私は、学生時代にドイツ史に興味を抱き(理科系学部であったにもかかわらず)、第二外国語にドイツ語を選択したのはもちろん、こっそり(かつ大胆に)西洋史の講義に出たりもしていた。ドイツ史に積極的に興味を抱いたのは中学生の頃、神聖ローマ帝国内に存在した領邦国家等が割拠する17世紀の中欧地図を見てからである。あのモザイク状の何ともいえない複雑さに魅了されたというのもあるが、なぜ帝国の内に国家(のようなもの)があるのか、それは我が国の戦国時代における戦国大名のようなものなのか、それとも中国の戦国時代における周のうちにあった都市国家(から領域国家に至るまで)のようなものなのか…という疑問が引っかかっていたというのもあった。そんなわけで今回、帝国書院さんから定評ある「PUTZGER HISTORISCHER WELTATLAS」(Cornelsen社)の邦訳版「プッツガー歴史地図 日本語版」が出るというので期待していたのだが、定価が9,975円(5パーセントの税込)というトンデモ価格(大呆)。原著は31.50ユーロ(ハードカバー)であり、最近の円安傾向を考慮に入れても2倍強。1ユーロ=100円時代(翻訳権を得た頃)からすれば、3倍近い価格差である。価格と売れ行きは「鶏・卵の関係」であって、値付けは難しいのだが(翻訳権や邦訳者への依頼もあるし)、これではさすがに買う気は起きない。よって、原著を購入した(例によって出張帰りの部下に頼んだ(謝笑))。
装丁は豪華で、ハードカバーは堅牢かつ軽量。製本の乱れなどもなく、使用している紙、ページを開いた時の開きやすさ(例えば原書房の豪華本のような開きにくさ且つ開いたら開いたで癖が付くという最悪なものとは比較にすらならない)、カラー印刷状態などなどさすがはドイツの出版社だと感嘆を覚える。これが31.50ユーロかと思うと、我が国の出版状況の貧困さを憂うことしかできない(邦訳版ではなくてもこの手の本は軽く5千円を超えるのが我が国の現実)。
無論、中身はドイツ語なので、本文を理解するにはドイツ語の知識はもちろん、歴史独特のキーワードの理解も求められる。だが、世界史の流れを大まかに理解していれば、本文を熟読せずとも美しい地図を眺めているだけでも十分だ。そして、世界史地図とはいいながら、そこはドイツで出版されているもの。私の求めるドイツのモザイク状歴史地図は精緻を極める。
これは、本書92ページの「Mitteleuropa beim Tode Karls IV. 1378」だが(上写真左側)、これを含めて細かいもののみを列挙しても、
- Mitteleuropa beim Tode Karls IV. 1378 (92ページ)
- Mitteleuropa im Zeitalter der Reformation (um 1547) (120~121ページ)
- Der Dreißigjährige Krieg in Mitteleuropa 1618 bis 1648 (124~125ページ)
- Mitteleuropa vor Beginn der Französischen Revolution 1789 (142~143ページ)
フランス革命までの時代で4葉ある。このほかにも様々なドイツ関連の歴史地図があり、世界史地図と名乗りはしているが、ドイツの充実ぶりは文句なしといったところ(だったら、ドイツ国内のみの歴史地図の方がいいんじゃないということになるのだが)。
といったところで、今回はここまで。
洋書の値段は昔は友人に頼んで、会社の伝票で為替相場で決済しましたが、書店との価格の差は未だに理解不能ですが、色々手数が掛るのでしょう。
ドイツ史の圧巻はオーストリア継承役から始まったプロイセンとの戦いと、その総仕上げの普仏戦争で完成する統一ドイツではないかと思います。日本もイタリアもほぼ同時に統一されたことは興味がある事実ですね。ハノーバーやザクセン等封建諸公の歴史迄はこの年ではとても残念乍ら手が回りません。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2013/04/21 01:35