「ゲッターロボ」は、1974年4月にフジテレビ系で放映されたいわゆるロボットアニメで、「マジンガーZ」が人が乗って操縦するスーパーロボットの元祖とするなら、ゲッターロボは合体・変形する最初のスーパーロボットと言っていいだろう。確かに変形機構は、のちにゴッドバードへの変形をおもちゃできちんと実現した「勇者ライディーン」のライディーンや、それに続く「超電磁ロボ コンバトラーV」等と比べれば、まったくナンセンスの極みであるが、それが最初であることに大いに意義がある。
「ゲッターロボG」は「ゲッターロボ」に続く作品であり、世界観はそのまま引き継ぎ、登場人物も一部を入れ替えただけの事実上、同一作品と言っていい。作中に出てくるゲッターロボは「ゲッターロボG」になって新たなものとなるが、作中では『ゲッターロボ』と呼称されたままで、誰も「ゲッターロボG」と呼ばない。これは、「マジンガーZ」の後継である「グレートマジンガー」との違いとも言える部分で、まったく別作品となったマジンガーシリーズ(世界観のつながりはあり、最初と最終話近くではマジンガーZの主人公なども出てくる)との差異を求めたような印象である。
「ゲッターロボG」は合体・変形の二番煎じというだけでなく、スーパーロボットの必殺技に新たなパターンを誕生させた。それが、シャインスパーク、である。それまでのスーパーロボットの必殺技は、主人公(ロボットに搭乗)が必殺技名を叫んで発射して終わり、となるパターンだった。もちろん、シャインスパークも同じ流れなのだが、異なる点は必殺技を出すまでの「間」が活かされているということである。
例えば、シャインスパーク登場前のゲッターロボの必殺技と言えば、ゲッタービームがそれにあたるが、主人公が「ゲッタァビィィームッ」と叫んだ後は、すぐにビームが発射されて敵ロボットがドカ~ンと爆発して終わるだけだった。このパターンはスーパーロボットのみならず、仮面ライダーが「ライダァキィーック」、デビルマンが「デビルビィィィィィィィ~~~~ム」、古くは赤胴鈴之助が「赤胴ォ真空ゥ斬りぃぃ」など、正義のヒーローものには欠かせない「お約束」である。
しかし、シャインスパークはそれだけではない。必殺技を出すまでに「間」があるのだ。では、それを確認してみよう。
最初にシャインスパークが使われたのは、百鬼帝国のメカ要塞鬼との戦いで、これまでの必殺技がきかないという「お約束」な展開。それを受けて、新必殺技となるシャインスパークが搭載され、初めてメカ要塞鬼との決戦で使用されるという流れである。シャインスパークがこれまでの必殺技と違うのは、単にボタンを押せば発射されるという仕掛けではなく、搭乗者の3人が同じタイミングでペダルを踏み、シャインスパークの前段となるゲッターシャインを行わなければならない点である。タイミングが合わなければシャインスパークができないというのがミソで、これを確認するためのパネルが主人公操縦席に用意されているのだ。なお、最初はただ赤く光るだけだったが、しばらくして光る部分の下に「ドラゴン」「ライガー」「ポセイドン」と書かれ、誰がタイミングを外したのかがわかるようになっている(笑)。
ゲッターシャインが成功すれば、ゲッタードラゴンが光り輝く。これは、エネルギーを体に纏うための行為で、このエネルギー体を敵 百鬼メカにぶつけるというすさまじい攻撃法である。ここまでの流れから、シャインスパークを行うには、まずはゲッターシャインができていなければすべてが始まらないと確認できるだろう。
なお、最初のメカ要塞鬼戦では、最初は透過光処理を行っているが、すぐにこのように手書き、ブラシ処理に置き換わってしまう。しかし、これも先日惜しくもお亡くなりになった金田伊功氏(ゲッターロボGのテロップではなぜか伊助と誤記されている)が透過光処理をふんだんに利用したかっこいいゲッターシャインを描いてからは、これがゲッターシャインのバンク処理として多用されることになる。
ゲッターシャインにより、高エネルギーを纏ったゲッタードラゴンがいよいよ敵にむかって飛び立っていく。この時のキュィィ~~~ンという(ような)効果音が、もうたまらないのだ。
キュィィィ~~~~~~~~ン…。ゲッターシャインと叫んでから、このあたりまでがいい「間」なのだ。
メカ要塞鬼に突っ込んでいくゲッタードラゴン。このまま突っ込んではカミカゼなので(まぁ、のちのライディーンのゴッドバード形態やコンバトラーVの超電磁スピン等では突っ込んでいくのだが)、当たりそうなぎりぎりのあたりで主人公が叫ぶ。そう、あの神谷明氏のエコーヴォイスで「シャインスパァァークゥ」と。(なお、PS2等ゲームのスーパーロボット大戦シリーズにおいてこれが再現されているが、ここでの神谷明氏ヴォイスはちょっと間延びしすぎ感あり。)
纏ったエネルギーから──
敵にぶつける直前に飛び出す。
そして高エネルギー体は、メカ要塞鬼に向かって一直線。もう避けられない…。
ドカ~~ン!!
