Nehalemアーキテクチャから採用された新ブランド(派生ブランド)「Core i」。昨年後半からモバイルプロセッサへの展開も始まり、年頭にはArrandaleが新たに加わった。だが、Core i Mobileプロセッサを眺めてみると、性能とブランド(プロセッサナンバ)の相関がよくわかりにくい。30年近くIntel社のプロセッサを眺めてきて、こういうわかりにくさを醸し出しているときは、絶対的な性能に自信がないことが多い。そのあたりのことも踏まえ、Core i Mobileプロセッサブランドを見ていこう。
まずは、ブランド毎のスペック一覧を確認する。
Blogシステムの都合で横長の表が作れないため、分割した。若干見にくい点はご容赦いただきたい。Core iブランドはデスクトップ向けプロセッサと同様、i7、i5、i3と分かれているが、どういう理由でこの3つに分かれているかは営業上の分類に過ぎず、はっきりと区別できるものが見当たらない。今回はふれないが、Coreブランドの下位に位置するPentiumブランドやCeleronブランドとの差別化も、これからどうなっていくか注目だが、当面はマイクロアーキテクチャの違いを表すものとなるだろう。では、次から異なる視点で並べ替えてみる。
まずは、コードネーム順で並べかえてみるとこのようになる。Clarksfieldは45nmプロセス、Arrandaleは32nm(グラフィックスは45nm)プロセスで製造されているが、ハードウェアレベルでの差異はここに見いだすことができる。45nmプロセスは、Penrynで確認されるように非常に優れた製造プロセスであるが、TDPが群を抜いて高いのは4つのプロセッサコアを内蔵しているためである。Arrandaleは半分の2つしかプロセッサコアを持たないが、一方でグラフィックスを統合しているので完全に半分とはならない。
ただ、32nmプロセスは45nmプロセスほどまだ熟れていない。このことは動作電圧から確認できるように、45nmプロセスのClarksfieldは最低0.650Vだが、32nmプロセスのArrandaleは最低0.725Vと高い。しかも0.725Vは超低電圧版のみで、通常電圧版では最低0.775Vと45nmプロセスよりも0.125Vも高くなっている。動作最低電圧は、プロセッサが最も低いコアクロック(0GHz以外)で動作する前提であるので、下げようと思えば下げられるもの。それができないのは、ある閾値より下げてしまうとプロセッサが動作できなくなってしまうからであり、32nmプロセスはまだまだこれからなのか、あるいは今ひとつなのかはわからないが、最初期の製品であるので仕方のないところと言っていいだろう。
続いては、動作電圧順。低消費電力版(Low Voltage)、超低消費電力版(Ultra Low Voltage)は、通常電圧で動作させれば高クロック(高耐性)となるものをあえて低いコアクロックで動作させねばならないことから、Intel社にとってはなかなか差別化(商売に)しにくい。だからなのだろう。コアクロックとはかかわりなく、i7というサブブランドが低消費電力版や超低消費電力版に見える。超低消費電力版のi7-620UMとi5-520UMの違いはL3 Cacheの違い(4MBと3MB)、Turboモードにおける最高コアクロックの違い(2.13GHzと1.86GHz)しかない。「コアの価値」(通常電圧時における高クロック耐性)からすれば、i7とi5の違いはあるだろうが、一般にはわかりにくいだろう(笑。ここまで書いて気づいたが、Low VoltageとUltra Low Voltageの境界=点線を1行間違えてしまった。直している時間がないのでご容赦を)。
続いて、定格コアクロック順で並べた。先にもふれたように「コアの価値」がサブブランド名の違いに反映されているため、もうi7、i5、i3が入り乱れる結果となる。さすがにわかりにくいので、i7を赤、i5を青で着色した。Intel社としては、このように定格コアクロックで並べるのは勘弁してほしいと思うだろうが、それがわかりにくさに直結しているので仕方がない。最高クロックは何とかi7がキープしているが、続く2~5位にはi5とi3が続く。そして低電圧版や超低電圧版に「コアの価値」があることから、低いクロックにi7が集結しているのは…。まぁ、そういうことである。
最後に、最大コアクロック順で並べた。Core 2 Mobileでは、ほとんどTurboモードは機能(発動)しない代物だったが、Core i Mobileはどうなのだろう。TDPのマージンと、複数のプロセッサコアが利用されていないシーンという、かなり限定された状況でしか発動できないことを考えれば、気休め程度でしかないだろう。なので、この順番に意味があるかは何とも言えないところだが、確実に言えることはi7だからといって性能が高いとは限らないと言うことである。
もっとも、低消費電力という観点では性能が高いとなるのだろうが、Atomならいざ知らず、Core i Mobileでそれがどこまで求められるのかとなれば、私は疑問符をつけざるを得ないと思う。そして、これこそが一般ユーザからわかりにくい理由でブランド(プロセッサナンバ)構成されている「理屈」だろう。
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