大晦日である。12月31日の今日は、デビューから約2年、主力の座に座っていた時期はわずかに半年程度であったMobile向けプロセッサCore Duo(T2700 / T2600 / T2400 / T2300 / T2300E / L2500)の最終受注日(対Intel社)でもある。私のメインノートPCであるVAIO VGN-SZ90PSが搭載するマイクロプロセッサも、このCore Duoシリーズの仲間であるが、やはり一抹の寂しさを覚える。
事実上、Coreマイクロアーキテクチャの最初であるにもかかわらず、デスクトップPC向けプロセッサの戦略上の躓きから、急遽、Core Duo(Yonah)後継のMeromが主力プロセッサに祭り上げられ、しかも目指す方向性とは異なる異質な改良を加えられたCore 2 Duo(ほかCoreマイクロアーキテクチャ系プロセッサ)。クロックあたりの命令実行効率の高さから、従来のNetBurstマイクロアーキテクチャ系プロセッサだけでなく、AMD社のプロセッサをも凌駕する性能を見せたが、スケーラビリティという点において、そのままでは将来性が見込めるものではなかった。なぜなら、Merom(意味合い的にはYonahと言い換えてもいい)を単に動作電圧を上げ、クロックアップしたに過ぎないため、“のびしろ”を使い切ってしまったようなものだからである。一言でいえば、目先の対応というわけだ。
よって、Mobile向けプロセッサとして素性がいいのはCore Duo(Yonah)となるが、AMD社やCore 2 Duo登場時には、致命的な弱点として64-bit対応(Intel 64対応)していないと言われもした。だが、どれだけのノートPCが64-bit OSで動作しているだろう? 言うまでもなく、これは、幼児の無い物ねだりそのものである。必要のない物までほしいほしいという、それだ。
だが、Intel社の宣伝と目先の新機能等に踊らされ、Core Duoはフェードアウトし、Core 2 Duoに置き換わった。そして、今年9月に製造中止の発表があり、そして最終受注日の今日を迎えた。
振り返ってみれば、Yonah(Core Duo)は、Banias(初代Pentium M)以来のMobile向けプロセッサの集大成と言えるものだった。Baniasは、P6マイクロアーキテクチャ(Pentium Pro、Pentium II系、Pentium III系)を改良し、一般的なx86命令でPentium 4を凌駕する性能をたたき出した。プロセスシュリンク版のDothan(二代目Pentium M)を経て、Yonahではこれも事実上初のネイティヴDualコアプロセッサを実現し、大容量共有L2キャッシュメモリの搭載という、Mobile向けプロセッサならではの省電力性能を目指したものとなった。理屈の上では、これをクロックアップすれば、より高性能となるのは明らかだが、それを目指さず、あくまでクロックあたりの命令実行性能の高さにこだわり、より低いクロックで一定性能を維持する。それこそがYonahの真骨頂なのである。
しかし、所詮は米国。性能こそ力、という中で、Yonahの思想は捻じ曲げられ、不格好(アンバランス)なMeromが誕生し、Merom系プロセッサはCoreマイクロアーキテクチャと命名され、エンタープライズ系プロセッサまで侵食するに及んだ。喩えて言えば、ある特異な専門職の人が、あれよあれよという間に代表取締役にまで祭り上げられるようなものである。たまたま、適材がおらず、専門職的見地を他に応用するだけで、十分に他の人材より適材となる、というところである。だが、これは経営として見て、いい状態からは程遠いとなるだろう。
話を元に戻そう。そんな不遇なCore Duoも、2007年の終わりと共に終焉を迎える(超低電圧版は残るが)。しかし、私は思う。ベストバランスのMobile向けプロセッサは、今でもCore Duoであると。
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