公的年金からの特別徴収が、次々と実行に移されている昨今、後期高齢者医療保険料に続き、国民健康保険料(税)や住民税(都道府県民税及び市区町村民税)もスタートラインに立ちつつある。そんなこんなで私の方も多忙続きなわけですが、この特別徴収に対して批判的な声が多いようだ。
しかし、我々サラリーマンにとって、特別徴収は珍しいものでも何でもない。給与明細表を見れば明らかなように、所得税、住民税、医療保険料、年金保険料等が天引き(特別徴収)されており、普通徴収(納付書等で支払う)で行うものの方が珍しいといえるだろう。
特別徴収になじみのない人たちといえば、いわゆる自己申告者の方々である。その昔、「とーごーさん」とか「くろよん」と言われていたように、サラリーマン、自営業者、そして農家の所得捕捉率の割合に不公平があるとされており、その根拠は正しいか正しくないかを別にして、所得申告の制度に原因があるとされてきた(性善説に立てば問題があるはずもないのだが…)。つまり、自分で申告できるということは、それだけ自分の都合のいいように申告することができるという理屈(ごまかしがきく)であり、サラリーマンとは違うというわけである。
(何でもそうだが、ごく一部の不心得者をあげつらい、さも全体が行っているというネガティヴキャンペーンの常套手段でも用いられるパターンではある。)
しかし、サラリーマン、自営業者、そして農家のほとんどの方が、高齢化と共に年金生活に入っていく。ここでは、公的年金というサラリーマン同様の収入ガラス張りシステム(これも事業者等が正しく行っている前提でしかないのだが)となるので、特別徴収がやりやすい。2000年度(平成12年度)より開始された介護保険制度による公的年金からの特別徴収も軌道に乗り、収納率向上に大きく寄与することも明らかとなったことから、当初は含まれていなかった遺族年金等(感情的な問題となりやすい)も特別徴収の対象に組み込まれるようになった。
この公的年金からの特別徴収にも、実は大きな問題があった。それは役所側の都合(一応法令上で定義)でしかないのだが、いわゆる「料」よりも「税」の方が先取権が高いという問題である。つまり、介護保険料や後期高齢者医療保険料は、「料」であるにもかかわらず、それより徴収優先順位の高い「税」が普通徴収の場合(ほとんどの高齢者がそうなっている)、天引き後の年金では、住民税や国保税が支払えないという事態が生ずる可能性がある(その人の人生設計や生活態度等による)。
以上の理由から、「料」よりも優先順位の高い「税」も、公的年金から特別徴収してしまおうという理屈が登場したのだ。
「取れるところ、取りやすいところから取る」という嘆きが聞こえてくるが、これはサラリーマンが積年の恨み言として括ってきたものである。だが、ほとんどこれが政治問題化することはなかった。しかし、今回は政治問題化している。なぜだろうか? それは与党の基盤が地方の高齢者である、ということにほかならない。とはいえ、搾取しやすい特別徴収という仕組みは、今後増えることはあってもなくなることはないだろう。そのために、住民基本台帳ネットワークを高い金をかけて構築したのだから。
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