■ マイクロプロセッサ Core i7-4650U GPUの部
続いては、プロセッサに統合されたGPUについて見ていこう。HaswellにはGT1、GT2、GT3と3つのグレードがあるが、それぞれ演算ユニットが10基、20基、40基とあるものの、表に見えるブランドはさらに複雑で、Intel HD Graphics 4400、4600及び5000のほか、Intel Iris Graphics 5100及び5200、さらにはIntel Iris Pro Graphics 5200等がある。Iris Proブランドには、64MBのeDRAMが専用キャッシュメモリとして用意され、帯域幅はメインメモリの3倍となっている。ほか、Irisを含むHD GraphicsはeDRAMを持たず、GT1、GT2、GT3と動作クロックの組み合わせによって、Irisが付いたり数字が増えたり減ったりするわかりにくい仕組みとなっている。Intel社は、かつてモデルナンバーはわかりやすさのために導入したと言っていたはずだが、このCPU内蔵グラフィックスのブランドはどう考えているのか聞いてみたいものである。
では、前回も示したように、本機のマイクロプロセッサ Intel Core i7-4650U のダイ写真をもう一度確認すると、
このように、左側にグラフィックスコアを2つ並べている。この1つがGT2相当で演算ユニットが20基内蔵されており、これが2つでGT3となって、20基×2=40基の演算ユニットが内蔵されている。この2つのコアはCPUと同様に常にすべてが動いているわけではなく、必要に応じて機能停止したりクロックダウンを行っている(0.20GHz~1.10GHz)。つまり、一時的なトップスピードではそれなりの性能を示すものの、一定の時間以上を過ぎれば熱設計電力の関係でクールダウンすることになる。
ところで、40基もの演算ユニットを搭載しているが、その性能がフルに発揮できるかどうかは熱設計電力のしばりのほかに、もう一つGPUとグラフィックスメモリの帯域幅にある。Haswellは、Sandy Bridge以来のCPUとGPUをダイレベルで完全に統合したプロセッサであるが、同じく統合されたメモリコントローラを通じて2チャネルのDDR3メモリを共用している。つまり、同じプロセッサから同じメモリバスを通じて同じDDR3メモリをCPUとGPUが取り合う格好となっており、GPUの演算ユニット数が増えればそれに応じてデータを次から次へと流し込んで行かない限り、演算ユニットが遊んでしまうことになり、結果として演算ユニット数を増やすメリットが失われてしまうからである。実際、ここが弱点であることは、Windows エクスペリエンス インデックスの結果からも間接的に窺い知ることができる。
デスクトップグラフィックスパフォーマンスは、おそらくBitBltをはじめとするメモリ・メモリ間コピー等が中心に行われるテストの結果であり、これはずばりGPUとグラフィックスメモリ(本機の場合は DDR3のメインメモリ)間のメモリバス速度に依存している(さすがに4MBのL3キャッシュにすべて納まりはしないだろうから)。この数値は、VAIO Z21+PMD+外付けディスプレイを下回っており、専用グラフィックスメモリ及び専用バスを持たない「弱さ」を露呈しているわけだ。とはいえ、これまでの内蔵GPU(特にまったくやる気のなかったチップセット内蔵GPU)と比べれば、格段に性能は向上しており、Intel社も次のようなパフォーマンスグラフを示すほどだ。
本来なら、プロセッサ統合GPUとなったSandy Bridge(第2世代 Core i プロセッサ)から比較すべきだと思うが、何と対象が2006年からとなっている。2006年と言えば、CoreDuo(Yonah)やCore2Duo(Merom)の登場した年にあたるので、Coreマイクロアーキテクチャ以来の内蔵GPUを比較対象としたとするならわからないでもない。それにしても、いくらやる気のなかった時代からの比較とは言え、75倍のパフォーマンスアップとは…。Haswellの性能云々より、やっぱりチップセット内蔵グラフィックス(GPUと言うのも烏滸がましい)の性能の低さが際立つ。ただし、3Dグラフィックスではなく、いわゆるデスクトップグラフィックスパフォーマンスではここまでの差とはならないはずだ(いいとこ数倍程度)。
さて、肝心のGT3(Intel HD Graphics 5000)のサポートする機能としては、ビデオ再生等のハードウェア支援やDirectX11.1のサポートなど、ようやくnVIDIAやAMDなどと張り合えるスペックとなってきた程度で、あまり特筆すべきものはない。それ以上に重要なものは、CPUとGPUを合わせても15WのTDPで済んでしまうと言う事実だろう。単に性能だけなら、まったく太刀打ちできないものでも、これだけの低消費電力でありながらそれなりのパフォーマンスが出せることに意義がある。
といったところで、今回はここまで。次回はこちら。
コメント