インプレスさんのPC Watchで長期連載されている「本田雅一の週刊モバイル通信」だが、モバイルとは名ばかりの回がたまにある。本日付で掲載のタイトルは「なぜ我々はパソコンマニアになったのか」というもので、興味を引くタイトルだったことから珍しくじっくり朝から読み込んでしまった(笑)。
人からマニアと呼ばれるのと、自称でマニアと称するのと、あるいはその両方とあるが、本田氏はその両方だと私は思っている。こういう「濃い」方にとっては、PC業界の閉塞感というか、PCならではというものがなくなって久しいという嘆きは、わからないではないどころか、大変よくわかるものである。
本田氏は、「先週、PC業界には3つの大きなニュースがあった」として、Windows 7のSKU、UQモバイルサービスプラン発表、Intelプロセッサロードマップ変更を挙げるが、いきなり突然昔はよかった的な話が始まる。
本田氏は、「筆者がコンピュータに興味を持ち始めたのは約30年前」とのことで、40代中盤の方としてはありがちなものであろう。1979年(昭和54年)といえば、8-bitマイコンが隆盛を極めていた頃で、この時期マイコンの薫陶を受けた方の多くは、いわゆるマニア化していてもおかしくない。続けて「初期のパソコンに対するモチベーションはプログラミングの面白さだった」とし、これも同じくマイコンの面白さと言えば、当時はハードウェアをいじるにしろプログラミングは必須事項であったので、至極当然の流れと言える。この二文だけで本田氏はPCマニアの出自としては正当なものだと断言していいだろう(苦笑)。さらに続けて「この路線での興味は、その後、シャープのX68000シリーズに移植されたGNU系ツールで遊ぶといったことにつながっていったのだが、さすがに少々話が古すぎるか」と、この時期に多くが憧れたX68000の話題を出しつつ、その命脈が絶えて久しい今となっては自嘲的に古すぎるか、と付言する。
本田氏は、このような下地を挙げた後、決定的な出来事として「DOS/Vの登場と内外のパソコン価格差を背景にNECのPC-9801シリーズからIBM-PC/AT互換機へと、雪崩を打ったかのように移り変わっていく時代を経験したからだと思う」と言う。確かに、この時代は激変の時代だった。喩えの善し悪しはともかくとして、日本のPC業界において幕末から明治維新への大転換だったと言えるだろう。
世界的にはIBM社の天下から、Intel社とMicrosoft社連合へ天下が移りつつある大きな流れの中、PC-9800シリーズからいわゆるDOS/V PCへ、DOSからDOS/VあるいはOS/2、Windowsへ、マルチメディアを扱うハードウェア、CD-ROMの登場などなど、大きなものから小さなものまでその変化はすさまじいものがあった。本田氏が「目にもとまらぬ速さの進歩、変化だった」というのは誇張でも何でもなく、事実そのとおりだったのだ。
本田氏はその体験を振り返りつつ、ダイナミズムの少ない今を嘆く。しかし、私が思うにあの時代は「特別」だった。ハードウェアもソフトウェアも大転換を迎え、PCの用途は従来の枠を大きく超えるような「余裕」が生み出されていた。そこには大小の企業・個人が次々と新製品を投入する余地が多分にあり、百花繚乱時代を呈するだけの理由もあったのだ。
しかし、今は個人よりも企業優先のPC利用である。たとえばMicrosoft社はそのようにシフトしており、Windows Vistaにおいてはそれがもっとも顕著に表れたものであったが、結果は企業に見放されるという皮肉な結果となった。Windows 7においては企業一辺倒でない姿勢を見せてはいるが、あくまで本命は企業であることは疑いない。
もはや、ホビーの対象から離れつつ、激変の時代でもない。だからこその嘆きではあるが、考えてみればこのような時代の方が当たり前であるともいえる。そんなことを考えた祝日開けの朝だった。
私のこの記事を読みました。思い起こしてみると、私もあの時代には、MZ2000、X1-Turbo、X68000、Color Classic、LC IIIと夢を追っていました(未だに押し入れに鎮座しています)。PCが一部のマニア向けから、誰でも使えるように企業向けに「進化」するに従って、マニアには物足りなくなって来たのは「必然」のような気もします。
投稿情報: josef | 2009/02/12 19:35
josef 様、コメントありがとうございます。
おっしゃるように「必然」ですよね。古くはラヂオ、オーディオ機器、等々から連綿と続いている流れであるかな、と。
大衆化の中で、余計なものはそぎ落とされ、手間暇かからぬようになっていくのは当たり前。そして一部の尖った製品は、大衆向けよりも0が1個余分につくくらいの価格で売られている、みたいな。
この業界においては、私も古老のようなものなので(苦笑)、本田氏の言い分は共感を呼ぶのですが、ああいった結論にはならないです。企業人とフリーの立場の違いなのかもしれませんが。
投稿情報: XWIN II | 2009/02/13 07:02