PS4で採用されたグラフィックス統合カスタムAPUは、いわゆるCPU側はAMD社の「Jaguar」コア、GPU側もAMD社の「Hawaii」コアをベースにカスタマイズされたものである。「Jaguar」コアは、省電力PC向けのものであり、同世代の「Steamroller」コアと比べると演算ユニットは半分しかない。しかし、それを8コア分搭載することで、4コアの「Steamroller」コアと同等としたのが、PS4で採用されたカスタムチップである。つまり、演算ユニット数レベルでは、
- 「Jaguar Core」×2=「Steamroller Core」 ∴「Jaguar Core」×8=「Steamroller Core」×4
というわけである。わざわざ「Jaguar Core」としたのは、4より8の方が縁起がいいというわけではなく(案外そういう理由もあったりするが真実は不明)、28nmプロセスルールで製造できるコアが「Jaguar」コアしかなかったからである。CPU側の基本スペックは、
- アーキテクチャ = AMD64(x86-64あるいはx64とも。単にx86とするのは誤り)
- マイクロアーキテクチャ = Jaguar
- コア数 = 8コア
- L2キャッシュ = 2MB×2
- 製造プロセスルール = 28nm(APU全体)
- 動作周波数 = 1.80GHz
となっている。8コアという以外は面白くも何ともない(コア数で言えば、自宅で最も多いコア搭載機がPS4とは…という感慨はある)。一方、GPU側はCPU側と違って、強力なRadeon R9 290レベルと同等なものを搭載している。PS3がnVIDIAの最新鋭でない(当時としても)GPUコアを流用したのとは大違いである。PS3の時はメインはCellプロセッサであり、GPUはオマケ的な位置づけだったので、設計レベルでの選択は間違ったとは言えないが、結果的に大失敗だった。Cellを活用したプログラミングの複雑さが嫌われて、PCアーキテクチャにきわめて近いXbox360の台頭を許したからである。一方、PS4ではCPUよりもGPUの方に力が入れられている。GPU側の基本スペックは、
- アーキテクチャ = GCN
- マイクロアーキテクチャ = Hawaiiベース
- 動作周波数 = 0.80GHz
- 演算ユニット数 = 18ユニット
- 演算性能 = 1.843TFlops(SP単位)
- テクスチャユニット数 = 72ユニット
- テクスチャ性能 = 57.6GTexel/秒
- ROP数 = 32ユニット
- ROP性能 = 25.6GPixels/秒
- グラフィックスメモリ帯域幅 = 176GB/秒
となっている。ゲーム機として考えられているため、CPUコアよりもGPUコアの方が大きな役割を持つのは自明だが、GPUコアにはグラフィックス処理だけでなく、通常CPUで行われる演算もGPUで「さらに高速に」処理するような格好になっている。ゲーム機(ゲームプログラム)にとっては、CPUかGPUかなどは関係なく、どれだけ仕事をAPUにさせられるかが重要だからに他ならない。PCと違ってCPUとGPUの組み合わせが任意でない、ゲーム機ならでは(というか最近はiPadやiPhoneも同じ)のアーキテクチャそしてプログラミングだとなるだろう。
ありきたりのCPUコアに対して、PC最高峰に近いGPUコアという、ゲーム機として当たり前のことを実現したPS4。XboxOneもほぼ同じ構成となるのも無理からぬこと。WiiUだけが置いてけぼりというか周回遅れだが、求めるものが違うのだから致し方ないか。ワールドレベルでは、SEGAのような転身をNintendoにも求めているのだろうが、さて。
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