さて、三連休も終わったが、この三連休の間に読もうと思っていた本が「先秦時代の領域支配」である。
本書は、京都大学学術出版会からリリースされているが、その中のプリミエ・コレクションと位置づけられてもいる。これは「本コレクションのタイトルには、初々しい若い知性のデビュー作という意味が込められています」と巻頭にも示されているように、著者の土口史記氏は1982年(昭和57年)生まれというまだ20代の新進気鋭の学者であり、関係ないがお名前もこの分野を研究するために生まれてきたような「史記」ということもあり、若い知性の論文を味わってみたい、というのが購入(読んでみようかという)理由である。
では、本書の内容を目次から確認しよう(第三章のみ「邑」の字の上にうかんむりが付く)。
第一章 春秋時代の領域支配──邑とその支配をめぐって
序言
第一節 県・邑の別
第二節 邑とその支配権
一 領域と境界
二 邑の支配権
第三節 「以邑叛」にみる「邑人」支配の問題
一 「以邑叛」と「邑人」
二 「竟」の邑
第四節 邑の軍事的役割
一 邑の軍事化
二 「邑人」の軍事動員
小結
第二章 「県」の系譜──「商鞅県制」成立の前提として
序言
第一節 「県」考辨
第二節 秦の「県」
一 商鞅以前の「県」
二 「県」制の継承
第三節 魏の領域構造とその変動
一 文侯・武侯期
二 恵王期
三 領域構造の変動と「県」制
小結
第三章 包山楚簡の邑と邑大夫──戦国楚の行政単位と「郡県」
序言
第一節 包山楚簡と戦国楚の地方行政単位
第二節 「邑=県」説
第三節 邑と邑大夫
一 邑大夫
二 「邑」諸官
第四節 邑の性格と戦国楚の「県」
小結
第四章 先秦時代における「郡」の形成とその契機
序言
第一節 先秦時代の郡に関する従来の研究
一 戦国期以前──「県大而郡小」と「郡大而県小」
二 戦国期以降
第二節 秦の郡
一 秦郡に関する議論
二 秦郡の設置年代
第三節 郡制開始の契機
第四節 魏の郡
一 魏郡に関する資料とその検証
二 「守」と「郡守」
小結
結論
というように、各章毎、もとは一つの論文だったものを本書に再構成したものとなっている。そしてそれを貫くのは本書の帯に見える「郡県制と異なる先秦時代の独自な領域支配」について、従来の説に疑義を呈しつつ、著者の視点でこうではないかと論じているところが興味深い。
本書は全体で200ページほどだが、内容としては180ページ程度であり、三連休中に読み切れるだろうと踏んでいたが、それは甘かった。単に通読するのなら問題はないが、本書は体裁がしっかりとした論文であるので、繰り返し意味を理解しながら、そして他書を参照するなどして読み進めていかなければならないこともあって、まだ読了できていない(苦笑)。というわけで、読み始めたとだけ書きつつ、今回はここまで。
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