いわゆるヘネパタ本と称される「COMPUTER ARCHITECTURE」の第5版が登場したので、先月頭には入手していたのだが、よもやの多忙モードに突入したこともあり、ようやく今月に入って読み始めることとなった。第4版までと基本線は変わっていないが、ますます「COMPUTER ORGANIZATION AND DESIGN」(通称COD本あるいはパタヘネ本)との棲み分け(書き分け)が進み、初期の頃に見られた「これ一冊で」という感じはなくなっている(もちろん両書に重複した箇所はいくつもあるが、以前ほどではないという言い方になる)。私的には、ますます本書がアーキテクチャ寄りとなったことがありがたいと感ずるところである。
(CODも、今月に入ってRevised Fourth Editionが登場したことがそれを物語っている。)
さて、本書で注目するところは、やはりMobileコンピュータ(コンピューティング)に関する点が追加になったことだろう。そして、Googleに代表される超巨大(多数)の並列コンピューティング。デスクトップ(ノート)、サーバ、組み込みという伝統的なカテゴリに新たに追加されたこれら「革命」を担うものが、こうして「COMPUTER ARCHITECTURE」の新版に追加されたことの意義は大きい。
そして旧版(第4版)でも中心にあったマルチコア時代に向けての内容は、さらに第5版で強化されている。それは、本書の章立てから見ても明らかだ。
第5版
- Fundamentals of Quantitative Design and Analysis
- Memory Hierachy Design
- Instruction-Level Parallelism and Its Exploitation
- Data-Level Parallelism in Vector, SIMD, and GPU Architectures
- Thread-Level Parallelism
- Warehouse-Scale Computers to Exploit Request-Level and Data-Level Parallelism
第4版
- Fundamentals of Computer Design
- Instruction-Level Parallelism and Its Exploitation
- Limits on Instruction-Level Parallelism
- Multiprocessors and Thread-Level Parallelism
- Memory Hierarchy Design
- Storage Systems
本書は付録(Appendix)が多い(本書に記載されているほか、オンラインで提供されているものも多数)ので、旧版にあった章で新版でなくなった章も残ってるものがある(Storage Systemsは本書からなくなっているが、新版ではAppendix Dに移行)が、重要度が後退(交代)したと確認できる。また、大きく書き換えられた(追加された)ところには、白抜き文字でわかりやすく表示されているので、旧版を読み込んだ読者かつ時間がない人には、当該部分だけをしっかり読むというのもありだと思う。
こうして第5版と第4版と比べてみると、前は第5章であった「Memory Hierarchy Design」が今版では第2章に昇格していることも注目だろう。メモリ(記憶装置)の階層化、そして仮想記憶や仮想マシンをどれだけ「深く知る」ことがマルチコア時代に欠かせないものであることは間違いない。仮想マシンの上で踊っているだけの人には無関係ではあるのだが、これを知ると知らないとではそれこそ「雲泥の差」があり、それは90~00年代よりも大きなものであるだろう。何せ、今ではMobileデバイスですらマルチコアプロセッサを搭載している時代なのだから。
そんなことを考えつつ、今回はここまで。
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