最近は一般ユーザのような方のみならず、プロとも思えるような面々にも、いちいちこういうことを断らなければならないようである。
PCの環境は千差万別である。いわゆる自作PCなるものは当然のこととして、ハードウェアが画一化される傾向の強いノートPCでも、SonyStyle等が行っているカスタマイズモデルがあるように様々なハードウェアがある。そのPCにどのような周辺機器を接続しているのか等々まで含めれば、ハードウェアの環境は一様でなく多様化したものだとわかる。
PCならではの厄介さは、ハードウェア以上にソフトウェアの多様化である。どのOSをインストールしているのか、どのデバイスドライバを適用しているのか、どういったソフトウェアをインストールしているのか、そのソフトウェアのインストール方法はいわゆるお任せなのかカスタマイズなのか、設定ファイル等をいじっているのか、等々々々々々……。これにハードウェアのかけ算となるのだから、よほどのことがない限り、異なるユーザ間において同じ環境というのは意図して狙わない限り不可能だろう。しかも、まったく同じハードウェアでまったく同じソフトウェアしかインストールされていなくても、一定の期間を経て異なる人に利用されていれば、同じ環境とはならないのだ。つまり、PCの不具合を特定するというのは単純なものとは限らない、ということである。
こんなことは当たり前のことであるのだが、一般ユーザは通常そうは思ってくれない。何か不具合が発生すれば、不具合の原因が何であれ、ハードウェアならマイクロプロセッサ、ソフトウェアならOSを疑うものである。PCであれば、ウィンドウズが悪い、マイクロソフトが悪い、インテル最悪~等と言うのである。だが、PCという複雑なハードウェアとソフトウェアのコングロマリットに対しては、このような一般ユーザの反応は仕方のないものである。ユーザそれぞれの環境があり、その不具合がどのように発生しているのかというメカニズムは、専門家であってもなかなか特定困難である。ユーザの操作ミスに絡むようなものであれば、どうという問題ではないが、なかなか本当のことはわからない。ユーザに適当なことを言って、結果オーライという場合も少なくないのである。
以上の前提は、PC関連のソフトウェア開発者には自明すぎるほどだと思っていたが、どうやらそうでもないようだ。いちいちどこの会社だとは言わないが、同じ会社の違う人がまったく同じような反応を示していたのである。どういうことかというと、間接比喩表現的になってしまうが、次のような感じである。
「ある不具合があって困っていたら、同じ問題で困っていたのを解決する方法を教えてもらったので、その通りにやってみたが結果が違って解決できなかった。嘘を教えられ時間の無駄だった。もうあの会社(人)とは付き合わない!」
教えた相手は、親切の押し売りをしたわけではない。困っているというので、事例の一つとして教えたのである。にもかかわらず、この反応が出るというのは社会人としていかがなものかというのもあるが、仮にもソフトウェア技術者を名乗っているのであれば、顔洗って出直してこい!と言いたくもなる。PCは様々な環境があり、ある方法でうまくいったからといって、同じことを行ってもうまくいく場合とそうでない場合がある。また、本当に同じことをやったかどうかも疑わしい。操作方法等を見聞しただけで伝わらないことも多い(説明者にとっては自明な=説明する必要がないことが聞く側にとって自明とは限らない場合は、正しく伝わらない)。にもかかわらず、自分は絶対と言わんばかりの佇まいで、こんな話を第三者の私にすることでこっちがもうあの会社(人)とは付き合わない!と思ってしまう(苦笑)。
確かに「この環境においては」と断る必要があるのも当然だが、どういう環境なのかを列挙するのは大変である。ハードウェアは何とかなるかもしれないが、ソフトウェアのインストールや設定等々、列挙することはあまりに多い。そして、おそらく伝えたところで同じ環境ではないし、その不具合のどこに影響が及んでいるかなどわかりはしない(わかるくらいなら不具合を解決しているだろう)。よって、そういうことは話を発信する側でなく受け取る側が考慮すべきものと言えるだろう。
というわけで、あまり楽しくない面白くもない話を聞かされてしまった。こういう自己中心的なソフトウェア技術者の書くソフトウェアは、きっと環境を配慮しないDOSアプリケーションプログラムのようなものになるのだろうか、と考えてしまった。まぁ、私自身、シングルタスクですべてのリソースに気兼ねなくアクセスするというのが楽だと思ってはいるが…。
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