ついに東京電力が本日(17日)午後3時頃に行った記者会見で、福島第一原発事故の収束に向けてのロードマップを明らかにした。それが「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」と題された文書で、A3横長の左側に基本的考え方など、右側に具体策等を盛り込んでいる。今回はこれについて語っていこう。
まずは、「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」を掲載したいところだが、右側が表になっているため作成に時間がかかるため、大手ニュースサイトなどを探していただくとして左側部分のみ引用しよう(追記:東京電力のプレスリリースにも載ったのでリンク先を参照して下さい)。以下のとおりである。
1.基本的考え方
原子炉および使用済燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質の放出を抑制することで、避難されている方々のご帰宅の実現および国民の皆さまが安心して生活いただけるよう全力で取り組む
2.目標
・基本的考え方を踏まえ、目標として以下の2つのステップを設定する。
ステップ1:放射線量が着実に減少傾向となっている
ステップ2:放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている
(注) ステップ2以降は「中期的課題」として整理
・目標達成時期は、様々な不確定要素やリスクがあるが、目安として以下を設定する。
ステップ1:3ヶ月程度
ステップ2:3~6ヶ月程度(ステップ1終了後)
(注) ステップ毎の達成時期や定量的な見通しが立ち次第、公表するとともに、
目標や達成時期等の修正が必要な場合も順次公表
3.当面の取組み
・上記の目標を達成するため、当面の取組みを3つの分野に分けた上で、5つの課題ごとに目標を設定し、諸対策を同時並行で進めていく(右表参照)。
・なお、ステップ1の達成に向けては、取組み中の以下2点の克服が特に重要と考えている。
①原子炉格納容器内(以下、格納容器)で水素爆発を起こさないこと(1~3号機)
・原子炉内に淡水を注入して原子炉を冷却する結果、水蒸気が凝縮する可能性が高まり、水素爆発を誘引する懸念が生じる。
→窒素を各号機の格納容器内に充填し、水素と酸素の濃度を可燃限界以下に抑える。
②放射線レベルの高い汚染水を敷地外に放出しないこと(2号機)
・淡水を注入して原子炉を冷却している段階において、タービン建屋に放射線レベルの高い汚染水が滞留し、増加する傾向にある(敷地外に漏出する恐れ)。
→滞留水については、(1)保管場所を複数確保する、(2)汚染水を処理する施設を設置し放射性レベルを低くする、などを進める。
以上。
「3.当面の取組み」として、右側にある表を省略しているので、そこに掲げられている5つの課題とは何かを示すと、「原子炉の冷却」「使用済燃料プールの冷却」「放射性物質で汚染された水(蒸留水)の閉じ込め、保管・処理、再利用」「大気・土壌での放射性物質の抑制」「避難指示/計画的避難/緊急時避難準備区域の放射線量の測定・低減・公表」の5つである。
まぁこれを読む限り、首相官邸が出しているヘンな文書の類(参考記事「首相官邸発、原子力災害専門家グループからのコメントを憂う」)に比べれば、至極真っ当なことを書いてあることがわかる。一企業人として読めば、稟議に上がってくるような文書と言おうか、会議で配付される資料そのものであり、このとおりに遂行できるのであれば特に文句を差し挟む予知はない。実際、このとおりにできるかどうかが問題であるが「様々な不確定要素やリスクがあるが」と示されているように、これを金科玉条とするわけにはいかない。ただ、安全・安心の大安売りになっていないことは評価できよう(基本的考え方に見える程度)。
とはいえ、このロードマップが示されただけで具体策はこれからだ。問題は、このロードマップどおりに進めるための作業員をどのように確保するかが焦点だと見る。現に作業員がβ線熱傷により救急搬送されて以降は、外部からはほとんど作業が進捗していないように見えるからだ。困難な作業でなくとも、ロードマップは見直しが何度も行われるもの。それが当たり前なのだが、政治屋はそれに右往左往するのだろう。ヘンな展開に持って行かれないよう祈るばかりである。
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