名著、といわれるものはいつの時代も新鮮である。古くても、新しい。という言い方はなかなか微妙な言い回しだが、そう感ずるのだから仕方がない。学生時代にも改訂第三版にお世話になってはいたが、当時から「高木の解析概論」と称されていた高木貞治先生の名著「解析概論」が昨年秋、「定本 解析概論」として岩波書店からリリースされた。高木先生の「解析概論」は、書店で見かけることがほとんどなく版元でも絶版が続くことが多いので、見かけたときに購入という原則に従い、新版として出た直後に購入した次第。しかし、軽く読み流すような本ではないので、この年末年始の休みからようやく腰を据えて読み始めたところである。
本書は、昭和13年(1938年)に初版が登場し、直近の改訂第三版は昭和36年(1961年)と、今年から遡れば実に50年、半世紀も前に書かれたものである。無論、多くの内容は初版を継承しているので、そこから数えれば実に72年前になり、既に古典の領域に年数だけ見れば入るものだろう。
だが、本書は最初にふれたように古くても、新しいのである。解析学自体は19世紀以前に完成されたものであるので、新理論のようなものが出てこない(出てきにくい)という背景はあるが、それでも今読んでも古さを感じさせないのは、高木先生の優れた講義内容の一端を感じさせる(無論、高木先生の講義は伝説的な話としてしか聞いたことがないが)。
とまぁ、今頃このような本を読むのには理由がある。それは、わかったつもりになっていて本当にわかっているのか、と最近感ずることが多くなったからだが、やはり名著と言われるものはそれだけのものだと感ずると同時に、学生時代とはまた受け取り方が違うものだなと実感しつつ、今回はここまで。
商業学校に入学した関係で5年制の最後の年に高等数学の名のもとに授業を受けた記憶が甦って来ましたが、実際面でdiffernceとdifferentialの観念の差を実感するのは卒業してから大部後でした。予科に入学してから微係数の微係数(δX分のδY)の式を解くように名指しされて級友の間で面目を施してからはや半世紀が過ぎました。光陰矢の如しですね。名著は何年経ってもその色が褪せることがありませんね、
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2011/01/14 17:31
わが家の解析概論は引き続き本棚で埃をかぶっています。
誤植だらけの「解析学入門」という教科書を使わされた我々出来の悪い学生にとって、さすがに岩波でした。サイズは相変わらずB5でしたっけA5の教科書サイズより一回り大きい版のままなんですか?
当時1800円だったものが今3200円とは意外に安い気がします。当時の1800円(もう40年近く前ですね)は大金。経済的に大きな負担で、誤植だらけの教科書をそのままにしていた教授陣を非難したことを思い出します。
投稿情報: 桜上水confidential | 2011/01/16 00:28
コメントありがとうございます。
>名著は何年経ってもその色が褪せることがありませんね
↑
仰せの通りで、まぁ古くは中国古典(史記など)も古い話ではあるんだけれども、今でもそれが読み継がれるのは時代の変遷などを経ても色褪せない「不変」(普遍、でもいいか)のものがあるからかと思うんですね。根本自身が揺らいでしまうもの(例えば天動説)にしても、長年権威のあった「アルマゲスト」とかは数学書として見れば、まだまだ通用する部分が多いと思いますし。
>サイズは相変わらずB5でしたっけA5の教科書サイズより一回り大きい版のままなんですか?
↑
いわゆるB5版変形といわれるもので、B5よりも縦横比が小さくなっており、サイズとしては234mm×182mmとなります。LATeXで組み直されているので、活字独特の良さは失われているという意見もあろうかと思いますが、数式などは大変見やすくなっています。私的にはこれだけで買う価値ありと思いましたね。
投稿情報: XWIN II | 2011/01/16 09:19
B5判変形
多様な図書のサイズのために本棚の棚板の調整に苦労しました。昔はデータベースが不備でしたので翻訳のための参考書を多数用意しなければならず特に苦労しました。今は殆どのデータを検索できるので参考書類は昔程必要としなくなりました。LATeXによる製版については知識がありませんのでそのうち参考書でも読んでみようと思っています。文学書の復刻判ではないので昔のフォントを楽しむ必要はないかしれません。
投稿情報: 木造院電車両マニア | 2011/01/16 14:10