2018年11月7日、第3世代 iPad Pro を購入(入手)して約3週間が経過した。入手以来、一日足りとも起動しない日はなく、毎日快適に使用している。私の購入したモデルは、12.9インチの1TB版。予約当初は知らなかったが、メインメモリが6GB搭載されているものだ(1TB版のみ6GBでそれ以外のモデルは従来同様4GB)。伝え聞く話によれば、512GB版を予約した方がキャンセルし(二週間以内なら返品可)、新たに1TB版を予約し直したというケースもあるようで、そこまでメインメモリ6GBいるのか?と思いつつ、実際自身がそういう目に遭っていたなら、同様の行動を取っていた可能性が高いとも思う(苦笑)。
ご存じの方はご存じのように、iPad は専用ビデオメモリ(VRAM、GRAM等)を持たず、いわゆるワークスペースと共用である。iPad から iPad Proにモデルチェンジ(というかアップデート)された際、画面解像度が引き上げられたことから、ビデオメモリとしての利用領域が拡大され、メインメモリが増量された流れがある。(仮想・不可視領域をどう使うか、ということを踏まえれば単純に画面解像度云々ではないが、あくまで一般論として。)
しかし、第3世代の iPad Proは12.9インチモデルで確認できるように、今回画面解像度は変わっていない。にもかかわらず、記憶(保存)領域の違いという「本質」的なところでない部分でメインメモリ容量の違いを出してきたことは、当然そこに狙いがあるのは言うまでもない。
その一つが、いわゆるタブレットアプリからの脱却であって、PC等で動作する複雑且つメモリ占有が大きいプログラム(アプリケーション)への移行である。既に2019年にAdobeから、フルバージョンのPhotoshopが予告されているが、こういったものを安定動作させるためにメインメモリの増量が行われたのは確実である。iOSに限らず、一般的なOSすべてに言えることだが、貧弱なハードウェアリソースで安定動作をさせること自体に無理があるので、まず強化すべきはワークスペースの拡大、つまりメインメモリの拡大(メモリアドレス空間ではなく物理メモリの方ね)が最優先課題といって過言ではない。
つまり、裏を返せば、メインメモリ拡大の恩恵は巨大なプログラムを実行するということで、そうでないのであればまったく役に立たない。そもそもiOSはアプリの完全なバックグラウンド且つマルチプロセス動作を指向していないため、いくらメインメモリがあってもWindowsやLinux等のように有効に使ってくれはしない。無論、プログラマがそのような指向でコーディング・実装することは可能だが、多様な環境(数世代前のiPhoneであるとか)での動作を前提とするなら、誰も落ちまくるアプリなど使いはしない。端的に言えば、iPad Pro専用とか、iPad Pro 1TBモデル専用とかうたわれていない限りは、6GBものメインメモリを有効に使うものなどありはしないのである。
と、能書きはこのくらいにして、第3世代 iPad Pro 1TB版ユーザとして敢えて言おう。「6GBものメモリなど使いはしない!」と。最初に書いたように、私はこのモデルを選択する際、メモリ6GB搭載だからといって選択したのではない。さらに記憶容量が1TBだからというわけでもない。単に最上位版だから、というだけの理由だ(失笑)。そしたら、たまたまメインメモリが思っていた4GBではなく6GBだっただけで、羨むようなものでも何でもない。ただ、これも最初の方で書いたように、持っているからこそわかったのであって、持っていなかったなら羨んでいて買い直したおそれはある(苦笑)。
メインメモリの話はこのくらいにして、第3世代で変わった筐体サイズや重量、そして純正外付けキーボードについて語っていこう。これまでの305.7 × 220.6 × 6.9(mm)から、280.6 × 214.9 × 5.9(mm)へと容積比で約3割減り、重量でも約1割減ったインパクトは、3年前から iPad Proを使い続けている私にとって大きなものがある。しかも全体が黒で引き締まった印象から、従来の野暮ったさ(親しみやすさ)からシャープさへと舵を切ったため(少なくとも私にはそう見える)、さらに小さく感ずる。だが、重量に限って言うと、純正外付けキーボードが全体を覆う構造に変わったため、カバーとしての機能は向上したものの、せっかく約60グラムほど減った効果を失わしめるには充分で、第2世代と持ち比べるとほとんど変わらないか、小さくなった分、重く感ずる。まぁ慣れの問題ではあるのだが。
純正外付けキーボード兼カバーは、カバーとしての機能(役割)、ノートPC然とした使用時においては格段に向上し、重量という欠点を利用形態によっては補って余りある。私のように常時持ち歩いて、ちょっと立ち止まって確認しようかという動作においてはキーボード部が邪魔をして、前世代のように簡単に取り回せないというのが気に入らないが、これは筐体全面を覆うという指向である以上、相容れない。このことは仕方がないところだと思うし、それに慣れてきている自分がいる。いつもの決め台詞だが、結局は「慣れの問題で適用能力がなくなれば使い勝手が落ちる」と言うだけの話だ。
