「COMPUTER ARCHITECTURE FIFTH EDITION : A Quantitative Approach」の邦訳版である「ヘネシー&パターソン コンピュータアーキテクチャ 定量的アプローチ 第5版」がようやく発売となった。
原著は2年5か月ほど前に購入し(当blog記事「COMPUTER ARCHITECTURE FIFTH EDITION : A Quantitative Approach」を参照)、既に通読と拾い読みを何度か行っているが、後輩には版が進むに連れて、なかなかおすすめできなくなっている。理由は、本書に責任があるのではなく、コンピュータアーキテクチャが進化(深化)していく中、論が高度化していくからに他ならない。自明だが、単純なアプローチから複雑なアプローチへと進み、ハードウェアロジック以上に人による適切なプログラミングが重要になってきているからだ。
もちろん、ハードウェアの進歩によって、マシン語(アセンブリ言語)からCやC++、今や冗長以外の何物でもないJavaや各種スプリクト言語が幅をきかせており、性能よりも生産性が重きをなしている。だが、一方でマルチコア化が進み、ハードウェアと単純なコンパイラ任せでは、性能向上が望めなくなっている。そう、性能向上の意味合いが変わってきているのだ。
元からの高度な内容に加え、マルチコアに最適化したアーキテクチャの「要」は結局のところ人に頼らざるを得ないわけで、さらに読者に高度な内容を要求する。8-bitないし16-bit時代から、長年にわたって付き合い続けてきたような人であれば、そんなに高度な内容ではないと言えるが、それを歴史として学ばざるを得ない、それどころかふれても来ないような若い人には、英語に明るくてもそれなりにコンピュータを専攻したとしても厳しいだろう。
そういう読者には、やはり母国語で読むことができることはありがたいはずで、私も躊躇なく後輩にすすめることができる。ちなみに第4版の邦訳は一部にひどいものがあって、どうしてこうなった状態だったが、ざっと見た感じ第5版はよくなっていると感じた。
といったところで、今回はここまで。
コンピュータアーキテクチャの進化っていうところから、「忘れ去られたCPU黒歴史」という本のベンチマーク結果比較の「これはインテルが総力を挙げてフルチューンした結果らしい」っていうくだりが思い出されて、にやっとしました。
投稿情報: nikapyon | 2014/03/22 10:34