版として登場したのを指をくわえて見ていたが、300円の差は馬鹿にできないだろうと購入したのである。「字訓」「字統」の普及版は既に数年前に出ているが、2,000ページを越える本書は、なかなか登場する気配すら見えなかった。しかし、増税前のこのタイミングでようやくリリース。買わないわけにはいかないだろう(笑)。
平凡社自身のウリは、次の12項目としている。
- 見出し漢字総数約9600字。引きやすい50音順配列。
- 字音・字訓、画数、四角号碼、常用漢字・人名用漢字、旧字形など、漢字の基本情報を網羅。
- 約2万2000におよぶ文字資料は、篆文・甲骨文・金文などの見出しを付けて掲載。
- 象形・会意・形声など、漢字の成り立ちと展開を解説。
- 『和名類聚抄』『類聚名義抄』はじめ、日本の古字書での読みも例示。
- 声系・語系を解説。音の関係を明らかにすることで、漢字を体系的に理解できる。
- 熟語欄はすべて二字熟語。用語例は古典を引き、書き下し文で示す。
- 見出し漢字が下につく下接語も多数掲載、文字の使われ方が幅広くわかる。
- 項目を見つけやすくするツメ・柱。
- 付録の「平仄一覧」では、韻・平仄を調べることができ、詩作にも役立つ。
- 見出し字で2010年の新常用漢字に対応するほか、付録に「新常用漢字表」を収録。
- 字音・字訓・部首・総画の4種の索引。
普及版は、当初の「字通」と比べて充実したところもあるが、その一方で削られたものもある。まったく同じではないが、小さく・軽くなったということと、価格が半値以下となったのもありがたい。
ご存じの方はご存じのように、漢和辞典は国語辞典以上に編著者の「思惑」(学説)が深く立ち入り、各社漢和辞典を精緻に読み比べるまでもなく、まったく違う内容が解説されている。文系独特の「ゆらぎ」(思い込みが激しいだけだというのも…)ではあるのだが、その点、本書のような説明が付されれば、少なくとも「鵜呑み」だけは避けられると思う。
まぁ読んでいて面白い辞書というのは、それだけで価値があるものなので、普及版の登場に感謝しつつ、今回はここまで。
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