前回、前々回とITmediaさんに掲載されている林氏の記事を肴にあれこれ語ってきたが、そもそもあの記事はMacintosh生誕30周年記念記事であった。私自身、Macintoshには強い憧れを抱き、社では購入したものの結局は自ら一度も購入していない。Apple社製品は、iPod、iPadを購入しているにもかかわらず、だ。
振り返れば、1984年といえば私のメインPCであったのは、NEC PC-9801F2だった。いや、PC-8801mkII SRだったか。どちらにしても、TK-80以来のNEC一辺倒に近く、他アーキテクチャを持つマシン(FMシリーズやMZシリーズほか)にも興味はあったが、はっきりいえば電卓上がりであり、ホビーイスト(これも死語だな)レベルで遊んでいたようなもの。プログラミングもマシン語(当時はニーモニックなどという面倒なことはせず、16進コード直打ちレベル)か、N88-BASIC系(余談だが、当時はBasicではなくBASIC)であった。
そこに現われたMacintosh。前のLisaにももちろん衝撃を受けたが(そういえば自分の子供に「Lisa」と名付けたという話を当時よく聞いた)、あの形状にも興味をそそられたのだ。マシンアーキテクチャもまったく知らなかったMotorola社のMC68000。真の16-bitプロセッサ(この頃はIntel社はCPU、Motorola社はMPUと称していた)であって、16MBもの広大なメモリ空間(当時は限りなく広大だった)をリニアアドレッシングできる!という興奮は今も覚えている(ようやく経験できたのは数年後のX68000を入手したとき)。
しかも、マウスという見たこともさわったこともなかったヘンなもので操作する。キーボードしか知らなかった私には、近未来のすごいものと映った。モノクロであったが、ビットマップディスプレイを搭載し、筆記体で「Hello World」と出てくるあたりは、NECや富士通などのちんけな店頭デモしか知らなかったのだから、その衝撃は計り知れないものだった。
だが、問題は価格だった。当時のPCは店頭でおおよそ30万円くらい出せばいいものが買えた。今からすれば高額なものだが、Macintoshは林氏の記事に見えるとおり、米国での価格は「個人でも買える」3,000ドルを切るものだった。今視点では、約30万円とそうそう変わらないものではと思うだろう。しかし、当時の米ドル相場は「1ドル=約240円」前後を推移しており、単純に計算すればMacintoshは70万円を切る価格となるのである。これでは個人ではおいそれと買えない…。
さらに厄介なのは、日本語を一切考慮に入れていないため、日本語化するのが困難だったこと。キヤノンが頑張ってくれたが、解像度の低いビットマップディスプレイにDisplay PostScriptで描くため、お世辞にもきれいとは言えない日本語フォント。LaserWriterを使えば当時としては最高峰の出力が得られるとはいえ、スピードも画面上での美しさも日本語フォントを漢字ROMに搭載する国内マシンには勝てなかった(同じことは初期のWindowsやOS/2のプレゼンテーションマネージャにも言えたが)。あれだけの価格を出して日本語があのレベルでは…。ホビーとして楽しめそうだが、価格を考えれば「高嶺の花」でしかなかった。
その後、Macintosh IIによって、カラー化を成し遂げたものの、あのかわいらしい姿ではなく一般的なPCと同様な格好となり、相変わらず価格は高いが、進化するWindowsとの差が徐々に詰まり、PCでもMacレベルのことができるようになってくると、いつしか興味を失った。過去のものである、と。
そういう歴史を踏まえて、再び今日、シェアを1割握り続けているMac。色々な想いはあるが、30周年おめでとうと三日遅れで祝しつつ、今回はここまで。
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