というわけで、今回も前回の続きとなります。例によって、最初に年表を示しておきましょう。
そして、一つの区切りが訪れる。1987年12月9日、Windows 2.0がリリースされたが、ようやくこのバージョンからマルチウィンドウシステムが実現できた。Windows 1.0では、ダイアログボックス等がそれらしくなっていたが、基本的にはタイリングウィンドウであり、ウィンドウ同士を重ね合わせることもできなかった。この実現には、より多くのメモリが必要となるのは明らかで、サポートするマイクロプロセッサは80286を要求した。最大16MBまで物理メモリをサポートする80286であったが、現実にそれほど多くのメモリを搭載するPCはないに等しい。しかし、より多くのメモリを必要としたWindowsにはどんな形であれ、8086よりも多くのメモリを扱うことができるだけでも大きなメリットといえたのである。
Windows 2.0は、1988年5月27日から大きく2つのバージョンに分けられる。従来の80286をサポートするものをWindows/286と表記し、新たに80386のみをサポートするものとして、Windows/386が登場した(なお、日本語版は単にWindows 2.xのまま変わらなかった。それは、ハードウェアに依存しないとされていたはずのWindowsだが、Windows/386からIBM PC/ATを前提としたプログラムとなり、日本固有のPC-9800シリーズに移植することが困難になってきたことによる)。年表上、Windows/386から若干色を変えているのは、このバージョンが前のバージョンと比べてシステムの根幹部分を大きく変えたためである。
それまでのWindowsは、DOS上で動作するウィンドウマネージャであり、DOS上でWindowsが動作していたという表現がそのまま当てはまるものだった。だが、Windows/386は、80386の機能を用いてDOSから起動はするものの、DOSをそのまま利用するのではなく、VMM(仮想マシンマネージャ)やVxD(仮想デバイスドライバ)がDOSを置き換えて(模倣して)いた。つまり、Windows/386上では、DOSだと思っていたものは実はDOSではなかったのである(でなければいくら仮想86モードを駆使しても、DOSの真のマルチタスクは実現できない)。
もっとも、このWindows 2.x時代は、OS/2へのつなぎ、橋渡し的な位置づけにWindowsが置かれていたこともあって、Microsoft社としても積極的にWindowsをアピールしていなかった。「OS/2を導入するにはやや荷が重すぎるPCでは、ちょっとだけ軽いWindowsをどうぞ」、的な位置づけだったのである。しかし、この雌伏ともいえる間に、WindowsはWindows/386という部分的にはOS/2を超える機能を実現し、OS/2からの離脱準備を整えていたのであった。
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