キーボードの使用感は、前モデルとは雲泥の差とまでは言わないが、薄型Mobile PCレベルまでは到達してきている。10年程前の私であれば、こんな糞キーボード亡(無)いだろ!くらいは言っていそうだが、様々な薄型キーボードに慣れた今では、しっかりしたまともなキーボードに違和感を覚える始末で、iMac Pro においても一旦はしっかりしたUSB接続キーボードに置き換えたが、今では純正の薄型キーボードに戻したほど。よって、私視点ではMacBook Airレベルまで来たんじゃないか、となる。
そしてディスプレイ。すべてのMobile PCを凌駕している、と言っていいですか、と第2世代から思っていたが、そこはそのまま変わっていない。実際のところはわからないが、動的にリフレッシュレートを変える仕組みがより洗練された印象だ。おそらくハードウェアスペックが上がって、より追随性が増しているだけかもだが、タブレットやPC等において最重要なインタフェースがディスプレイである以上、そこを疎かにする安価なMobile PCはバカじゃなかろうかと思う。ヒトにとって、目は重要な入力機構ですよ、と。
対ディスプレイインタフェースに、指(タッチ)以外で重要なものがApple Pencil だ。第1世代は、充電方法等に難があったが、第2世代になってキャップをなくす心配や、転がってどこかに行ってしまうおそれも減った。だが、そんなことは些末で、持ちやすさが格段に上がった。すべすべからざらざら、お肌だったらいやだが、Apple Pencil はそうでなかった。何で第1世代からこうじゃなかったの? と言う方もあるようだが、第1世代があるから第2世代があるのだ。ものづくりをまともにやったことがある方なら、言うまでもないだろう。形にしてこそ、使ってこそ、わかる・気付くものがたくさんあると。気が早いが、第3世代のApple Pencil はどうなるんだ?という楽しみができた。
そして伝統のホームボタンが失われた代償、いや新機能が iPhone X 以降で採用された Face ID。最初の登録時に首をちょっと痛めてしまったが(苦笑)、一度登録してしまえば、指紋認証の不便さはどこへやら。私の指先がいまいちなのかもしれないが、認証失敗が数回に一回はあって、パスコード入力でイラッとすることがままあった。ところが、Face ID になってからというもの、たまたまカメラを手で塞ぐなどで警告を受ける以外は、暗所でも赤外線によってか問題なく認証できる。今更、ホームボタンに指をあてるなどしたくないと思うほど。ホームボタンを使用したインタフェースから、タッチインタフェースに切り替わる仕組みも、繰り返してばかりで恐縮だが慣れの問題。たまにホームボタンがあるといいのに、と思うことがあるが、きっと2か月ほどでボタンの存在を忘れているだろう。
第3世代 iPad Pro の機能ではないが、iCloud との連携が通信環境に依存するものの大変便利。原初の頃のクラウドの使い勝手のひどさを知る者としては、隔世の感がある。バックアップや機種変、そしてMacやWindows PC等との連携等々。あとは緊急時(オフライン時)への対応など、まったく課題がないとまでは言わないものの、逆にクラウドがなかったら相当不便だと断言できる。このような連携は、ハードウェアスペックの底上げに意味があり、ようやく現実のものになったかと感慨深い。
いいことばかりを書いているような気もするが、総じて満足度は高い。iPad Airから使い始めて5年。その間、Windows PCを捨て、iPad Pro と iMac Pro に移行したが、Windows陣営のヤバさ(勤務先ではどうしてもPC中心なので、まったくWindowsから縁を切ったわけではなく、両方を知ることでヤバさを知る)は目を覆うばかり。Microsoft は Azure とか様々な儲け先を探しているが、小手先ばかりでプラットフォーム依存から抜け切れていない。いや、そんな大上段に構える話ではなく、1ユーザとしてWindowsベースは使い勝手等、振り回される問題が多過ぎる。
とまぁ、iPad Pro歴3年なので、大きく変わっていないところは今更なので印象深くなく、どうしても上記のようなところが気になるため、そんなことどうでもいいよという内容だとは思う。だが、毎日使い続けているということは、他に選択肢が数多ある中、それだけで有意なものである。3週間使い続けた結果、買い換えてよかったとしてレビューっぽい話は今回はここまで。
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