あれだけ土壇場で苦労させられた、そして年度当初にも苦労させられている「後期高齢者医療制度」への対応。舛添厚労相は、地方自治体の準備不足だと指摘しているようだが、システム開発の尻拭いをさせられた立場としては、逆に厚生労働省のあまりに稚拙な(そして穴だらけの)仕様提供とその遅さに起因していると思っている。ただ、間違いなく言えることは、それがあったとしても地方自治体そのものの動きもまるで他人事のようだった、ということが傷口をさらに広げたことは間違いない。
(たとえば、同じ東京都広域連合が実施しているにもかかわらず、豊島区は4月からの徴収を開始し、大田区は間に合わせることができず先送りしている。人口規模の問題があることは否定しないが、ほとんどがシステム化されている現状では、その影響は小さく、準備不足・理解不足に尽きるのだが…。)
そして、制度開始となって半月が経ち、今頃になって後期高齢者医療制度について大騒ぎしている。私の記憶が確かならば、この法案が成立した時、またそれ以前に老人保健制度が75歳に後退したり、前期高齢者の導入など、様々な布石が打たれた時、どれだけの人々が反対の声をあげていただろうか。一部の人たちを除いてほとんどが反対していなかった、というよりは知らなかったのではないだろうか。
「先ず隗より始めよ」ならぬ「先ず介護より始めよ」、ということで、医療保険制度の改変は介護保険制度の導入により、大きく変わり始めた。いや、この後期高齢者医療制度の導入の地ならしが始まったとなるだろう。介護保険システムの開発時には、様々な方々との接触を体験することができたが、中でも障碍者の方々の心配は並々ならぬものがあった。当時、私は経験不足ということもあって、何を心配しているのだろうか?程度の認識でしかなかったが(というよりも開発プレッシャーの方が大きくそこまで顧みる余裕がなかったのだが)、開発に携わっていくうちに、なるほどこれは厚生労働省の考える医療制度の抜本改革の一環なのだと理解した。
インセンティヴを導入することで費用を抑制する、この考えに基づいたものであるが、今まで無料(あるいはそれに近い恩恵)を受けていた人たちが反発するのは明らかで、国民的理解をもってこれを突破する、ということだろう。保険料云々の問題は、日本人的にはのど元を過ぎれば忘れてしまうだろうが、本質的な問題は、少数の不利益を被る人たちをどう処遇するのか、と考える。
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人たちだけの問題ではない。保険料、という観点からすれば、介護保険制度と異なり、全年齢層の人たちが負担をすることになっている。給与明細の健康保険料(短期掛金)や医療保険料の明細を見れば明らかなように、新たな負担が増えていることが確認できるだろう。後期高齢者医療分(名称は様々だと思うが)として料率が追加されているのだ。いわゆる老健拠出金が廃止されたとはいえ、結果としてトータルの負担額があがっているのなら、今後ますます保険料負担が増えることは間違いない。そもそも、厚労省がこれを導入しようとしたのは、若年層の保険料負担軽減が目的であることを念頭に置けば、ただ単に廃止すればいいという問題ではあるまい。年金保険料も含め、社会保障制度をいかに維持していくのか。各論反対ではなく、全体設計を示していただきたいものである。
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