SEDをキヤノンが単独で行うことになった。「キヤノンによるSED株式会社の完全子会社化について」というキヤノンと東芝二社の連名によるニュースリリースを一字一句、じっくり読んで、冷静になるために一日寝かせてみて、今日になって落ち着いてこの件に関して書いていく。
まず、ニュースリリースの冒頭では、「キヤノン株式会社(以下キヤノン)と株式会社東芝(以下東芝)は、両社で設立したSED株式会社に関して、2007年1月29日をもって、キヤノンが東芝保有の全株を買い取り、完全子会社とすることを決定いたしました」と宣言している。これは、読んで字のごとく、これまでキヤノンと東芝の合弁子会社といえるSED社の東芝持分の株(SED社の全株のうち「50%-1株=49.998%」)をすべてキヤノンが買い取り、キヤノン単独の子会社とすることを意味する。
これは、既にメディアで報道されているとおり、米Nano-Proprietary社との特許紛争を長期化させないための方策であるだろう。キヤノンとNano-Proprietary社は、1999年にFED関連技術のライセンス契約を締結しており、SEDにはこの技術は必要不可欠だからである。だが、SED社は東芝との合弁会社であり、東芝もキヤノンと同様にライセンス契約を締結しなければ、SED社がSEDパネルを製造することはライセンス違反であるとNano-Proprietary社が主張し、この流れがほぼ動かし難い情勢となっている。
そこで、東芝の持つSED社の株をすべてキヤノンに移せば、完全にキヤノンの子会社となることから、Nano-Proprietary社の主張するライセンス違反には当たらなくなる。よって、特許紛争を回避できるという狙いは、続くニュースリリースでいうように、「今回の決定は、キヤノンに対する“SED”の技術に関連する米国訴訟の長期化が予想されることから、SEDテレビ事業の早期立ち上げに向けて両社で協議した結果、SEDパネルの事業をキヤノン単独で行うことにしたものです」と、こうせざるを得なかった理由を明らかにしている。
もともと、SEDの基本的な部分はキヤノンが長年にわたって培ってきたものだが、そこに東芝を加えた理由は、キヤノンがテレビ事業という広範な技術及びノウハウを持っていなかったからで、東芝側でも液晶やプラズマ、有機EL等といったデバイスに代わるものとしてSEDに大きな期待をかけたことで、合弁という形でその名もSED社が立ち上げられたわけである。しかし、これがこのような理由でキヤノン単独となってしまうのは、これ以上、SEDの立ち上げが遅れてしまっては、液晶やプラズマといったライバルに追いつくこともままならないという危機感からに他ならない。
次回に続きます。
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