あの著名な「Römische Geschichte」(Theodor Mommsen 著)の邦訳版、「モムゼン ローマの歴史Ⅰ~Ⅳ」(著:テオドール・モムゼン、訳:長谷川博隆、発行:名古屋大学出版会)が2005~2007年にかけて登場した際、なかなか購入に踏み切れなかった。理由は、あれだけの大著を完全に読み切ることに自信が持てなかったためである(ただ読み流すだけならできるが)。ところが、最近になって「普及版の訳は本邦初!」という帯が付いた「ローマ史」(文芸社から出ている、言い方は悪いが訳は同人レベルの本。上下巻。「ローマ史(上) 共和政の成立と地中海諸民族の闘争」、「ローマ史(下) 共和政の権力闘争と君主政への動向」)が登場し、これをぱらぱらと書店で流し見したところ、やはりしっかりとした学問的裏付けのある邦訳をすべて読みたいという欲求が芽生えた。こうなれば、後は勢いに任せて一気に4冊を購入。今年最初の書籍購入は「モムゼン ローマの歴史Ⅰ~Ⅳ」と相成った。
ただ、一度は躊躇った書籍であるので、勢いに任せたとはいえ覚悟は必要だ。何せ、28文字×24行×2段というページ構成で、しかも本文のみで約1,800ページもある。分量のみならず、中身も相当に濃い。5年ほど前に躊躇した気持ちを思い出してしまうが、買った以上は読まなければならないという使命感を抱き、今日から読み進めている次第。では、この4分冊の目次を以下に紹介しよう。
「モムゼン ローマの歴史Ⅰ ローマの成立」(本文444ページ)
第一編 ローマ王政の崩壊まで
第1章 序論
第2章 再古記のイタリアへの往来
第3章 ラテン人の定住
第4章 ローマの始原
第5章 ローマの最初期の国制
第6章 非市民と改革された国制
第7章 ラティウムにおけるローマの覇権
第8章 ウンブリア・サッベリ人、サムニウム人の始原
第9章 エトルリア人
第10章 イタリアのヘレネス、エトルリア人とカルタゴ人の海上支配
第11章 法と裁判
第12章 宗教
第13章 農業、工業、商取引
第14章 度量衡と文字
第15章 芸術
第二編 ローマ王政の解体からイタリアの統一まで
第1章 国制の変化、政務官の権限の制限
第2章 護民官制と十人委員
第3章 身分の和解と新貴族政
第4章 エトルリア人の力の失墜、ケルト人
第5章 ラテン人とカンパニア人がローマに屈服する
第6章 ローマに対するイタリキの抵抗
第7章 ローマに対抗するピュッロス王とイタリアの統一
第8章 法、宗教、軍事制度、国民経済、民族性
第9章 芸術と学問
「モムゼン ローマの歴史Ⅱ 地中海世界の覇者へ」(本文405ページ)
第三編 イタリア統一からカルタゴとギリシア諸国家の制服まで
第1章 カルタゴ
第2章 シチリアをめぐるローマとカルタゴとの戦い
第3章 自然の国境までのイタリアの拡大
第4章 ハミルカルとハンニバル
第5章 ハンニバル戦争――カンナエの戦闘まで
第6章 ハンニバル戦争――カンナエからザマまで
第7章 ハンニバルとの和平から第三期の終わりまでの西方世界
第8章 東方の諸国家と第二次マケドニア戦争
第9章 アシアのアンティオコスとの戦争
第10章 第三次マケドニア戦争
第11章 統治組織と被統治者
第12章 土地経済と貨幣経済
第13章 信仰と慣習
第14章 文学と芸術
「モムゼン ローマの歴史Ⅲ 革新と復古」(本文412ページ)
第四編 革命
第1章 グラックス時代までの服属地帯
第2章 改革運動とティベリウス・グラックス
第3章 革命とガイウス・グラックス
第4章 復古的な支配
第5章 北方の諸部族
第6章 マリウスの革命とドルススの改革の企て
第7章 イタリアの服属民の蜂起とスルピキウスの革命
第8章 東方と王ミトラダテス
第9章 キンナとスッラ
第10章 スッラ体制
第11章 公共体ローマとその経済
第12章 民族性、宗教、教育
第13章 文学と芸術
「モムゼン ローマの歴史Ⅳ カエサルの時代」(本文550ページ)
第五編 軍事君主政の成立
第1章 マルクス・レピドゥスとクィントゥス・セルトリウス
第2章 スッラ型の復古支配
第3章 寡頭政の崩壊とポンペイウスの支配
第4章 ポンペイウスと東方
第5章 ポンペイウス不在中の党派の争い
第6章 ポンペイウスの帰還と王位希求者の連携
第7章 西方の征服
第8章 ポンペイウスとカエサルの共同支配
第9章 クラッススの死と共同支配者の決裂
第10章 ブルンディシウム、イレルダ、ファルサロス、そしてタプスス
第11章 古い共和政と新しい君主政
第12章 宗教、教養、文学、芸術
以上は、本文の目次のみをあげておいたが、このほかに索引や図、年表などの類ももちろんある。中でも白眉は、訳者による「訳者解説」(Ⅰ~Ⅳ)と「邦訳についての覚え書き」(Ⅰのみ)だ。これがいかに凄いかというと、本文とは別に同じ28文字×24行×2段というページ構成で、合計76ページもある。76ページというと、本文の約1,800ページと比べれば4パーセント程度と大したことはないが、元が多いので比率で云々できるものではない。そこには、訳者ならではの様々な興味深い話がたくさんあり、これだけで普及版の邦訳とは大違いである(比較そのものが失礼か)。
──というわけで、ついに手を出してしまったかという悔いと同時に、確実に読み切ってやるという気概を得ながら、今回はここまで。
転換ミスで護民官ではないかと思います。正直の所読み切るエネルギーを最早有していないのが残念です。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2013/01/12 10:15