しかし、なぜか一般の百鬼一族が搭乗している時は一緒に爆死してしまうのに、ヒドラー元帥等の幹部級が搭乗している時は、このあとに脱出するのがこれも「お約束」。
というわけで、ゲッターシャインからシャインスパークへと続く一連の流れを見てきたが、この間、約15秒ほど。スーパーロボットで必殺技を出すと宣言してからこれだけの時間を要するのは、おそらくこれが最初だったのでは、あるいは最初でなかったにしてもこういった「間」を設けたのは、これが最初なのではないかと思う。そして、このような必殺技は次々と形を変えて様々な作品に継承されていくのである。
なお、このシャインスパーク。弱点が少なくとも一つある。それは一回の戦いで一度しか使うことができない。つまり使いどころが難しいのだ。しかも、シャインスパークを使った後は、ほとんどエネルギー切れ状態となってしまうため、そこを狙われたら一巻の終わり。
ま、それでいいのだけど(苦笑)。
必殺技を出すときの「手続き」という意味では
「宇宙戦艦ヤマト(1974)」の波動砲やワープが
先行しています。
(「無条件での戦闘回避」に使えるワープも必殺技に
入れてもいいと思うので)
また、「科学忍者隊ガッチャマン(1972)」との相関も
考慮に入れる必要があります。
マジンガーにガッチャマンを足したものが「ゲッターロボ」
さらに、新必殺技の弱点として、「手続きの面倒さ」
(咄嗟に出せない)というヤマト的な要素が加わったもの
と見ることができる。
ただし、「ゲッターロボG」は「長いバンクシーンを構築する目的で
手続きを煩雑化する」という新機軸を開発したともいえる。
投稿情報: たかし | 2010/02/14 03:58
たかし様、的確なコメントをありがとうございます。
科学忍者隊ガッチャマンのゴッドフェニックス、仰せの通り「科学忍法火の鳥」が超必殺技で、しかも体当たり方式ですね。バードミサイルと違って、あまり使われないところからもそれが言えるかと(エネルギーを使い切るという点も)。
宇宙戦艦ヤマト。群像劇ですので、波動砲を放つのにも場合によっては数分を要するという(笑)。徳川機関長のエネルギー充填120パーセントとか、古代くんのターゲットスコープオープン等々。これでもか、ってくらい名台詞もあり、長いし、そして「間」もあります。
発射前までに敵の攻撃を受けることもあって、そういう意味では「お約束」破りでもありました。
投稿情報: XWIN II | 2010/02/14 16:46
XWIN II 様
ギンガイザーの記事を思い出させるような、楽しい記事ありがとうございます。ゲッターロボGはあまり見ておりませんでしたが、そのしびれるような格好良さがバッチリ追体験できました(笑)。
小生、コンバトラーVの超合金おもちゃも所有しておりましたので、記事の端々まで味わわせていただいております。
(おもちゃ大図鑑なんてのもありましたね。なつかしぃー。)
すごく手間がかかりそうですが、この方向性の記事も楽しみにお待ちしております。
投稿情報: NAKAP | 2010/02/18 05:36
NAKAP様、コメントありがとうございます。
私も超合金シリーズやジャンボマシンダー(当初はなんでマジンガーじゃないの?なんて思ってましたが)をお年玉で買っていたので、よくわかります(笑)。
手間がかかるかと言えば、この手の記事は「勢い」で書いているので、実はトータルタイムはそれほどかかっていないのです。たった、数行のものでも考え考え抜いているものは何日もかかりますが(ビジネスでもそうですが)、「勢い」があるときはそれこそ同じことをやるにしても、あっという間にできてしまう。もっとも、それだけベースがなければ書けないわけで、子供の頃に熱中していて良かったな(笑)とも思うわけで。
投稿情報: XWIN II | 2010/02/18 06:49